転生フロムゲーマー、神ゲーに挑まんとす 作:人外が着ているスーツ
俺のゲーム生活は、一つのゲームショップに支えられている。
【ロックロール】は、フロムがサッパリ消えてしまっている世界を理解していなかった頃からお世話になっているゲームショップだ。今現在、フロゲニウムを摂取するためのゲーム達は、全てこの店からオススメされて買ったものである。
初期にこの店に立ち寄らなかったら、付近のデパートで「フロム、フロム」と探し回ることになっていたと思うと少しぞっとする。
さて、なぜいきなりこんな話題になったかって?
サンラクに触発されたのか、「シャンフロを始めろ」という囁きが聞こえる気がするから、買いに行こうという話である。
「シャンフロ、夏休みキャンペーンねぇ……」
店内に入れば、ふと目を向けた先にシャンフロの広告ポスターがバッチリ貼られていて、俺はついついその場に立ち止まって見入ってしまった。
シャンフロについて軽く調べてみれば、アンチはいたのだが、スレ立てされた瞬間から数十、数百倍のファンたちになめろうを作るが如く潰されていく地獄を見てしまって啓蒙が溜まりそうになったよ。やっぱ一番恐るべきは、前世ではあり得なかったVRテクノロジーよりも人間そのものだね、某獣君は正しかった?
さて、そんな事を考えていると、カウンターの奥から1人の人物が現れた。
そう言えば今月末から乙女ゲーの攻略のために臨時休業すると言ってたな、これ暑さで買うの渋ってたら臨時休業にぶち当たって萎えてシャンフロ買う気にならなかったかもしれん。
「おや、
「さっすが、似てるとは言えクソゲーを簡単に処方してくる店長にはお見通しか」
「やっぱ一つあったよ。【フェアリア・クロニクル・オンライン】って言うんだけどね。オススメだよ」
おい、それ1人の鉄筋入りクソゲーマーを燃え尽きさせたクソオブクソだろ。
サンラクや周りのことはぼかして事情を説明すれば、分かってくれたのか、カウンター越しで見ても呪物的なオーラを放つように見えてしまう【フェアクソ】のパッケージがしまわれた。そして入れ替わりとなって【シャンフロ】が出現した。なんだか同じカウンターの下に入っていたってだけでも汚染されている気がするな。大丈夫? 中身同じになってたりしない?
「しっかし、友達が始めたからと言って……何だっけ、フロム?に固執しなくなったってことは、ようやく正常に戻ったみたいだね」
正常ってなんだ。俺は前世で心中までした愛するゲームを探しているだけだろう、何が異常だというのか。人は皆、獣なんだよ
「いやいや、なんだか『シャンフロをやれ』って頭の中で囁かれましてね。実物が出た後だともっとうるさい気がしますよ」
「うん、重症だね。毎度」
なんだか
家に帰ってレジ袋からシャンフロを取り出すと、またもやうるさいぐらいの囁きが聞こえてくる。
1年ほど前にシャンフロを知った時は一切囁かれなかったんだよなあ。今はバンバン耳元ASMRしてくるのに。
なんでだろうな、サンラク達が始めたからか?…いや、流石にそれは無いか。
「そう言えば…カッツオが
なんだかんだ今でも円卓での恨みを晴らすことを諦めてなさそうだし、初心者PKとか何も考えずにやりそう。
「シャンフロでの鉛筆のヘイトはサンラクに任せるとして…まあ、一報は入れておいたほうが良いか。」
件名: 神ゲー始めるぞ
差出人: 鉄拳キノコン
宛先: サンラク
本文:便Pで聞いた時から気になってたからシャンフロ参戦するぞ。鉛筆には他言厳禁で頼む
「これでヨシ、さて始めるかね」
囁きに急かされようがゲーマー基本三箇条をしっかり守って起動を行う。
クソではないけど過疎ってる物しか良ゲーを触れてないから、ここまでしっかりとした神ゲーするのは前世振りか?
幕末に引っ張られて「死ね!(こんにちは!素晴しいゲームですね!)」ってならない様に気をつけなきゃ、てか最近やってないな、一区切り付いたら
おっといけない、神ゲーを目の前にこんな事を考えていると乱数の女神に嫌われる。
「さて、前世振りの神ゲー、ガッカリさせてくれるなよ。」
「キャラクリメッチャおもろいな。いや流石に想像してなかったわ。」
フロムゲーマーとして何度もキャラクリをしてきたが人種からアクセサリーまで選び放題とかめちゃくちゃ面白いんだが、もうこれだけで神ゲーに堕ちそう。
身長とか筋肉量とかさ、まだまだ想像の範囲内だったけどアクセサリー枠で角とかあるとか、なんだコレ神ゲーか?神ゲーだったわ。
「角のフレーバーテキストまであるぞオイ、フロムゲーマー詰んだわ」
えっと…、まぁ魔術の媒介には出来ない完全なお洒落用か。じゃあ頭から雷槍を放ったりは出来ないのか残念。
「ええい洒落臭い!面倒だ!いつもみたいなキャラクリで良いだろ…角は付けとこ。」
えっとまず顔から…うわ角にもメッチャ種類ある。
ようやく作り終えたキャラを見て達成感が湧いてくるが、職業と出身がまだ残っている。
もう職業とキャラの顔のギャップとか考えないことにした、こちとらマジカル無頼漢だったり特大筋力復讐者なんて序の口だからな。
というか職業先に決められたのね、キャラクリと職業選択を切り替えるボタンあったわ。
まあ直剣使いたいし、剣士(直剣使い)を無難に選ぶか。剣士職だから魔法職を完全に捨てちゃうけどまあ良いでしょう
え?アズール?コーラルゲロビ?星の呼び声?ああ、知らない子達ですね。そうだろ無頼漢
まあそれは冗談として、サブジョブってもんが有るらしいからそれで補いたいとは思う、だって魔法使いたいじゃん。
そんで、後は出身か。
パッと見た感じ、上昇補正と下降補正がセットで付いてくる仕様らしい。
流石に「持たざる者」のような、初期投資が何も無い代わりに効果も一切なし、というストイックな出身は無かった。
けども、バッチリ俺のフロムセンサーが、一番下の出身欄にビンビン反応してるんだよなぁ。
【流浪の狩人】
・獣系モンスターに対するダメージ補正
・探索エリアからスタート
「うん、コレしか無い。フロムセンサーが働かなくても絶対これ選んでたわ」
そうして、ついに完成したキャラクターの全体像を画面上で確認する。
初期ジョブ【戦士(直剣使い)】かつ、出身【流浪の狩人】。
そして――
……いや、まあ、これには深い深い訳があるんだ。理解してほしい。
まず、長年フロムゲーを生き抜いてきた俺にとって、装備なんてものはただのオシャレ枠だ。そしてフロムの序盤というのは、自分の防御力や体力が低すぎるせいで、初期鎧を着込んでいようが2発殴られれば死ぬ。
鎧を着込んでローリングが重くなった身体で5割食らうなら、全部脱ぎ捨てて俊敏になった身体で9割食らう方がマシなのだ。どうせ食らえば「確定2発」で沈むのは同じだし、軽装(というか全裸)な分、足が速くてすぐ敵の攻撃圏内から逃げられる。
しかもありがたいことに、初期キャラクリ画面で不要な初期装備を売却して資金に換金できる仕様まであった。
これはもう、運営が「さっさと服を脱げ」と俺の背中を押しているようなもんだろ。きっとそうだ。うん、間違いない。
ついでに言えば、角を生やしたことでそれに合う頭装備も限られていたのだが、初期装備の中に頭がすっぽり隠れる「穴付き鉄バケツ」を見つけてしまった。これを被ればもう画面の絵面としては正常だろう
脳内でどれだけ高尚な言い訳を並べ立てたところで、客観的に見れば「ただの角付き一張羅変態鉄バケツマン」なんだけどね。
でも、初期リスポーン地点が(あんまり人が居ないと思う)探索エリアスタートだから、これならドレスコード的にもギリギリセーフ…のはずだ。
まあこの考えが理解されなかったゲームは幕末ぐらいだし、特に問題ないだろ。
「最後に名前か。」
なんだかんだゲームでのプレイスタイルが同じか似ているキャラクターから取りたい思いがある。だって幼女魔法少女がニーヒルおじさんの名だったらどうするよ。いやまあ概念はネットであったけど。
「鉄バケツと狩人繋がりで…【ヴァルトール】で良いかもな」
まあ連盟員として別世界でも頑張るんで許してください。
というかあの人も一匹の獣を追って来たんだっけな、半裸って点を除けばほぼピッタシじゃん
よし、これで行こう。広大な神ゲー世界にいざ出発だ。
アクセサリー【片捻角】
青白く濁った、結晶質の歪な一本角。
骨でも魔力結晶でもなく、皮膚の変異組織であるため、魔術の触媒にはなり得ない。
だがその硬度を生かした頭突きが最後の抵抗と成るかも…しれない。
頭装備【穴付き鉄バケツ】
粗雑な穴が穿たれた、金属製のバケツ。
そこまでして顔を隠したかったのか、それとも、己の角が突き破るほど深く被り直したのか。
誰もが知る。この世界に、追われるような罪人など居るはずもない。