ギルド食堂の美少女料理人転生者、なやめる冒険者に料理を提供する   作:れすとらーんぬ

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冒険者ギルドの料理人

 前世の頃から、ほんのり料理が好きだった。

 別に料理人になるというほどではない。

 自分の夕飯はできれば常に自分で確保したい。

 その程度の料理趣味。

 SNSなんかに作った料理をアップして、評価してもらえればその日は最高の一日になる。

 そういう人生を送っていた。

 

 そんな自分が転生したのは、今から十年と少し前のこと。

 女に転生してしまったことにはびっくりしたけれど、幸いにも色々と恵まれていた私は、将来について考える余裕があった。

 今通っている学校を卒業したら、冒険者になるか料理人になるか。

 それが私の選択肢だった。

 もっといいところ狙えるだろという人もいたけれど、こちとら前世から根っからの庶民なわけでして。

 出世になんて興味はない。

 だったら、気ままに生きれる冒険者か、培った趣味を活かしての料理人かのどちらかだ。

 そのうえで色々考えた結果――

 

 私は後者を選ぶことにした。

 だって、さぁ、ほら。

 やってみたいじゃん。

 前世の料理を食べてもらって「おいしい」って言ってもらうやつ。

 私にとって前世の料理は故郷の味だ。

 故郷の味を褒められると、なんだか私まで嬉しくなってしまう。

 だから冒険者ギルドの食堂で料理人になることを選んだ。

 それから二年、すっかり厨房を任されるようになった私だけど――

 

 ここ最近は、”あること”に少しばかりハマっていた。

 それは、なやめる冒険者の相談相手になることだ。

 

 

 ■

 

 

 ギルドは今日も賑やかだ。

 いろんな冒険者が行ったり来たりしている。

 ダンジョンに潜るもの。

 外で素材を採取しに行くもの。

 護衛依頼で遠出するもの。

 朝っぱらから酒を飲んで酔っ払っているもの。

 皆、一様にそれぞれの生活を楽しんでいる。

 まぁ、中にはそうではない人もいるけれど。

 というか最後のはもうちょっと真面目に働いたほうがいいぞ、将来大変なんだから。

 

「はい、できましたよ。ハンバーグカレーですね」

「わわ、ククさんありがとうございます」

「いえいえー、私としてはその言葉が一番の報酬ですからー」

 

 そんなギルドの中を、私は今日ものんびり飛び回っていた。

 なんだか矛盾する話だけど、実際気分的にはそんな感じなのだから仕方がない。

 忙しいというほどでもなく、かといって暇というわけでもない程よく仕事がある感じ。

 働いてるって気がするよね。

 

「ククさん、こっちも注文いいですか?」

「はいはい、おまたせあれ。じゃあ早速注文を聞かせてもらっていいですか?」

 

 一応、私は立場的にこのギルド食堂の料理長である。

 ただここ最近は他の職員も私の作る前世の料理を、いい感じに作れるようになってきた。

 なのでこうして、人の少ないところを埋める形で動くのが今の私だ。

 現在は給仕の人が一人風邪で休んでしまっているので、それを補う形で動き回っていた。

 

「じゃあこのオムライスをお願いします」

「オムライスを一個ね、飲み物は大丈夫?」

「じゃあこの”ぶどう炭酸”をお願いしようかな。おいしいのよねぇ、これ」

「どうもありがとうございます~」

 

 みたいな感じで、オーダーを取っていきながら時折厨房の方を確認するのが私の今の仕事だ。

 厨房で問題が発生していれば、それをいい感じにあーしたりこーしたりする必要がある。

 時刻は九時すぎ、そろそろ多くの冒険者が冒険に出かけて、食堂は暇になってくるだろう。

 それまでもう人踏ん張りするとしよう。

 

 ――で、そろそろ十時。

 ギルドは少し前までの賑わいをどこへやら、ずいぶんと静まり返っていた。

 基本、朝と夜に人が集中するのが冒険者ギルドだ。

 ここからしばらくは、ちょっと一息つける時間帯。

 

「皆さんお疲れ様でした~。じゃあ、ちょっと休憩にしましょうかあ」

 

 私が厨房の人たちに声をかける。

 前世だとこういうことってほとんどありえなかっただろうけど、ファンタジー世界ならこういう仕事中の小休止も珍しくはない。

 スタッフには軽く休んでもらって、営業再開への英気を養ってもらうとしよう。

 で、その間に私が何をするかというと、ギルドの隅に陣取って、ギルドの様子を眺めながら優雅に休憩だ。

 紅茶を飲みつつ、人の少なくなったギルドを眺める。

 少ないといってもまったくいないわけではない。

 未だに酒盛りをしている連中はいるし、なにやら読書をしている冒険者もいた。

 まぁ、大抵は今日が休みだけど特にやることもなくて、ギルドで適当に暇をつぶしに来た人たちである。

 例外はといえば――

 

「あの――ククさん」

「はい、なんでしょう」

 

 私に用がある人、とか。

 その子は十代前半の少年だった。

 たぶん、Eランクくらいの新人冒険者だろう。

 装備からして、そんな感じだ。

 

「この時間に、ククさんが冒険者の相談に乗ってくれる……って聞いたんですけど」

「そうですよ」

 

 私は飲んでいた紅茶をテーブルに起きつつ、少年を反対側に促す。

 相談。

 それこそが、ここ最近私がハマっていることだ。

 

「……実はその、僕……冒険者になって半年になるんですけど、未だにパーティを組んだことがなくて……」

「ほうほう」

 

 なんて話を、つらつらと少年から聞いていく。

 少年はどうやらここまで一人でやってきたようだけど、最近は色々と躓いているらしく、仲間を増やしたいのだそうな。

 しかし人付き合いが苦手で、すでに同期は固定パーティが作られているから話しかけづらい……とかなんとか。

 

「それはまた大変ですねぇ」

 

 言いながら、少し冷めた紅茶を飲む。

 冒険者の悩みは人それぞれだ。

 それぞれに悩みがあって、聞いているとなかなか興味深い。

 何を他人事みたいに……と思うかも知れないが、私のやっていることは基本他人事だ。

 解決は保証しない、いいアドバイスは最初から期待してはいけない。

 そういうルールでやっている。

 とはいえまぁ、今回はなんとなーく解決策も浮かんでいるけれど。

 

「そうですね……少年は、結構食べる方ですか?」

「え? あ、えっと……そうですね、昔からそこそこ大食いだって言われてました」

「ソロで活動するとなると、栄養が常に必要ですからね。食べれるのも才能です。うちの食堂の超大盛り焼肉定食って食べたことあります?」

「はぁ……ありますけど」

 

 あるんだ……あの量を平らげたことあるんだ。

 前世で大食いチャレンジメニューとして出てくる量くらいある焼肉定食を一人で食べれるんだ……すごいな。

 まぁ、とはいえそんな彼には、ちょうどいいだろう。

 

「それ、今提供してもいいですか?」

「え? えっと……そうですね、朝食も食べてないので……」

「問題ない、と。ではお待ちあれー」

 

 私は紅茶を飲み干すと、バッと立ち上がって厨房に入る。

 早速今日の調理開始だ。

 大量の豚肉をフライパンに投入し、上からどばっとソースをかける。

 このソースは私が自作したもので、醤油をベースに甘めに仕上げている代物。

 醤油もそもそも自作であるので、結構自作したものが多いな。

 で、作るのはみんな大好き焼肉定食だ。

 タレがいい感じに焼けているお肉と絡み、香ばしい香りを漂わせる。

 うーん、私もちょっと小腹が空いてきたな。

 こういう時につまみ食いできないのは職業料理人の悲しいところ。

 

「お肉はこれでよし、と」

 

 後はサラダだ。

 手間を考えると、こっちの方が大変かもしれない。

 冷蔵ボックスから野菜を取り出し、手早く刻んでいく。

 最後にドレッシングをかけたら出来上がり。

 ドレッシングの種類は日替わりで、今日は玉ねぎドレッシング。

 最後に白米をこんもり盛ったら完成である。

 この白米も私が用意したもの。

 前世の料理ってね……ファンタジー世界だと手間がかかるの。

 

「というわけで、できました。超特盛焼肉定食」

「わ……いい香りですね」

 

 んで、それを持っていくと、少年に提供する。

 この時少年は呑気にそんなことを言っているけれど、あ(・)る(・)者(・)た(・)ち(・)が少年に視線を向けていることに気づいていない。

 そして彼らは、すぐに少年へと声をかけてきた。

 

「おーう、こりゃまた豪快に行くじゃねぇか!」

「うわっ!?」

 

 声をかけてきたのは、先(・)ほ(・)ど(・)か(・)ら(・)飲(・)ん(・)だ(・)く(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)集(・)団(・)だ。

 現在このギルドには、暇そうにしている冒険者とこういう飲んだくれな荒くれしか残っていない。

 人付き合いが苦手な少年からしてみると、恐怖を感じる相手だろう。

 事実、先程から私にちらちらと助けを求める視線を送ってきている。

 しかし、私の狙いは――彼らをここに呼び寄せることなのだ。

 というのも――

 

「しっかし、お前さんこんな特盛、食べれるのか?」

「へ?」

「そうだぜ、無理はよくねぇぞ?」

「え、いえ……た、食べれますけど……」

「マジか」

 

 男たちが顔を見合わせる中、私が視線で「食べていいよ」と促すと少年がおずおずと焼肉に手を付ける。

 すると――みるみるうちに料理が減っていくではないか。

 

「うお、すげぇ!」

「その見てくれで、ずいぶんと大食いじゃねぇか!」

 

 周りの男たちも色めき立つ。

 私の狙いはこうだ。

 まず、ソロで活動するのは普通の冒険者よりも大変だ。

 それを半年継続できるってことは、この少年には体力がある。

 その秘訣は、料理をいっぱい食べることではないかと推測し、当たっていた。

 で、私はそれを飲んだくれに見せつけるように料理を提供。

 興味を持った飲んだくれが話しかけてくる……といった感じです。

 少年が焼肉定食を完食するころには、のんだくれ達もずいぶんと盛り上がっていて。

 

「すげぇじゃねぇか!」

「え、あ、はい。へへ」

 

 少年も、どこか居心地が悪そうにしつつも、嬉しそうにしていた。

 飲んだくれは決して悪い連中ではない。

 むしろ、長く冒険者をしているベテランがほとんどだ。

 そういう人たちとお近づきになれば、少年の悩みも解決するはず。

 こうして私は、今日も今日とてなやめる冒険者に料理を提供し、その解決のお手伝いをしている……というわけ。

 

「さて、それじゃあ私は行きますね」

「あ、はい。ククさん、ありがとうございました!」

 

 すっかり飲んだくれ達と仲良くなったらしい少年に礼を言われつつ、私は休憩を終えて次なる仕事へと向かうのだった。

 

 

 ○

 

 

 レストレーヌという街の冒険者ギルドには、名物料理人がいる。

 名前をクク。

 長い金髪の髪をポニーテールにまとめ、快活そうな笑みを常に浮かべる小柄な少女だ。

 彼女はこのギルドで、革新的な料理を多数お出ししている。

 中にはそれを目当てにレストレーヌで冒険者になるという者もいるくらいで、知る人ぞ知る有名料理人として冒険者の間で知られていた。

 そんな彼女が、冒険者の悩み事を解決しはじめたのはここ最近のこと。

 料理を提供しながら、悩みを拭い去る姿は、多くの冒険者をより一層惹きつけるものだ。

 

 これは、そんなククが冒険者ギルドで料理人をしながら、レストレーヌで起こる事件に首を突っ込む物語。

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