ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~   作:ロキシード

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アリスクのイベント復刻やったぜ!ストーリー見たかったんで早いとこ進めます。
UA4500感謝!感想随時お待ちしております!


久々の客人

 突然降り立った存在に向けられた問い。

 

「先生……?それに、シャーレって――」

「問答はあとだ。まずはこの状況をどうにかする」

 

 その答えの意味を咀嚼する前に、再びバージルが口を開いた。視界が開けたことで、一度射撃を中止していたヘルメット団も彼の存在を認識する。

 

「お前!何のつもりだ!?」

 

 グレネードが落下する前に炸裂したのを確認していた者が、鋭い視線をバージルに向けながら声を荒げた。理屈は分からないが、この男の出現は先の爆発と無関係ではないはず。

 シロコを仕留めそこなったことに目を白黒させた他のヘルメット団たちが、一斉に怒声の向く先に立つバージルを見る。その場の注目を一身に集めたバージルは黙したまま、ヘルメット団の方を一瞥するのみ。その態度に苛立ちを募らせながら、少女が銃口を向けて叫ぶ。

 

「邪魔するならこの学校ごと撃つぞ!お前ら!」

 

 少女の言葉にヘルメット団が次々に銃を構える。返答次第では、今すぐに一斉射撃を開始する――最後通牒に対し、バージルが口を開こうとしたが、

 

「……そこの大人の人。先生、って言ったかな?」

 

 盾を構えたまま防御姿勢を崩さないホシノが、先に声を発した。

 

「――味方、で良いんだよね?」

「……ああ」

 

 短い返答にホシノは小さく頷き、銃口の先へ意識を戻す。

 

「今はシロコ……そこにいる子を後方に退かせる。そのために――」

「状況は把握した。一度奴らの射線を潰せばいいのだろう?」

 

 ホシノの言葉を遮るようにバージルが閻魔刀を構えた。

 

「導線を確保して……って先生?」

 

 バージルが前方へ跳躍し、鞘に収まったままの閻魔刀を投擲する。彼の手を離れたそれが水平に回転しながら、ヘルメット団のいる方へ飛来する。

 

「くそっ、撃て!撃ち落とせ!」

 

 ヘルメット団が一斉に射撃を開始するが、急角度で飛び上がったバージルには照準が追い付かない。そこへ直前に放たれた閻魔刀が迫る。

 

「うわっ!」

「なに!?なんか飛んできて…ぐっ!」

「こんなもの、掴んで止めれば……いっ!」

 

 次々に少女たちをなぎ倒していく中、一人が両手を広げて掴みにかかる。しかし、回転を維持しながら推進力を増すそれは、刀一本の重さでは到底ありえない衝撃を叩きつけ、立ちはだかった少女を吹き飛ばした。

 

「これで一度態勢を立て直す」

 

 空中で身を翻し銃弾を躱したバージルが、着地と同時に腕を突き出す。閻魔刀がまるで意志を持つかのような軌道で彼の手元へ戻り、バージルはそれを片手で難なく受け止めた。

 幾人ものヘルメット団を弾き飛ばしたそれを握りなおすと、バージルはシロコの方へ歩み寄る。

 

「……立てるか?」

「……あ、ありがとう。自分で立てる」

 

 眼前で繰り広げられた光景に呆然としていたシロコは、遅れて反応するとゆっくりと立ち上がった。

 

「うへぇ、これはすごい助っ人だね。シロコちゃん、一旦下がるよ」

 

 先ほどまでの殺伐とした雰囲気から一転、いつもの調子でホシノが呟き、三人は未だ呆けたままのアヤネたちがいる後方へと向かった。

 

 

 

 

「まずは、あなたが誰なのか聞いてもよろしいでしょうか?」

「この人はバージル先生、シャーレから来たんだってさ~」

 

 一度後方の遮蔽に身を隠した一同。セリカの手当てをしつつ、輪に加わった見知らぬ大人にアヤネが問うと、ホシノがそれに答える。

 

「それって……連邦捜査部シャーレ!?」

「ということは、支援要請が受理されたのですね!よかったですね、アヤネちゃん!」

「はい!これで弾薬や補給品の援助が受けられます!」

「ちょっと待って!」

 

 ノノミとアヤネが喜びを露わにするなか、セリカが口を挟む。

 

「みんなおかしいと思わないの?いきなり現れて、どう見たって怪しいじゃない!」

「セリカちゃん……」

「大体、シャーレの先生ってことは、連邦生徒会の連中でしょ?あんたの格好はとてもそうは見えないわ!それに、手ぶらで来ておいてどうして物資の支援ができるっていうの?」

「それは……」

 

 アヤネが反論しようとするが、セリカの指摘はもっともだった。沈黙したまま、アヤネはバージルへ視線を向ける。その瞳には、わずかな迷いと懐疑の色が浮かんでいる。

 また、バージルもセリカへの返答に窮していた。リンから支給された制服――純白の外套はどうしても袖を通す気にはなれず、彼は常に以前から使用している黒のコートを着用していた。

 傍から見れば微塵も教職者の格好には見えない。全身を黒に染めた男が支援に来たと言われても、疑いたくなるのは当然だ。

 本当にバージルがシャーレの先生なのか。腕章やIDを見せたところで納得はしないだろう。ならば――

 

「物資ならある。……お前たちが俺を信じるかどうかは任せるが、要請を受けた以上俺もやることがある」

 

 バージルはおもむろに立ち上がると、閻魔刀を引き抜き空中に十字を描くように振り抜く。剣線をなぞるように現れた十字の裂け目が開き、揺らめく空間が出現した。

 

「っ!?」

「これは…!?」

「……すごい」

「わあ☆魔法みたいです!」

「――へぇ……」

 

 対策委員会の面々が驚愕に声を漏らす中、バージルはそのままポータルへ足を踏み入れると、いくつかの荷物を携えて戻ってきた。地面に放られたそれらを見たアヤネが恐る恐る近づく。

 

「これは……弾薬?」

「ん、こっちは食糧みたい」

「二人とも!?何が入ってるかもわからないのに危険だって!」

「大丈夫だよセリカちゃん。見たところ普通に補給物資みたいだし」

「これだけあれば、しばらくは困りませんね!」

 

 広げられた物資を前に思わず笑みがこぼれそうになるのを堪え、アヤネはバージルに向き直る。

 

「支援物資の援助に感謝します。今のは一体どうやったのか、気になるところではありますが……」

「ま、一旦それは置いといてさー。とりあえずは先生ってことでいいんじゃない?助けてくれたのは事実だしさ。ねぇ?、セリカちゃん」

「いや、怪しすぎるでしょ!なによ今の!」

「まったく原理がわかりませんでしたねー!これが大人の力でしょうか?」

「ノノミ先輩までそんなこと!みんな少しは――」

「セリカ、今は細かいことを気にしている場合じゃない」

 

 熱くなるセリカにシロコが冷静に告げる。セリカは尚も食ってかかろうとするが、それは響き渡る衝撃音によって遮られた。

 

「っ!この音は!」

「さっきの対物ライフルみたいだね。むこうも態勢を整えたみたい」

 

 ホシノが淡々と言葉を並べると、その内容に疑問符を浮かべる者が一名。

 

「奴らはそんなものまで引っ張り出しているのか?ただの不良組織に見えたが」

「不思議だよねー。どこから持ってきたのか。でも今はそんなことより――」

 

 確かめるように愛銃を握り直し、ホシノが盾を持ち上げる。

 

「あれは遮蔽ごと貫く。このままだとみんなまとめて狙われちゃうよ」

「………」

 

 バージルは思案する。校舎を襲う連中を彼の手ですべて倒しても、彼女たち――セリカやアヤネの信用は得られない。得体の知れない力で蹂躙するだけでは、彼女たちの疑念を深めるだけだ。味方として受け入れられるには、共にこの状況を打開する必要がある。

 打算じみた思考に自分でも顔を顰めつつ、いざとなれば守り抜けばいいと覚悟を固める。

 しばしの沈黙のあと、バージルは意を決してホシノへ言い放った。

 

「シャーレの担当顧問としてアビドス高等学校の代表に告げる。お前たち――アビドス高校の危機に、シャーレの先生として戦闘支援をさせてもらう。いいな?」

「……どうしたの?いきなりそんな……。それにどうして私が代表だなんて思ったの?あ、もしかして連邦生徒会のデータベースを――」

 

 突然の態度、そして自身を学校の代表とのたまうバージルに若干声を上擦らせるホシノに、バージルが言葉を重ねる。

 

「お前がこの中で一番、強いと思ったからだ」

「――。……そう、分かった」

 

 目を見開き、短い間をおいてから一言応じると、ホシノはセリカたちへ向き直った。

 

「みんな。対策委員会は、この人――先生と一緒に戦う。アビドスの危機を乗り越えるためにね」

「ホシノ先輩!?」

「ん、了解」

「はい!頑張りましょうー!」

「ホシノ先輩がそう言うなら……」

 

 委員会の面々が次々に武器を構える中、セリカはホシノとバージルを交互に見て、やがて観念したように補給物資へ手を伸ばした。

 

「もう、分かったわよ!今はとりあえず協力するけど、信用したわけじゃないからね!」

「ふん、勝手にしろ。だが、俺の指揮には従ってもらうぞ」

「はあ!?なにそれ!なんであんたの指示なんか――」

「セリカちゃん、シャーレの先生の戦術指揮ってすごいんですよ?所属もバラバラの生徒だけであの七囚人を撃退したって……」

「だあー!分かったってば!従えばいいんでしょ!」

 

 セリカが半ばやけくそ気味に叫んだ瞬間、思い衝撃音とともに彼女のすぐ横の地面が爆ぜた。

 

「危なっ!…あいつら、今日こそ滅多打ちにしてやるわ!」

「弾薬も補充できましたし、張り切っていきますよー!」

「先生の指揮に従います。よろしくお願いしますね」

「ん、大人の力。借りる」

 

 砂埃が舞う中、バージルは閻魔刀を握り直し、静かに前へ進む。

 戦場の空気が、再び動き始める。

 黄と青の双眸がその背中を射抜いていることに、その場の誰も気付くことはなかった。

 

 

 

 

「アロナ、出番だ」

【はい先生!スーパーアロナちゃん、戦闘のサポートを開始します!】

 

 声が届いた瞬間、バージルは五感が広がるような感覚に包まれた。箱を介して伝えられるのは、生徒たち――対策委員会の少女たちのバイタル、武器の状態、残弾数――

 彼女たちの“力”の波形までもが手に取るように把握できる。当然、敵対するヘルメット団の位置さえも。

 リンクされた情報が脳裏に重なり、戦場の全体像が鮮明に立ち上がった。

 

(こちらに狙撃手はいないか。なら――)

「ホシノ、前線を任せるが良いか?」

 

 初めて見た時から一際大きな力を内包する少女――彼女ならば問題ないだろう。なにより、体躯ほどもある盾を構えていることからも、タンクのような役割は適任と言える。

 

「いつもどおりだね。おじさんは大丈夫だよ~」

「おじ……?まあいい。それで、シロコ…といったか。お前は遊撃だ。セリカの牽制射で炙り出した敵を一掃するんだ。」

「今の私はどっちみち前には出られないし、しょうがないわね……」

「ん、私も前に出る」

「ダメだ。お前、万全じゃないだろう」

「……」

 

 図星を突かれたのか、シロコの表情が曇る。

 バージルが到着するまでの戦闘がどんな流れだったのかは知らないが、彼女のバイタルは良好とは言えなかった。あるいは度重なる戦闘で肉体を酷使した結果かもしれない。

 

「……やっぱりそうだったんですね。いつものシロコちゃんならドローンを壊されることもなかったでしょうし」

「シロコ先輩、ここは指示に従いましょう」

「むぅ……分かった」

 

 シロコが渋々頷いたのを見て、バージルは再び口を開く。

 

「アヤネは適宜弾薬の補給を支援しろ。ポイントとタイミングは基本任せる」

「分かりました」

「最後に、ノノミ。お前は俺とホシノで攪乱した敵をまとめて殲滅しろ。誘導はこちらで行う」

「私はそれで大丈夫ですが……先生は戦闘に参加されるんですね?噂では、シャーレの先生は銃弾一発で致命傷になると聞きましたが……」

「……ただの噂だ。先の戦闘は見ていただろう」

「……それもそうですね。分かりました!では皆さん、気合を入れていきましょー!」

 

 ノノミの掛け声が響いた瞬間、敵の気配が動いた。箱を通じて流れ込む情報が、前衛の突進と後衛の射線形成を示す。狙撃手はすでに照準を合わせており、次弾は数秒以内に放たれる――

 バージルは即座に判断を下した。

 

「来るぞ!ホシノ、連中の射撃を引き付けてくれ」

「任せてー!」

 

【先生、敵の前衛が右へ集中しています!ホシノさんの進路を確保するなら、先にそちらを崩すのが最適です!】

「確認した。まずは右を落とす」

 

 バージルは短く応じると、バリケードを乗り越え猛スピードで敵陣に回り込む。

 

「あれはさっきの大人……!撃て!どうせ連中の弾薬はもう無くなるはずだ!放っておいても問題は……」

「それはどうでしょう☆ようやく射線を確保できました、いきますよ~!」

 

 横から現れたバージルに気を取られ、前方への意識が薄れたヘルメット団にノノミの愛銃――複数の銃身が唸りを上げて回転しながら向けられた。直後、途切れることのない轟音が戦場を満たし、弾丸の奔流が容赦なく叩きつけられる。

 

「ぐあっ!」

「なんで……もう弾切れのはずじゃ……いてっ!」

 

 圧倒的な物量で簡易的な遮蔽ごと敵を無力化していく様は、バージルの目をもってしても圧巻だった。

 

「ほう……あの獲物をああも容易く振り回す……侮れんな」

 

 横目でノノミを見やりつつ、バージルは次々に徒手で対峙する少女を無力化していく。その景色を後方で見たセリカが、思わず声を漏らす。

 

「すっご……なにあれ?なんで銃なしであんな戦えるの?」

「ん、私たちも負けてられない。来るよ」

 

 前方から迫る前衛部隊を前に、シロコが銃を構える。

 

「セリカ!前衛の足を止めろ!」

「言われなくても!」

 

 セリカは即座に銃を構え、ノノミの掃射を逃れてきた敵の足元へ正確に弾を撃ち込む。砂が跳ね、敵の動きが止まった。

 

「シロコ先輩、今!」

「任せて」

 

 左へ展開したシロコが、横合いから敵を射抜く。無防備を晒したヘルメット団はその数空しく次々に倒れていく。

 

「くそっ、ライフルはどうなってる!」

「敵の前衛にかき乱されて射線が確保できません!」

 

 明らかに勢いを失った相手に、ホシノが容赦なく突進していく。盾を構えながら迫る彼女に、生半可な攻撃は通用しない。

 

「このまま押し切るよ」

「全員、ラインを押し上げろ。敵後方の狙撃手との距離を詰める」

 

 指示を飛ばしたバージルが、敵の残存勢力が最も集中する場所へ駆ける。

 

「っ!いつのまにここまで……総員、こいつを撃て!」

「ちょっと!前に出すぎよ!」

 

 敵の集中砲火を向けられたバージルにセリカが慌てて銃を構え、射線を潰すように敵へ弾を浴びせるが、後方からでは、彼を狙う敵の射手をうまく捉えられない。一方彼は無数の銃口に一切動じることなく閻魔刀を引き抜いた。

 

「――!」

 

 複数の銃口から一度に解き放たれた銃弾が迫る。しかし、彼はその場から一歩も動かず、弧を描くように閻魔刀を振るう。甲高い金属音が連続して響き、跳ね返された弾丸が周囲の地面を爆ぜさせ、砂埃が視界を覆い尽くす。やがて乾いたクリック音とともに、射撃が途絶えた。

 砂埃がゆっくりと晴れると、そこには傷一つないまま佇む男の姿があった。

 

「なっ……無傷だと!?化け物が…!」

「お返しだ。はぁっ!」

 

 地面を掬い上げる様な動作と共に、受け流して並べていた銃弾を一斉にヘルメット団へ弾き飛ばす。無数に放たれたそれは、正確に一人一人を打ち倒していった。

 最後に残ったのは、地面に伏せ対物ライフルを構えていた少女のみ。

 

「ひっ…!参った、降参する!」

 

 起き上がり、マスク越しに見える顔を引きつらせながら宣言する。

 

「そんなの聞き入れると思う?」

「ん、情けは無用」

「ま、まて!こいつらをこのままにしたら面倒だろう!?私が全員連れ帰る!だから見逃してくれ!頼む、この通りだ!」

 

 あたり一帯に転がったヘルメット団を指して懇願する様は、まさに必死そのもの。声は裏返り、腰は完全に引けている。

 ホシノが盾越しにショットガンを構えたまま眉を顰める。

 

「……どうする、先生?」

「そうだな――」

 

 バージルは少女へ視線を向けた。その一瞥だけで、少女の肩がびくりと跳ねる。

 砂埃の中、静寂が落ちる。

 

「連れ帰ると言ったな」

「そ、そうだ!こいつら全員、責任を持って連れて帰る!」

 

 少女は必死に言葉を重ねる。対物ライフルを抱えた腕は震え、膝は砂の上で崩れそうになっていた。

 バージルはゆっくりと歩み寄り、少女の前で立ち止まる。

 

「……いいだろう。連れて帰れ」

「ほ、本当か!?」

「ただし――」

 

 バージルの声が低く落ちる。

 

「二度とアビドスに手を出すな。次は"降参"で済むと思うなよ」

 

 

 

 

「先生って結構甘いんだね。意外かも」

「奴らも子供だ。一度痛い目を見れば学ぶだろう」

「――それはどうかな。ま、しばらくは手出ししてこないだろうけど」

 

 ヘルメット団を撃退した一同は、校舎を移動し対策委員会の部室へ向かっていた。階段を上る少女たちのあとを、バージルがついていく。

 

「改めて、自己紹介がまだだったね。小鳥遊ホシノ、3年生だよ。よろしくねー」

「普通に戦闘中名前読んでなかった?まあいいけど……私は1年の黒見セリカ。……一応礼を言っておくわ。さっきは助かったから」

「セリカちゃんは素直じゃないですね~」

「うるさい!早くノノミ先輩も名乗ったら!?」

「わぁ☆怒らせちゃいました!――私は2年の十六夜ノノミです!よろしくお願いします、先生~」

「同じく2年の砂狼シロコ。よろしく」

「私は委員会で書記とオペレーターを担当している1年の奥空アヤネです。よろしくおねがいします」

 

 次々に自己紹介を口にしていく少女たちを、バージルは黙って見守っていた。

 階段を上る足音が重なり、戦闘の余韻がようやく遠ざかっていく。

 

「……なるほど。これで全員か」

 

 バージルがそう呟くと、セリカが振り返りながら答えた。

 

「そうよ。これが対策委員会のメンバー。――まあ、変な人ばっかりだけど」

「セリカちゃんも入れて、変な人5人組ですね~」

「入ってない!私は普通!」

 

 ホシノがやりとりを見てニコニコ笑い、アヤネは肩をすくめ苦笑い。

 

「先生は……えっと、シャーレの担当顧問なんですよね?」

 

 アヤネが恐る恐る問いかける。

 

「そうだ。今日の戦闘で見た通り、必要なら前にも出る」

「前に出すぎでしょ……見てるこっちがどきどきする……」

 

 セリカがぼそっと呟く。

 

「でも、助かったよ。ありがとうね、先生」

 

 ホシノが柔らかく笑う。その言葉に、バージルはわずかに頷いた。

 

「礼はいい、先生として当然のことをしたまでだ。それより、対策委員会といったか。一体何の組織なんだ?この学校の生徒会のようなものか?」

 

 その一瞬、ホシノの瞳が微かに揺れた。しかし、バージルが違和感を覚える前に、彼女はいつもの調子へと戻っていた。

 

「まあ、それはすぐに分かるよ」

 

 階段を上りきると、古びたプレートが掲げられた扉が見えてくる。プレートには、「アビドス廃校対策委員会」と記された紙が貼りつけられている。

 

「さ、着いたよ。ここが私たちの拠点。先生も入って入って」

 

 ホシノが扉を開けると、埃っぽい空気と雑然とした机の並ぶ部室が姿を見せた。

 

「……散らかっているな」

「うっ……耳が痛い……」

 

 ホシノが目を逸らし、セリカがため息をつく。

 

「今日こそ片付けるって言ってたのに、ホシノ先輩が昼寝しちゃうからですよ」

「だって眠かったんだもん……」

 

 そんなやり取りを聞きながら、静かに部室へ足を踏み入れる。机の上には書類が散乱し、隅には使われていない備品が積み上げられている。

 

「ここが対策委員会の部室か」

 

 バージルの低い声に、ホシノが気まずそうに笑う。

 

「うへぇ……まあ、色々あってねー。片づける暇がなくて」

「色々っていうか、ホシノ先輩が昼寝してるだけです」

 

 セリカが即座に突っ込む。

 

「だって眠かったんだもん……」

 

 ホシノは二度目の弁解をしながら、机の上の書類をそっと隠す。ノノミが楽しそうに言葉を発した。

 

「先生、気にしないでくださいね~!ここ、いつもこんな感じなんです!」

 

 シロコは無言で頷き、アヤネは慌てて散らかった机の一部を整え始める。

 

「す、すみません……本当はもっと綺麗にしておく予定だったんですけど……」

 

 そんな賑やかな空気の中、バージルは部室の中央に立ち、静かに周囲を見渡した。

 

「それで――そろそろ聞かせてもらおうか。対策委員会について。そして、アビドスが抱えている問題を」

 

 彼がここを尋ねた目的について。当事者たちに話を聞く時間が、ようやく訪れた。

 




全然納得いく形にならず最終的にいつもより文字数増えました。この調子だとどんどん遅筆になりそうです。やばい。

前話書いてるときも思ったんですがセリカの先輩に対する口調が基本タメなのが難しいな……

一見柔和な対応してるホシノが一番信用してないの良いよね……しかもどっかのスーツと同じようなこと言って初見で自分が一番強いとか言ってくるし、もう警戒しっぱなしよ

そういえば推しキャラらんきんぐみたいので何度やっても一位がシュロでした。しょうがない、あいつは顔、特に表情が良すぎる。2位は連邦生徒会長で固定でした。
全然統一感ない面子だったけど、とりあえずロングヘア―が好きっぽいですね。イチカリンカンナが並んでたので。
(てか優劣つけるのが難しいしビジュアルよりキャラの性格とかストーリーでの重要度で選んじゃってた気がする、なおシュロ)

次回番外編です。やるといったらやる。カンナを出します。
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