ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~ 作:ロキシード
私生活に変化あって投稿遅れるかもしれません。週1は最低でも維持したい。感想待ってます!
バージルの問いはいたってシンプル。対策委員会について。そして彼女たちが向き合っている問題について。向けられた問いに対し、アヤネが真っ先に口を開いた。
「対策委員会とは、――正式名称はアビドス廃校対策委員会と言いますが、このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」
「蘇らせる?」
「はい。アビドス高等学校の廃校を食い止めることを目的としています」
「全校生徒で構成される校内唯一の部活なのです!全校生徒といっても私たち5人だけですなんですけどね」
ノノミが補足すると、続いてシロコが発言する。
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして街を出ていった」
「学校がこの有様だから、学園都市の住民もほとんどいなくなって、カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの」
彼女たちの言葉に、バージルは先程の光景を思い出す。手紙にあった地域の暴力組織というのは連中――カタカタヘルメット団のことだろう。
廃校の危機というのは初耳だったが、自治区を運営する学園の生徒がたった5名ともなれば頷ける。結果住人は減り、入学するものも減るという悪循環に陥っているのだ。恐らく、資金調達は難航しているに違いない。
手紙の内容にひとり納得していると、アヤネがこちらに視線を向けているのに気付いた。
「ですから、もしシャーレからの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね」
「だねー。補給品も底をついてきてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生」
「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごい!」
「あれは大人とか関係なく先生がおかしいんじゃないかな?」
バージルの戦闘能力に言及するホシノが横目でこちらを見てくるが無視を決め込む。そういった反応にどこかの会計担当で飽き飽きしていたバージルは、わざわざ説明してやる気も起きなかった。
どこか期待するような眼差しで彼をみていたホシノは、目をつぶって答える気のないバージルの様子に頬を膨らませる。
「かといって、一度負けたぐらいで攻撃を止めるような奴らじゃないよ。今までだって何度も返り討ちにしてきた」
「ほんっとにしつこいもんね、あいつら」
「こんな消耗戦をいつまで続けなきゃいけないのでしょうか……。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……」
アヤネの最期の言葉に眉を寄せるバージル。直前の考え通りであれば彼女たちの問題は資金難のはず。確かめようと口を開いたところで、先に言葉を発したのはホシノだった。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ………!?」
その内容に驚愕の声を漏らす者が二名。言葉を失うセリカとアヤネの反応に心外とばかりにホシノが言った。
「いやぁ~その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」
おじさん。彼女が時折口にするそれはどうやら一人称のようだが、バージルにはそんな言葉を使う理由が理解できない。いや、とくに理由などないのかもしれないが。
「ヘルメット団は数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからねー」
「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しようかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」
「い、今ですか?」
ホシノの唐突な襲撃作戦にアヤネが戸惑いの表情を見せる。
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できる。ねぇ、先生?」
水を向けられたバージルは瞑目したまま沈黙する。脳内にはついさっき撃退したヘルメット団の様子が浮かんでいた。
ホシノの作戦、その根拠には一理ある。しかしあれだけ怯え切った様子で逃げていった連中が、すぐにまた襲撃を起こそうとするだろうか。
だが、気になる点はあった。連中の装備は普通のチンピラ集団にしては潤いすぎていたし、アビドスの懐事情も把握しているような言動だった。考えすぎかもしれないが、確かめる価値はある。連中のアジトへ向かうのは好都合だった。
「……いいだろう。俺も奴らには用がある」
「そうと決まれば早く行こう。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発すれば日が落ちる前に着く」
「良いと思います。あちらも、まさか今から襲撃されるなんて夢にも思っていないでしょうし」
「先生がそう言うなら……」
委員会の面々が次々に襲撃作戦へ同意を示すなか、アヤネは不安を感じていたようだが、その場の勢いに圧され次第に作戦に意欲的になっていく。
「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」
「善は急げってことだね」
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
どこか締まりのない雰囲気のまま、一同はヘルメット団前哨基地へと向かった。
「カタカタヘルメット団のアジトがあるエリアに入りました」
「付近に敵のシグナルを多数検知。おそらく向こうもこちらが来たことに気付いているでしょう」
通信機越しにアヤネの声が響く。
「ああ、こちらでも確認した。アロナ、いけるな?」
【はい!メインシステム、戦闘モード起動!いつでもいけます!】
「すぐに片づけるぞ。向こうも子供だ、あまり痛めつけるような真似はしない」
そう言って委員会の前に立つバージルに、ホシノが尋ねる。
「先生は指揮もするんでしょ?私たちに任せるんじゃダメなの?」
「ん、さっきはすごい戦いやすかった。あれなら先生が前に出る必要もないはず」
「用があると言ったろう。お前たちが破壊しつくす前に、確かめたいことがある」
「確かめたいこと?」
バージルの言葉にホシノが怪訝そうな表情で言葉を返す。
「……連中の装備、やけに充実していた」
「装備、ですか?」
ノノミが聞き返すと、納得したような表情でシロコが口を開いた。
「確かに、対物ライフルなんて持ち出してきたこと今までなかったね」
「いつもたっぷり弾薬持ってたし、どうやってそんな装備を集めてるのかは気になってたけど……」
「つまり先生はヘルメット団の装備の入手経路を知りたいの?」
「そうだ。簡単には手に入らない装備であれば――あるいは、連中の背後にアビドスを陥れようとする何者かが存在しているかもしれん」
「………。なるほどね」
数秒の間を置いてホシノが納得の言葉を漏らす。しかしその表情には、隠しきれない疑念の色が浮かんでいた。それは、彼の考察を疑ってのものか、それとも彼自身を――
「ま、指揮は任せたよ、先生」
共有される敵の位置情報に各自が銃を握り気を引き締めるなか、ただ一人少女はバージルの背中に視線を向けていた。
「敵の制圧を確認!」
「あっという間でしたね~」
戦闘は、瞬く間に終わりを迎えた。退却してすぐ、まともに補給もしていない状態を狙われたことで、拠点周囲に展開したヘルメット団の態勢はボロボロだった。結果、校舎を襲撃されたときとは逆転して対策委員会が一方的に彼女たちを倒していくワンサイドゲームが繰り広げられた。
拠点内部では、早々に降参をしたヘルメット団たちがバージルの姿を見て先の戦闘を思い出したのか失神してしまった。
「うへぇ、先生めっちゃ怖がられてるね」
「恐怖の象徴ですね~」
「……戦う手間が省けて好都合だ」
ホシノとノノミの言葉にわずかな沈黙を挟んで応じる。バージルとしては手加減しながら少女たちと戦う必要がないのは好都合だった。決して怖がられることに不服があるわけではない。
「それにしても、奴らの装備……」
「うん。市場には出回ってない代物」
「ブラックマーケットから仕入れたんだとしたら納得だね。そうなると、細かい入手経路なんてわからないよ」
ホシノがシロコの言葉に頷きつつ、そう結論付けたところで、倒したヘルメット団を尋問していたセリカがこちらへ戻ってきた。吐かせた情報によれば、彼女たちはアビドスを襲撃するよう依頼を受けていた。しかし、その依頼人の素性は彼女たちも知らされていないようで、金のために言われるまま襲撃を繰り返していたという事実しか確認できなかったようだ。
「裏で糸を引く存在がいるのは確かみたいね。でもどうしてアビドスを?正直言って、わざわざ手に入れるような恵まれた土地でもないでしょ」
「………。考えても仕方ないよ、セリカちゃん。とりあえずこれでヘルメット団もしばらくは大人しくするだろうし、一旦学校へ戻ろっか」
「――ああ、今得られる情報はもうないだろう」
短く応じ、踵を返すバージルは、セリカの言葉にホシノが一瞬思いつめるような表情をしていたのを見逃さなかった。しかし、それを確かめる術は今のバージルにはなく、その場を後にする彼女と、続く対策委員会の少女とともに学校への道を戻るのだった。
「ホシノ、アビドスを狙う者に心当たりはないのか?」
「……うーん、わからないや」
学校へ戻る道中、対策委員会の一番後ろを歩くホシノの隣でバージルが尋ねると、彼女は少し考えるような間を置いてから口を開いた。
「もしかしたらアビドスのどこかにお宝でも眠ってるのかもね~」
「……はあ」
然も何かあるような思わせぶりな間を置いた割に、まともに答える気のない様子にため息をつく。彼女も学校を狙う何者かについては知らないようだ。これ以上の問答は意味を為さないだろう。ならば、今後のアビドスについて改めて議論をする必要がある。そのためにはひとつ、はっきりさせておくことがあった。
「で、問題はこれだけではないだろう?」
「んー?どういう意味?」
「アビドスが抱える問題の本質は困窮した学校運営だろう。今のままでは根本的な解決にはならん。違うか?」
「……そうだね。先生の言う通りだ。でも、根本的な解決って?アビドスがどんな問題を抱えているか、まだ話してないよね」
「大方予想はついている」
アビドスが抱える問題。今まで得た情報からして、第一に挙げられるのは――
「消耗品すらまともに揃えられない財政状況からして、そうだな――"借金"でも抱えている、とかな」
「「「………」」」
前を歩いていた委員会の面々がぴたりと足を止め一斉に振り返る。なかでも、セリカの反応は劇的だった。
「ほう……図星か?」
「うへぇ、まさか今日来たばかりの先生にそこまで見抜かれるとはねぇ」
「ホシノ先輩!それ以上は……!」
「いいんじゃない、セリカちゃん。今更隠すようなことでもないし」
「でも!わざわざ教える必要もないでしょ!」
「セリカちゃん……」
必死に訴える様子に、アヤネが宥めるように声を掛ける。
「でも、先生は私たちを助けてくれた大人だよ?今日だけで二回もさ」
「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼していいと思う」
「そ、そりゃそうだけど……先生は結局部外者じゃん!」
シロコが説得するもなお肩を震わせ声を荒げるセリカの様子に、ノノミが眉を落とす。
「確かに話してすぐどうこうなるような問題じゃないけどさ。もうバレてるし、それに相談したら何かいい解決法が見つかるかもしれないよ?」
「うう……。でも、さっき来たばかりの大人なんて……!今まで誰も、私たちのことなんて、学校のことなんて気に留めたことあった!?大人なんて、ましてや連邦生徒会のっ……。そんな大人が、今更首を突っ込んできたって……!」
「私は認めない!」
きっ、とバージルを睨みつけ吐き捨てると、セリカはどこかへ駆けだしてしまった。
「セリカちゃん!?」
「私、様子を見てきます」
幸いというべきか、もう学校まですぐ近くのところまで来ていたため、彼女がこのまま道に迷うようなことはないだろう。しかし、取り乱し走り去る後輩を放ってはおけない。ノノミが彼女を追ってその場を後にする。
残された者たちの間に、気まずい沈黙が訪れる。
「………」
「……えーと、もう分かってるだろうけど、アビドスには借金があるんだー。ありふれた話だけどさ」
沈黙を破ったのはホシノだった。内容は、彼女たちの借金について。予想通りではあったが、学校運営に支障が出るほどの借金とは一体どれほどの額なのか。バージルは目だけで続きを促す。
「問題は金額。9億円ぐらいあるんだよねー」
「……なに?」
「……9億6235万円、です」
ならほぼ10億ではないか、というセリフは喉の奥に飲み込む。想像をはるかに超える金額に、流石のバージルも言葉を失う。
「これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります」
「ですが完済は現実的ではなく……ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて去ってしまいました」
砂にまみれた道路の真ん中で、アヤネが悔し気に言葉を紡ぐ。
「そして私たちだけが残った」
「なるほどな……巨大な借金を前に生徒は姿を消し、住人は去っていった。廃校の危機に追いやられたのも、その借金が原因というわけか」
バージルは自身の推察がおおむね的中していたことに内心で頷く。しかしそうなると、新たな疑問が出てくる。9億の借金――少ない生徒数で学校を運営しているとはいえ、どうしたって大きすぎる金額だ。それに、アビドスの生徒数の減少はここ数年のものではなく長年続いていた。学園の規模を縮小し、備品や消耗品などの調達、施設維持費に絞れば到底そこまでの金額にはならないはずだった。
「一体どうしてそこまで借金が膨れ上がったんだ?」
「それは――」
アヤネの語った内容は、まさしく不運の連続だった。曰く、数十年前に発生した砂嵐の影響で、自治区の砂漠化が急激に進んだこと。その自然災害を克服するために多額の資金を投入し、結果資金難に陥ったこと。そんな状況で融資をする銀行はなく、悪徳金融業者に頼らざるを得なかったこと。その後も勢いを増す砂嵐のせいで復興はままならず、借金だけが膨らんでいったこと。
それを話している間、アヤネの表情は沈鬱に染まっていた。ホシノの気楽な態度も鳴りを潜め、黙って耳を傾けるバージルの様子を黄と青の双眸で見つめていた。
「状況は理解した。アビドスについて事前に調べはしていたが、まさかここまでとはな」
「今の私たちには、毎月の利息の返済だけで精一杯で……。弾薬も補給品も、補充できずにいました」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生が初めて」
「連邦生徒会への支援要請も何度もしていましたが……助けてはくれませんでした」
「………」
最後にアヤネが告げた内容に、バージルは押し黙る。
連邦生徒会はキヴォトスの中枢にある統治組織。当然各学園の支援もその行政活動に含まれる。しかし、彼がキヴォトスに来る前の連邦生徒会は、とても他の学園地域へ手を伸ばせるような状態ではなかった。だがそんなことはアビドスの少女たちには関係ない。助けを求めたときに差し伸べられる手がなかった、それだけだ。
「っ……」
バージルは思わず歯噛みする。このように事態がこじれた理由はなにか。連邦生徒会も、それに助けを求めたアビドスも。結局は彼女たちは皆子供で、それを背負う者がいなかったのが原因だ。
――だが、今は違う。
「……お前たちはこれからどうする?」
「そうだねぇ。まあ、先生のおかげでヘルメット団って厄介な問題も解決したから、これからは借金返済に全力投球するつもりだよ」
「あっ別に先生は気にしないでいいからね。これは私たちの問題だから」
「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」
「いや――」
ホシノに続き、これ以上の助力は必要ないと宣言するシロコの言葉を受けたバージルは、揺らぎのない瞳で口を開いた。
「迷惑かどうかは俺が決めることだ。俺は先生としてここにいる。生徒が困っているのなら、助けるのは当然だ。お前たちの先生――対策委員会の顧問として」
静かだが確かな強さを持つ言葉に、空気が僅かに震える。
ホシノは目を丸くし、シロコはぽかんと口を空けていた。
「そ、それって……っはい!よろしくお願いします、先生!」
「……へえ、先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」
「良かった……シャーレが力になってくれるなら、私たちも希望を持てます!」
「そうだね。じゃあ、先生。これからよろしく」
「よろしく~先生。今日はもう遅いしここで解散しよっか。アヤネちゃん、一応セリカちゃんに連絡してくれる?」
「はい、わかりました!……っと、一応既読はついてますね」
「そっか。じゃ、明日には元気になってるかな?」
そんなやり取りを眺めながら、バージルは胸中でこれからの進むべき道を静かに見据えた。アビドスが抱える問題、対策委員会の現状、そして自分に課された役割――それらは今ようやく輪郭を得たばかりだが、まだ霧の中に隠れた部分も多い。ヘルメット団の一件には、明らかに誰かの意図がある。この街を、学校を守ろうとする少女たちのためにも、大人である自分が目を逸らすわけにはいかない。
これから先に待ち受ける困難がどれほどのものでも、必ず向き合う。バージルはひとり、心の底で覚悟を定めた。
今回はほぼゲームと変わりない感じですね。そういえば全話で描いた閻魔刀からの物資ズドンに関してですが、クラフトチェンバーのある空間に繋いでました。一応記しときます。
ダンテェェイともそろそろ合わせたいですね~。一応近くにいれば悪魔の存在は互いに感じ取るはずですが、神秘が満ちているキヴォトスではわかりにくいってことにしておきましょう。一応ダンテが魔人化したときはシッテムの箱にいたからわからなかったってことで。
エデンにたどり着けるかな……早くゲマトリアと対面させたい……
あっドヒナを引き忘れた愚か者はここです。Foolishness…
エデン編の妄想。楽園というテーマで苦しむ少女たちの苦悩に向き合うバージルは、己の罪と再び向き合うことになると思うんです。そこでかつてプレナパテスがしたように少女たちの未来を肯定し導くことでこの世界の彼がようやく先生として完成するんだ、美しいですね。決して聖人ではない彼だからこその視点が描けたらいいなと思ってます。
その場合ダンテはどこで出そうかね。多分二人揃っちゃうとベアトリーチェとかいう小物は塵芥に帰す。というか銃の世界においてガンスリンガーダンテが相性良すぎる、早く出したい