ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~ 作:ロキシード
「……やはり無理か」
低く漏らした声は、夜気に吸い込まれていった。
アビドス郊外――砂漠化が進む地域の一角。対策委員会と別れてから数刻。すでに夜は更け、砂の間を吹き抜ける風は肌を刺すような冷たさを帯びている。
人の気配が途絶えた廃墟の屋根に、バージルはひとり佇んでいた。
「お前もここに来ているのか?」
「――ダンテ」
こちらの世界に来てからというもの、めまぐるしい日々に追われすっかり意識の外にあった双子の弟――ダンテの存在について。
奴も裂け目に入っているはずだった。だが、この世界に来てから一度たりとも、その存在を感じたことはなかった。正確には、キヴォトスに満ちる未知の力で覆い隠され、悪魔の存在を感じ取ることが困難になっている。近くにいれば分かるのだろうが――
「……これは」
砂を巻き上げる風が廃墟の間を吹き抜けていく。風切り音の向こう、覚えのある気配がバージルの意識に触れた。
「こんな時間に何をしているんだ?……小鳥遊ホシノ」
静かだが鋭い声が暗闇に突き刺さる。少しして、物陰からホシノがゆっくりと姿を現した。ショットガンを手に握ったまま、肩をすくめるようにして苦笑を浮かべる。
「……完全に気配は消してたんだけど」
その態度とは裏腹に、ホシノの瞳には昼間とまるで違う色が宿っていた。
強い警戒。無数の修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ、研ぎ澄まされた視線。おちゃらけた調子も、柔らかな雰囲気も、今は何処にもない。
風が二人の間を抜け、砂をさらっていく。
「気配は上手く消していたようだがな」
「……?」
「姿を隠していても、内からあふれる力は隠しきれていない」
バージルがホシノの存在を認識できたのは偶然ではない。彼女が持つ力――その"質"が、他の生徒とは明らかに違っていたからだ。ヒナと同じく、強烈なエネルギーの奔流を内に秘めている。
「お前は他と比較しても圧倒的な力を持っているからな。すぐにわかる」
それはバージルが感じ取った力だけでなく、彼女の戦闘時の立ち回りからも判断できる。生徒の持つ力が戦闘力に大きく影響していると、バージルはこれまでの経験から推察していた。
淡々と告げるバージルに、ホシノは眉をひそめた。
「……あの大人みたいなことを言うんだね」
一段と冷たい声音で呟くと、ホシノが銃をバージルへ向ける。
「何のつもりだ?」
「その質問にはそっくりそのまま返す。先生……一応そう呼ぶけど、先生こそ何のつもり?」
ホシノが彼を追ってきた理由は単純だ。信用できないから。
突然現れた大人。未知の力を振るい、ヘルメット団を一瞬で制圧できるほどの戦闘力を持つ存在。しかも、アビドスが抱える法外な借金の事情を知ったうえで、なお自分たちに与するという不可解さ。そして――
彼は自分を一目見て一番強いと断言した。そしてたった今自分の持つ力を強大と評したのだ。あの異形と同じように。それだけで、警戒するには十分すぎる理由だった。
「こんな時間に何を、て言ったね。学校に近づく敵を、こうやって未然に排除するためだよ」
ジャキ、という音と共に弾倉に弾が込められる。
「わざわざこんな辺鄙なところに来て、借金を背負った学校に味方する……そっちこそ、いい加減本当の狙いを教えてくれないかな?」
「ほう、昼間のように取り繕うのはもうやめたのか」
刺々しい態度を向けるホシノに、バージルはまるで驚いた様子もなく応じた。
その落ち着きが、ホシノの警戒心をさらに刺激する。この男は、つくづく見透かしたようなことを言う。
「狙いか。それは既に話した通りだ。お前たちの学校を救うために――」
「それを、本当に全部信じられると思う?」
「セリカのようなことを言う。大人はそんなに信用できないか」
ホシノの言い分は理解できる。彼女が自分を疑うのは、何も不思議ではなかった。かつて彼女たちに近づいてきた大人たちは皆、同じだった。利用するだけ利用し、最終的には突き放す。必死に学校を守ろうとする少女たちの心を踏みにじる者ばかりだった。
だからこそ、ホシノは戦ってきた。学校を、自分たちの居場所を守るために。誰にも奪わせないために。
その目に宿る鋭さは、ただの疑念からだけではない。守るために戦ってきた者の、強い覚悟から来るものだった。バージルはその視線を真正面から受け止め、静かに息を吐いた。
「力は重要だ。力がなければ、何も守ることはできない」
バージルはそれを誰よりも理解していた。ホシノが銃を握る理由もまた、そこにあるのだろう。だが――
力だけでは対抗できないものがあると、彼は既に知っている。彼女たちが向き合う問題もまた、力だけでは解決できないものだ。
「いきなり何を……?そんなこと、私だって分かってる。今までずっと、アビドスのために戦って――」
「子供ならば、大人を頼るべきだ」
静かだが揺るぎない声音だった。
「俺は、大人として持つ力を行使する。そのためにここにいる」
「お前たちを救うのに、特別な理由などない。俺は先生で、お前たちは生徒――それだけだ」
ホシノの瞳が微かに揺れる。警戒は消えない。しかし、その奥にある感情は確かに変化し始めていた。
「大人を頼る……今更そんな……」
かすれた声。砂漠の夜風が、彼女の迷いをさらうように吹き抜ける。
「今までどんな大人を見てきたのか知らんが、俺は俺だ」
「俺はお前たちを守るために来た。それだけは、偽りではない」
「………」
もちろん、すべてを話せるわけではない。この世界に来た経緯や、連邦生徒会で何があったか。だが、今はそんなことはどうでもいい。ただ目の前の少女に向き合うだけだ。
バージルの真剣な眼差しに、ホシノはただ青と黄の双眸で応える。
「嘘は言ってない、みたいだけど」
疑念はまだある。しかし、彼の言葉にはこちらを欺こうとする意思は感じられなかった。
銃を握る手がわずかに下がる。
「私は私の目をあまり信じてない。だから――」
夜の静寂の中、ホシノはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「先生。これからも私は見てるから、行動で証明して欲しい。私が信じられるように」
その声に先程までの敵意は感じられなかった。代わりに、確かな"期待"が宿っていた。信じたいのに信じられない、そんな矛盾を抱えた少女の、かすかな希望。ホシノは複雑な感情を瞳に浮かべながら、真っ直ぐにバージルを見上げる。
バージルはその視線を受け止め、目を逸らさない。互いの視線がぶつかる中、やがてホシノが観念したように息を吐く。それを合図に、先程までの張り詰めた空気が霧消していく。
緊張が和らいだのを見て、バージルは思い出したように言葉を発した。
「ところで、昼間のお前とは大分違っていたが、あれは…」
「うへぇ、別にどっちが素ってわけじゃないけど……ちょっと恥ずかしいね」
「先生、今夜のことはみんなには内緒だよ」
「……わかった」
照れ隠しなのか被せ気味で答えるホシノの圧に、わずかに後退る。
「そういえば先生、明日は空いてる?」
「ああ」
懐の端末からアロナの文句が聞こえるが無視する。大方抜け出してきたシャーレの仕事についてだろう。別にいつでも閻魔刀で戻れるのだから、時々消化しに戻ればいい。……無論、ユウカに鉢合わせないようにしなければならないが。
「じゃあ、セリカちゃんのバイト先に行こうよ。この前こっそり始めたらしいんだ」
「それは……俺が行く必要があるのか?」
「何言ってるの。生徒が学校のためにお金を稼いでるんだから。顧問としてちゃんと現場を確認しなきゃ」
生徒のアルバイト先にわざわざ向かう必要性を感じられず渋るバージルに、ホシノがそれらしい理由を勢いよく捲し立てる。
「はあ……まあいい。とりあえず今日はもう休め。子供は寝る時間だ」
「もう、おじさんこれでも3年生だよ?すぐに大人になるんだから」
自信満々に胸を張るホシノをバージルが鼻で笑う。
「ふん、二十年早いぞ」
「長すぎじゃない?そんなに経ったら今の先生より年上になっちゃうよ」
「俺はお前の倍以上生きているぞ」
「先生って冗談言うんだー。……冗談だよね?」
そんな他愛のないやり取りをしながら、二人は廃墟を後にした。
砂の混じった夜風が背中を押すように吹き抜ける。二人の間にあった緊張はもう跡形もなく、ホシノは肩の力を抜き、バージルの横を軽い足取りで歩いていた。時折風に揺れる髪を押さえながら、ちらりと隣の大人の横顔を盗み見る。
「――」
バージルは彼女の視線に気付いているのかいないのか、ただ前を向いて歩き続ける。
ずっと警戒していた相手なのに、こうして見ると驚くほど普通の大人だった。その背中は大きく頼りがいがある、しかしその言葉やしぐさはどこかぎこちなく不器用さを感じさせるもので。
「ここまででいいよ、先生」
街並みが増えてきたところで、ホシノが足を止める。廃墟の影が途切れ、アビドスのわずかな明かりが二人の足元を照らす。
「じゃ、また明日。ちゃんと来てよ、先生」
ホシノはそう言って、ひらりと手を振る。
その背中が街の灯りに溶けていくまで、バージルはしばらく立ち尽くしていた。
「……危ういな」
昼間には見せなかった彼女の別の顔。ホシノの言葉の裏にあった強い感情。それには覚えがあった。
『みんなには内緒だよ』
大事なもののために戦い、独りでそれを抱え込んでいる。あの一言には、そんな色が滲んでいた。
彼女は強い。おそらくキヴォトスでも有数の実力者だ。だが、彼女はまだ子供だ。そして、強い想いはときに目を曇らせる。そうなったときにどうなるのかは、よく知っていた。
「……注視しておくか」
失うことへの恐れ。奪われることへの恐れ。その恐れが彼女を強くし、同時に危うくしている。強さと脆さが同居する少女。その心の揺らぎを、バージルはホシノの振る舞いから確かに感じ取っていた。
「明日は、どう動くべきか」
バージルは踵を返し、静かに歩きだした。
アビドスに新しい朝が近づいていた。
「ほとんど畳んでいるように見えるが」
「この辺も大分寂しくなったからねぇ。でも、まだ残ってくれてる人もいるんだ」
翌日、バージルとセリカを除いた対策委員会のメンバーは、アビドス商店街のアーケード街を歩いていた。テナントはガラガラで、閉じたシャッターが並ぶ光景は寂寥感を感じさせる。
「ん、着いたよ」
「ここが紫関ラーメンです」
暖簾のかかった木戸の上には、「紫関ラーメン」の文字。
「先生、早く入りましょう!」
「おい、引っ張るな」
ノノミに手を引かれ、店内に足を踏み入れる。途端に、鼻腔を独特の匂いが満たした。濃厚なのにしつこくはなく、醤油と豚骨が混ざり合ったような香り。それはたちまち少女たちの空腹を刺激する。
人の入りは悪くないようで、昼時なのもあって中は賑わっている。
「3番テーブル、替え玉追加です!」
「少々お待ちください、すぐにお持ちしますね!」
声の方を見れば、ホールで駆け回るセリカの姿があった。扉が開いた音に気付いたのか、こちらに駆け寄ってくる。
「いらっしゃいませ!紫関ラーメンで…って、ええ!?」
「あの~☆5人なんですけど~!」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」
「お疲れ」
「みんな……どうしてここに……!?しかも、先生まで……!」
セリカが青ざめた顔でバージルたちを睨む。
「うへ~やっぱここだと思った。大当たりだね」
「おや、対策委員会の子じゃないか。今日は随分と賑やかだねぇ」
カウンターの奥から、年季の入った前掛けをした店主――柴犬の頭をした獣人が顔を出す。
「大将、こんにちは!」
ノノミが元気よく手を振る。
「なんでここが分かったのよ……!」
「セリカちゃんのバイト先ならここしかないからね」
「ホシノ先輩かっ……ううっ……」
得意げに語るホシノを見て、セリカが悔しそうに言葉を漏らす。
「セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
「あ……はい、大将。では、広い席にご案内しますので、こちらへどうぞ……」
セリカに案内されるまま、少女たちがテーブル席に掛ける。テーブルを挟んでホシノとシロコ、アヤネとノノミが横並びに座ると、ノノミがバージルに視線を向ける。
「はい、先生はこちらへ!私の隣、空いてます!」
成人男性が座るにはやや窮屈なスペースを指しながら手招きしてきたノノミ。すると、向かいに座るシロコが対抗するように口を開いた。
「……ん、私の隣も空いてる」
「はあ……俺は様子を見に来ただけだ。そこでいい」
どちらも願い下げだ、と言わんばかりにバージルが近くのカウンター席を指す。誘いを断られたノノミとシロコは肩を落とし、不満げな表情だ。
「見に来ただけって……何も注文しない気!?何しに来たのよ!」
声を荒げるセリカをスルーし、カウンター席に腰を下ろす。
「先生は何味が好きなのー?」
ホシノがテーブル越しに尋ねてくるが、手元のメニュー表を見ても馴染みのないものばかりだ。バージルは生まれてこのかた、ラーメンという食べ物を食したことがなかった。
「……ラーメンなど知らん。なにか注文が必要ならば――」
「おや、あんちゃん。ラーメンは初めてかい?」
適当にドリンクでも頼もうとしていたところに、大将が声を掛けてきた。
カウンター越しに、湯気の立つ寸胴からスープの香りが漂ってくる。
「……悪くない匂いだ」
ぽつりと漏らした言葉に、大将は上機嫌に答える。
「そうだろう!伊達にずっとアビドスでやってきてないからな。で、どれにするんだ?」
「……この特製味噌ラーメンというのを頼む」
「あいよ!」
「お、先生わかってるねー。おじさんおすすめの味だよ」
背後からホシノの声が聞こえてくる。ひとしきりセリカをいじり倒したのか、彼女たちもそれぞれ注文をし始めたようだ。
目の前では、大将が手際よく麺を湯切りし、丼に盛り付けていく。
「はい、お待ちどうさん。特製味噌ひとつ」
カウンターに置かれたどんぶりから立ち上る湯気は、先程までより一層濃い香りを運んでいる。黄金色のスープに浮かぶチャーシュー、刻みネギ、そして紫関特有のちぢれ麵。
バージルはおもむろに箸を取り、静かに麺を掴もうと――
「ちょっと待った。初めてならまずは、スープからいくのが定石だぜ。こいつを使うんだ」
大将が白いスプーンのような形をした食器を手に取る。卓上にも同じものが置かれていた。「レンゲ」と書かれた容器に手を伸ばす。
「ふむ……」
言われるままにそれを手に取り、スープを掬い上げる。バージルはレンゲを口元にゆっくり運び、静かにひと口――
背後から、少女たちが息をのんでその様子を見守っていた。
「――」
下に触れた瞬間、味噌の濃厚さが広がり、すぐ後から旨味が舌を刺激する。ただ濃いだけではない。深みとコク、そして油と混ざり合ったことでまろやかさを演出している。
「……ほう」
低く漏れた声には、感嘆の色が浮かんでいた。大将がニヤリと口角を上げる。
「どうだ、なかなかいけるだろ?」
「丁寧だな。雑味がない」
その一言に、大将の眉がぴくりと動く。
「ほう、わかるかい」
「多少はな」
店主は満足げに笑い、カウンターの奥へ戻っていく。
「紫関の味噌はただの味噌じゃない。三種類の味噌を合わせて寝かせてる。それに、アビドスの水でしか出ない味があるんだよ……って、聞いてないか」
目の前の一杯にすべての意識を注いでいるバージルには、もはや周りの景色は一切入らない。一心に麺を、スープを、盛り付けられた具材を口に運び続ける。
「なかなか良い食いっぷりじゃないか。気に入った」
ある程度食べ進めたところで、バージルがどんぶりを持ち上げる。
「――んっ……ふう」
どん、と鈍い音を立てて置かれたどんぶりの中身は、綺麗さっぱり消えていた。
「うへ、まさかスープまでいったの?先生」
「完飲です!すごいですね~☆」
「ん、こっちはまだ麺も残ってるのに」
「別に急ぐ必要ないと思いますよ……」
わいわいと騒ぐ少女を尻目に、バージルは前髪を軽く手の平で掻き上げて
息を整える。
大将は呆れ半分、関心半分といった顔で腕を組んでいた。
「おいおい、本当に全部いったのか。ラーメンはそういう食べ方するもんじゃないぞ」
「そうなのか……。だが、最後まで飽きることなく楽しめた」
「そうかい。まあ、作りて冥利に尽きるってやつだな」
注文を受けに行っていたセリカが通りかかる。
「あんた、全部飲んだの!?」
驚愕というより、若干引いている反応を見せるが、飄々とした態度のバージルに呆れたようにため息をつき、対策委員会の面々へ視線を向ける。
「ていうか、みんな……今日、結構頼んでるけどさ。お金は大丈夫なの?」
テーブルに並んだ餃子やチャーハンなどのサイドメニューに目をやり、思わず尋ねる。
「もしかして、またノノミ先輩に――」
「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。ここは先生が奢ってくれるはず。だよね、先生?」
会計を済ませようと席を立っていたバージルがぴたりと動きを止める。
「……なに?」
「どっちみち出してもらう気満々じゃん……ていうか明らかに初耳って反応だけど」
「あはは、今聞いたからいいでしょ!」
とんだ暴論である。
「ふざけるな。なぜ俺が――」
「んー?先生、もしかしてお金ないの?」
ニヤニヤとこちらを煽るように言うホシノに小さく舌打ちが出る。すると、通路側に座っていたノノミが小声で話しかけてきた。
「先生、こっそりこれで支払ってください」
「……よせ。生徒の施しなど受けん」
懐から取り出した紙幣を握らせようとするノノミを制止しつつ、バージルは胸元からカードを取り出す。
大人のカード――アロナがそう呼んでいたこれは、どうやら普通にクレジットカードとして機能しているらしい。シャーレ奪還時に見せたあの現象については不明だが、キヴォトスに身分のなかったバージルとしてはちょっとした消耗品の購入に重宝していた。もっとも、シャーレに就任してまだひと月も経っていないため、翌月の給料を頼りにすることになるが。
「……お前、最初からそのつもりだったな」
「何のことかなー。おじさんわからないや」
「あはは……すみません先生……」
「……今回だけだからな」
特に大きな支出もないため、この程度の出費は大した痛手にはならない。が、ホシノにしてやられた事実に思わずため息が出る。
「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」
「ご馳走様でした」
「うん、お陰様でお腹いっぱい」
渋々5人分の会計を済ませると、セリカが追い出すように出口へ誘導する。
「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」
「ホント嫌い!!みんな死んじゃえー!!」
「あはは、元気そうで何よりだー」
閑散とした商店街にセリカの叫びが木霊するなか、一行は紫関ラーメンを後にした。
「……目標を確認しました。アビドス対策委員会もいます」
「了解。奴が一人になるまで待つぞ」
物陰からその光景を盗み見る存在に気付く者は、少女たちの中にはいなかった。
「はあ……やっと終わった。めまぐるしい一日だったわ」
バイト着から制服に着替えたセリカが裏口から顔を出す。
「みんなで来るなんて……騒がしいったらありゃしない」
「人が働いているってのに、先生先生って……ホント迷惑、何なのアレ」
ぶつぶつと文句を零しながらセリカは帰路に就く。終業時間までいたため、ただでさえ人気の少ない商店街には彼女の足音のみが響く。
「ホシノ先輩、昨日のことがあったからわざと先生を連れてきて……!」
一日経って頭は冷えたものの、セリカのバージルに対する敵愾心は相変わらず。いきなり現れた大人を信用するには、少女にはまだ時間が必要だった。
意固地になっている自覚はある。彼は今までの大人とは違い、自分たちの味方をしてくれているのは理解していた。しかし、頭ではわかっていても、感情が彼を受け入れることを拒否する。
「……ふざけないで。私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから」
拳を握り締め、断固として彼の存在を認めない意志を表明するセリカ。背後から近づく気配には、彼女はまだ気付いていなかった。
「とりあえずバイト代が入ったら、利息位の返済に充てて……っ!?」
街灯の少ない路地に入ったところで、周囲に突然武装した集団――特徴的なヘルメットを装備した少女たちがセリカの前に立ちはだかる。
「何よ、あんたたち」
「黒見セリカ……だな?」
「……カタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?」
「昨日あれだけ痛い目を見せたのに、懲りないわね……ちょうど良かった。虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわっ!!」
苛立つ気持ちをそのままぶつけようと銃を手に取る。しかし、先に火を噴いたのは彼女の銃ではなかった。銃声と共に、重い衝撃が背中を貫く。
「くっ、うう!!」
(背後にも敵!?……こいつら、最初から私を……)
咄嗟に背後に視線を向けると、自分が包囲されていることに気付く。だが、時すでに遅し。
「捕らえろ」
ヘルメット団の一人が短く告げる。すると、彼女たちの後方から強烈な爆音を発して砲弾が飛来する。
「ぐっ……けほっ」
先ほどと日にならない衝撃が全身を穿つ。咳き込みながら、砂と砂利が混ざった唾を吐き出す。声を発することもかなわない状態でも、セリカは冷静に状況を分析していた。しかし、予想以上に苛烈な攻撃により、彼女の視界は徐々にぼやけていく。
(対空砲……?違う……この爆発音は、Flak41改……?)
(火力支援?どこから……?ち、違う、これは……まさか……)
(こいつら、ハンパじゃない……ヤバい……意識が……)
めまぐるしい思考が脳内を駆け巡るが、それは意識が途絶えることで中断させられる。
「よし、このまま生け捕りにする。車に乗せろ、ランデブーポイントへ向かう」
「……こいつを引き渡せば、まだ私たちも再起できるはずだ」
ヘルメット団たちがセリカを担ぎ、待機させていた車両へと運ぶ。続々と周りの少女たちも撤収を始める。
しばらくすると、そこには最初から誰もいなかったかのように静寂が支配していた。
そろそろサブタイ決めるのが難しくなってくる頃合いだぁ……
普通にドレスヒナ欲しすぎてマジで過去の自分を恨んでいる…おのれ陸八魔、ゆるさんぞ
アビドス編おもったより長くてちょくちょく展開端折るかもしれないです。オリ展開入れるとなるとそうでもしないと分量が多すぎて遅筆の自分が持ちません。
一応、アビドス編後は一旦パヴァーヌ編入ろうと思ってます。ボリュームは抑えめにしつつ、番外編いろいろやりたいなと。あとエンジニア部はいろいろ作劇上便利なので早く出したいというのもあります。
ミカ、待っててくれ……君の怪力をものともしないむっつり野郎が会いに行くからな
アリウススクワッドの歪な支配関係をバージルがどう捉えるのか、今の内から固めておかねば。ライブ感で書くとエタる。
最後に自慢。復刻のミサキ10連で来てくれました。まあ直前にミカ出そうとして天井貫いてたからね。マジ石ない。