ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~   作:ロキシード

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ブラックマーケットにて

 便利屋68事務所、キヴォトスでも安くない土地に構えたオフィスで、頭を悩ませる少女が一人。

 

「はい……はい、そうです。先日の報告通り、こちらの予測が甘く――」

 

 その手には受話器が握られており、通話相手とのやりとりが芳しくないことが彼女の表情を曇らせる原因らしい。

 

「……ええっ!?一週間以内に!?い、いえ、お任せください」

 

 ガチャリ。時代にそぐわない古めかしい電話機が音を立てて通話を終了すると、カヨコがため息交じりに話しかけてきた。

 

「……で、またアビドスと戦うつもり?もう資金も無いっていうのに。こんなオフィス借りてるから、無駄にお金がかかってるんじゃない?」

「うるさいわね!ちゃんとした会社なら事務所は基本でしょ!?」

「私は前みたいに公園のテントでも構わないけどー?」

「わ、私もアル様が一緒ならどこでも……あ、アルバイトでもしましょうか……?それでもう一度傭兵を……」

「何年かかるのさ、それ……」

 

 ソファで足を組みながらハルカの非現実的な金策にツッコみを入れるカヨコ。向かいに座るムツキは、頭を抱えるアルをにやにやと見つめている。ハルカは相変わらずおろおろとしながら、事務所の中を落ち着きのない様子で行き来している。

 

「あーもううるさい!!みんな静かに!!」

「――融資を受けるわ……」

「は?アルちゃんはブラックリスト入りでしょ?」

「違うわよ!私は指名手配されて口座が凍結されただけ!くっ、風紀委員会め……」

 

 だけ、というにはかなり強烈な措置を取られている状況に、もはや口を出す者はいない。

 

「じゃあ、中央銀行に行っても門前払いだろーね。どーするの?」

「策ならあるわ!あなたたち、今すぐ出発するわよ!!」

 

 勢いよく席を立つアルに、ムツキが目を丸くする。

 

「見てなさいアビドス!このままじゃ終わらせないんだから!!」

 

 カヨコの方はといえば、またぞろおかしなことを考えついた様子のアルにため息を零すばかり。

 

「はあ……」

「一体どうするつもりなんだろ」

「とりあえず、ついていくしかないね」

「アル様……!どこまでもご一緒します……!!」

 

 

 

 

「……どういうことだ。データに誤りはなかったはずだ」

 

 キヴォトス某所、高層ビルが建ち並ぶビル街にて。一段と高く聳え立つオフィスの一室、高層ビルを一望できる場所で男が不可解な状況に疑問を抱く。

 決して安くはないスーツに身を包む機械頭の男――カイザーPMCの理事はアビドス襲撃時の報告書を睨みながら考えあぐねていた。

 

「計算ミスか?いや、しかしあの力は明らかに許容範囲を超えて……」

「……お困りのようですね」

 

 そこへ、どこからともなく現れたのは、これまたスーツに身を包んだ男。……男と形容したが、その姿は異形そのもの。全身を黒一色に染め、唯一露出している頭部には白く罅が走り、それが目や口であると辛うじて認識できる。

 脈絡なく部屋に出現した存在に理事はしばし沈黙する。しかし、彼にとってはその異形――黒服は見知った顔だった。

 

「いや、問題はない。ただ事前に得たデータに誤差があっただけのこと。アビドスの連中が想定より強かった……それだけだ」

「………」

 

 それを聞いた黒服が押し黙る。一体何を考えているのか、表情の窺えないそれからは読み取ることができない。

 

「データに不備はありません。提供した情報どおり、アビドスの戦力は僅か5名の生徒のみです」

「これは単に、アビドスの生徒が以前より強くなっている、と解釈すべきかと」

「それは一体……」

 

 黒服の主張によれば、アビドスが短期間で大きく戦力を強めているということになる。物資も尽きる寸前、資金も無い廃校間際の学校で、何故そんな変化が起こるのだろうか。

 

「アビドスにどのような変化要因があったのか、調べる必要があるでしょう」

「そしてそれはおそらく……ククッ、失礼。では」

 

 笑いを堪えながら踵を返す黒服は、たちまちにその姿をオフィスから消した。

 

「……相変わらず薄気味の悪い奴だ」

 

「クククッ……先生、あなたがこの世界にどのような変化を齎すのか、楽しみにしていますよ。そして、あなた自身の持つ不可解な力、その正体も」

 

 

 

 

「ここがブラックマーケット……結構広いわね」

「連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化してるなんて」

 

 ブラックマーケット――幾多の企業が合法非合法を問わず活動し、巨大な市場を形成するそこは、ひとつの自治区に匹敵する規模となっている。舗装された道路には、頑強なコンクリート造りの建物が連なっており、もはや闇市ではなく立派な街と言える。

 対策委員会の少女たちがその規模に感嘆する中、警戒を怠らぬように呼び掛ける者が二名。

 

「気をつけろ。ここにはそこらじゅうに不良が彷徨いているからな」

「うへ、学区外には結構変な奴がいるからねー」

「ん、ホシノ先輩と先生は、来たことあるの?」

「いんや、私も初めてだね」

「……一度だけだ。長居したわけではないからあまり詳しくはないがな」

 

 アロナのナビを無視した結果、明後日の方向に突き進んだ実績のあるバージルは、眉間に皺を寄せて吐き捨てる。そんな様子にシロコたちが不思議そうな顔をしていると、ドローン越しにアヤネの声が届く。

 

『皆さん、そこは違法な取引の行われる危険な場所です。くれぐれも気を付けて――』

 

 一行の緩んだ空気を引き締めんとしたところで、前方から銃弾が飛来する。

 咄嗟にそちらへ目をやれば、こちらに向かって走ってくる少女と、追随する不良たちの一群が。

 

「おい!待てっつってんだろ!」

「うわぁあ!ついてこないでくださいー!!」

『あの制服は、トリニティの……?』

 

 不良たちを引き連れながら逃げる少女の服装を見たアヤネが何事か呟き、バージルがそれに反応しようとするも、迫る少女の迫真の叫びによって意識はそちらへ。

 

「わわわっ、そこどいてくださいー!!」

 

 必死の訴え虚しく、振り向いたシロコに勢い余った少女が正面衝突する。シロコは直立したまま受け止めるも、少女はぶつかった衝撃でその場に尻餅をついてしまった。

 

「いたた……ご、ごめんなさい!」

「大丈夫?じゃなさそうだね、任せて」

「……へ?」

 

 困惑する少女を庇うようにして、シロコが一歩前へ。銃弾をまき散らしながら追い回していた不良少女と対峙する。

 

「なんだぁ?お前らは。どけ!アタシたちはそこのお嬢様に用がある」

「お嬢様だなんて……私は普通の学生です!」

 

 普通の学生が何故こんな場所に出入りしているのだろうか。そんな疑問はひとまず飲み込む。

 

「誤魔化そうたって無駄だ!てめえの制服、キヴォトス一の金持ち学校、トリニティ総合学園だろ?」

「拉致って身代金を頂戴ってわけだ。どうだ、興味あるならお前らも乗るか?分け前は……ぎゃっ」

 

 誘拐計画の勧誘は、銃撃によって打ち切られた。

 

「ん、興味ない」

「悪人は懲らしめないとです☆」

 

 日頃から学校に迫る不良集団を相手にしている彼女たちにとっては朝飯前。途端に不良たちを掃討していった。

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました!私は阿慈谷ヒフミといいます!」

 

 不良たちを返り討ちにした対策委員会に向けて、危うく学校に迷惑をかけるところだった、とぺこぺこと頭を下げて感謝を述べるヒフミ。

 

「ヒフミちゃんかぁ、よろしくねー。それにしても、トリニティのお嬢様がなんでこんな危ない場所に?」

 

 そんな彼女に、ホシノが先程から抱いていた疑問をぶつける。

 

「あ、あはは……それはですね――」

 

 ヒフミは語った。曰く、既に販売が終了しているレアアイテムを探しており、それがブラックマーケットでは取引されているとのこと。

 販売が終了し裏で取引されるアイテムと聞いて、アビドスの少女たちの頭に浮かぶのは、

 

「それってもしかして……戦車?」

「違法な火器とか!?」

「生物化学兵器ですか!?」

 

 皆一様に武器や兵器の類だった。

 

「えっ!?い、いいえ……えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」

「ペロロ?」

 

 馴染みのないワードにセリカが聞き返す。すると、よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの勢いでヒフミが目を輝かせながらスマホの画面を向けてきた。

 

「はい!これです!アイス屋さんとのコラボで限定生産された、この世に100体しかないぬいぐるみ!」

 

 画面に表示されているのは、焦点の合わない眼をした白い鳥のようなマスコットが、口にアイスをぶち込まれているぬいぐるみ。フォルムは全体的に丸っこいのに、その目とだらんと垂れた舌の生々しさが実にアンバランスである。

 

「………」

「……これ、可愛いかな?」

 

 シロコとセリカの反応はさもありなん。だが、隣のノノミは違った。

 

「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねえ。私はミスター・ニコライが好きなんです!」

「分かります!ニコライさんも哲学的なところがあって……あ、最近出たニコライさんの本、『善悪の彼方』買いましたか?私は初版で入手したんですが――」

 

 怒涛のモモフレトークを繰り広げる二人を前に、ホシノは困ったように頭を掻きながら呟いた。

 

「いやぁー、何の話だか……おじさんにはさっぱりだなー」

「年変わらないでしょ……ていうか、こういう系先輩は興味ないじゃない」

「……お前たち、ここに来た目的を忘れたか」

 

 しびれを切らしたバージルが重い口調で苦言を漏らすと、それに気づいたヒフミが慌てて談義を中断する。

 

「っとと、すみません。話が逸れました。ところで皆さんはどうしてここに?それに、そちらの大人の方は………っ!?」

「……?なんだ、俺の顔に何か付いているか?」

 

 バージルの顔を見て固まったヒフミに訝しげに視線を返せば、逃げるように逸らされる。

 

「いっ、いえ……なんでもないです!」

「この人はバージル先生。シャーレから来た」

「シャーレ……名前は聞いたことがあります」

 

 シロコの説明を受けたヒフミがバージルの腕章を見て頷く。

 

「私たちも探し物があってねー。今は生産されてない物なんだ」

「なるほど、似たような感じですね!」

『っ!!皆さん、四方から武装した集団が接近しています!』

「何っ!?」

 

 アヤネからの通信に身構えていると、向かってくる敵の中に見覚えのある顔が。ついさっき撃退した、ヒフミを襲っていた不良連中が、仲間を引き連れて戻ってきたようだ。

 

「あいつらだ!!」

「さっきはよくもやってくれたな!」

 

 こちらを捉えたと同時に不良集団が先程のお返しとばかりに一斉に銃弾を解き放つ。

 

『先程撃退したチンピラの仲間のようです!完全に敵対モードです!』

「見ればわかる。お前たち、準備はいいな?」

「望むところ」

「ちょっ、ちょっと待ってください!!」

 

 臨戦態勢を整えるシロコたちをヒフミが制止する。

 

「ここで戦っちゃダメです!」

「ん?どうして?」

「だって……ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここの治安機関――『マーケットガード』が出てきます!そうなったら無事ではすみません!!そうなる前に、まずはこの場から離れて……」

「ふむ……わかった。ここはヒフミちゃんに従おう」

 

 ヒフミの言に納得の表情で頷いたホシノが、この場は退却すべきと判断する。そうなれば対策委員の面々は従うのみ。血気盛んなシロコやセリカも、既に発射寸前だった銃を下げ、渋々引き下がる。

 

「ちぇっ、運のいい奴らめ!」

「こっちです!」

 

 抜け道へと先導するヒフミの後ろを、一行は駆けていく。段々と不良たちの怒号が遠のいていく。

 そうして不良たちの包囲を振り切りしばらくしてから、ヒフミが足を止めた。

 

「……ふう。ここまで来れば大丈夫でしょう」

「随分ここに詳しいな、ヒフミ」

「えっ?まあ、ここは危険な場所ですから、自ずと知識も身に着くと言いますか……」

「治安機関や避難経路、悪徳企業なんかは事前調査で把握してます!」

 

 得意げに言い張るヒフミを見て考え込んでいたホシノが唐突に口を開く。

 

「……よーし、決めた!」

「はい?何をですか?」

「助けてあげたお礼に、ヒフミちゃんには私たちの探し物を手伝ってもらおうかな♪」

「え?……えぇーっ!?」

 

 

 

 

「ここまで情報がないなんて……妙ですね」

 

 道中でノノミが見つけた屋台で購入した鯛焼きを頬張りながら、集めた情報と睨めっこするヒフミ。彼女の知識をもってしても、対策委員会を襲った不良たちの武器の入手経路を辿ることはできなかった。

 手に入れたのはせいぜい、末端の販売取引情報のみ。それも全て、匿名のやりとりで、既に痕跡は消えているといった始末。

 

「販売ルート、保管記録。全て何者かが意図的に隠している……そんな気がします」

 

 ヒフミ曰く、ブラックマーケットで活動するような企業は開き直って悪徳商法を展開しているため、逆に変に隠したりはしないのだそうだ。

 それこそ、そこまでして隠したい理由があるとしか考えられない。

 

「例えば、あそこに見えるビル。あれがブラックマーケットでも一際有名な闇銀行です」

 

 歩きながら、向かいの道に構える豪奢な建造物を指すヒフミ。

 

「闇銀行?」

「ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスの犯罪資金の15%があそこに流れているとか」

「横領、強盗、誘拐など……様々な犯罪で獲得されたお金が、違法な武器や兵器に変わってまた他の犯罪に使われる。そんな悪循環が続いてるんです」

「……それじゃ、銀行が犯罪を助長しているようなものじゃないですか」

 

 ノノミが義憤に満ちた声を上げるが、ヒフミはそれに同意しつつも、当然の事実を認めるように淡々と応じる。

 

「その通りです。ここでは、銀行も犯罪組織なんです」

「………」

 

 ブラックマーケットで一番の金融機関が犯罪組織そのものと化している事実に、対策委員会の少女たちは言葉を失う。

 一方、バージルは――

 

「――っ!、この気配は……!」

 

 闇銀行と反対の方向、路地裏へ続く道を睨みながら独り言ちる彼に、セリカが問いかける。

 

「先生?どうかしたの?」

「……野暮用だ。少し外すぞ」

「ええ!?ちょっと、一人でどこ行く気!?」

「……先生、一体何の用なのかな?」

 

 いつものお気楽な調子とは明らかに異なる、見定めるような眼差しでホシノが言うと、バージルは少しの逡巡の後、観念したように短く告げた。

 

「どうしても会わなければならん奴がいる、それだけだ。すぐに戻る」

「お前たちも、あまり騒ぎは起こすなよ。俺が戻るまでは、な」

 

 今すぐに向かいたい気持ちを抑えながらバージルは生徒たちに向き直り、不用意な行動を慎むよう説く。

 その態度にひとまず納得した表情を見せるホシノは、すぐにいつもの調子に戻ってバージルを送り出す。

 

「ふーん、わかった。じゃ、ここは私に任せて、なるべく早く用事を済ませてきてねー」

「ホシノ先輩まで……もう、何なのよ」

 

 ぷい、と背中を向けるセリカを鼻で笑うと、バージルは路地へと消えていった。

 

「行っちゃいました……誰かお知り合いの方でも見つけたんでしょうか?」

「ていうか、こんなとこにいる知り合いって怪しすぎるでしょ」

「ん、ここからは誰も見えなかった」

「まあ、先生なら壁の向こうにいる人に気付いてもおかしくないんじゃない?」

「ええ……?あの、先生って一体何者なんですか……?」

 

 ヒフミが困惑しながら尋ねると、対策委員会は顔を合わせて数秒考えるように黙り込んだ。

 

「……不器用戦闘特化型教諭?」

「何よそれ……まあ、大体はあってる気もするけど」

「いきなり来たからねー。おじさんたちもあんまり知らないんだ、先生のこと」

「後でお知り合いの方と戻ってきたら、お話を聞いてみたいですね~」

『皆さん、お話し中のところすみません。あれを見てください!』

 

 頭上からアヤネのドローンの声が響く。上空から周りを警戒していた彼女が、何かを発見したようだ。

 

『こちらに接近する武装集団があります!まだこちらに気付いた様子はないので、まずは身を潜めましょう』

 

 アヤネの言葉に従って物陰に身を隠しつつ様子を窺っていると、武装集団を視認したヒフミが目を見開いて飛び跳ねる。

 

「う、うわあっ!?あれは、マーケットガードです!」

「マーケットガード?それってさっき言ってた……」

「ここの治安機関でも、最上位の組織です!」

「現金輸送車を護衛してるね」

 

 流石普段から強盗計画を立てているだけあって、いち早くマーケットガードの中心で厳重に警護されている輸送車に気付いたシロコ。輸送車の周りには特に重装備のロボット兵士たちが守りを固めている。

 

「あれ?裏口に入っていきましたね」

 

 固唾をのんで見守っていると、闇銀行の搬入口で停車した輸送車からスーツを着たロボット市民が降りてくる。それは、アビドスの少女たちには見覚えのある顔だった。

 

「あれは……!!」

 

 

 

 

「……こっちか」

 

 路地を抜け、ブラックマーケットを進む。バージルは、導かれるように己の感覚に従って目標へ向かっていた。

 怪しい薬を売る露店や、違法な武器改造パーツを売る店を素通りし、やがて開けた場所へ出る。そこは、ちょっとした観客席と、鉄骨で組まれたフレームで彩られたステージが用意された、青空広場だった。

 両サイドに設置されたスピーカーから、機械的な声が響き渡る。

 

『ようこそお集まりいただきました!ここは表社会では見れない過激なパフォーマンスを楽しめる、ブラックマーケット・ブラッドステージ!!』

 

 耳障りなほどテンションの高い機械音声が鼓膜を打つ。バージルは足を止め、わずかに眉を顰める。

 観客席には、粗暴そうな連中や、明らかに素性の怪しい者たちが思い思いに腰を下ろしていた。ステージ中央にはまだ誰もいない。だが、空気がざわついている。皆、何かが始まると確信していた。

 バージルは視線を巡らせる。違法な物品を扱う市場とは違う、妙な緊張感。そしてこの場所に漂う、色濃い存在感。それは観客のものではない。ステージの裏側、暗幕の向こうから滲み出ている。

 彼にとっては馴染み深い、よく知った気配だった。嫌というほどに。

 

「……」

 

 口を閉ざしたままステージの方を睨んでいると、機械音声が続く。

 

『本日の目玉は――なんと!ブラックマーケットでも滅多にお目にかかれない実戦形式のパフォーマンス!!ルール無用!腕に覚えのある挑戦者はステージへ!』

 

 観客席がどっと沸いた。歓声というよりは、獲物を前にした獣の唸りに近い。

 

『迎え撃つのはこの男!!突如現れた二丁拳銃の使い手!!赤いコートは全て返り血か!?』

 

 暗幕を揺らして舞台に登場する、銀髪の男。

 

『素性不明!目的不明!そんなのはここじゃ関係ない!だが一つだけ確かなのは……戦いの才能だけは本物!!ブラックマーケット・ブラッドステージが誇る、赤い悪魔――ダンテだ!!!』

 

 広場の盛り上がりが最高潮に達する。

 

「やれやれ。派手な紹介だな」

 

 軽口とは裏腹に、銀髪の男の瞳は鋭い。男――ダンテが舐めるように観客席を見渡す。

 

「――ダンテ」

 

 客席の後ろでステージを睨みつけていたバージルと視線がかち合う。

 

「よお、久しぶりだな。バージル」

「――大当たり、ってやつだ」

 

 二人の悪魔が、ここに再会を果たすのだった。




ひとまずダンテ出せました……間隔空いてしまってすみません。

バージルの立ち絵もどきを描こうとペンタブに手を出したはいいものの、久々のくせに無駄な意地でトレースしないでやってたら死ぬほど時間経ってたぞ。

デジタルイラストって無限に修正できちゃうからへたくそ程時間かかる説。

ええい、もう今月中に投稿するという縛りを設けよう。そうしよう。


状況をイメージしやすくするのと、展開やセリフを省略するにあたってアニメの方見返してるんですが、ちょくちょく会話の順番入れ替わってますね。

割とゲームに忠実に進行してきたので、その辺今後うまく調整していきたいところです。

全部説明したい気持ちと、ここいらなくね?って気持ちが二つある~。今度ブルアカ民がどのぐらいの割合なのかアンケとろっかな。
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