ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~ 作:ロキシード
ユウカたちがリンに追い出され、シャーレ奪還作戦に強制参加させられていた同刻、街の道路を広く占拠した集団――不良少女たちは、退屈そうに言葉を交わしていた。
「ふぁぁ……私も戦車で暴れたかったぜ……」
「姉貴、災厄の狐から何か指示は?」
「いや、ないな。連中に動きがあればすぐにでも――」
しかし、突如として現れた陰によって、彼女たちの会話は唐突に断ち切られた。突然現れたバージルに、不良少女たちは一瞬呆然とするが、すぐに銃を向けて怒声を上げる。
「っ――!てめぇ!どこから現れやがった!」
「一般人じゃないのか?そこのお前!とっとと失せな!」
「まさか連邦生徒会の連中か?いや、それにしては…」
「………」
当惑する不良少女たちの中で、一人黙してバージルに鋭い視線を向ける存在――姉貴と呼ばれた少女は、値踏みするような目を向けながら推察する。
逃げ遅れただけの一般市民。そう判断するには、あまりにもその存在の放つ雰囲気は異質だった。警戒を強めながら目の前に降り立った存在を観察する。黒い外套に身を包む大人の格好は、どうみても連邦生徒会の者には見えない。それに、大人が連邦生徒会に所属しているなどという情報はない。正体の見えない相手を前に、不良少女たちの間に困惑の色が濃くなっていく。
一方、ユウカたちの制止を振り切って戦場に降り立ったバージルは、周囲の存在を認めながら確信に満ちた考えを抱く。
(無秩序に街を破壊しているように見えて、その実統率されたような動きをしている)
連邦生徒会からシャーレへの道は、まるで最初から分かっていたかのようにバージルたちの行く手を阻む不良少女たちが陣取っていた。部隊のような洗練された隊列こそ組んでいないものの、数人ごとに纏まりあちこちにバリケードを配置している彼女らは、いつでもこちらを攻撃できるように待ち構えているようだった。――糸を引く者がいるのは確かだ。
そこまで考えたところで、自分に銃口を向ける存在へ意識を向ける。周囲の少女たちと異なり冷静さを保ったままの瞳でこちらを睨む少女が、バージルに言葉を放つ。
「おい、あんた。一般人って風には見えないな。何者だ?」
「答える義理があるのか?」
「……まあ誰だろうと構わない。ここは行き止まりだ、さっさと消えるんだな」
「貴様らに用はない。……が、今は急いでいる。邪魔をするなら力づくで通してもらうぞ」
二人の間に剣呑な空気が流れる。そこへ、
「やっと追いついた…!ちょっと先生、前に出ないでって言ったじゃないですか!」
「……お前たちを待っていたら時間がかかるからな」
「そんなことを言って……!もし撃たれたらどうするんですか!」
「早瀬さんの言う通りです。先生、すぐに私たちの後ろへ……この状況は?」
バージルの後ろから現れたユウカとハスミが次々に物申す。しかしバージルに銃を構える不良少女たちの姿を見て、ハスミは途中で言葉を切り、すぐに戦闘態勢をとる。
彼女たちに続いて現れたチナツとスズミも、バージルが置かれた状況を見て手にした銃を不良少女たちに構える。
「先生は指揮をお願いします。ここは私たちが」
スズミの言葉に、バージルが静かに息を落とした。一方、不良少女たちは彼女たちの登場に明らかな動揺を見せながらも、敵と判断した相手に銃を向け、吐き捨てるように声を上げる。
「あんたらが誰だかは知らねぇが、ここは通さねぇぞ!」
「言ってなさい!不良なんて、私たちの相手じゃないんだから!」
「この数を前にいつまでそんな口が利けるかな!いくぞお前ら!」
筆頭らしき少女が声を発した。その一言を合図に、不良少女たちとの戦闘が動き出した。
以降の戦況は一方的に流れた。先行し敵勢の数や配置、周囲の状況を把握していたバージルの指揮は、人数差など問題にならないほどの効果を発揮した。
「ハスミ、左前方に放置された車を狙え、誘爆させろ」
「正面のバリケードは脆い。急場しのぎで組んだのだろう。ユウカとスズミは前進しながら破壊し、一気に距離を詰めろ」
「右前方、店内からの射線は俺が潰す。チナツは三人のバックアップを頼む」
一度スズミの線光弾で遮蔽まで下がった後、体制を整え側面から相手の戦力を削ろうと提案したハスミに対し、バージルが述べた作戦は正面突破だった。
「さすがに数が多いですね……」
遮蔽物で身を隠しながら、ハスミが零す。
「相手の位置も数も正確に把握できていませんし、不利な戦況であることは否定できません。突然のことでしたので、私たちの弾薬も十分とは言い難いです」
チナツが小さく頷き、自分らの置かれた状況を冷静に分析する。お世辞にも有利とは言えない状態だった。
「いたっ!もうっ!私にはこんなの向いてないってば!」
ユウカは遮蔽越しに撃ち合っているのか、こちらの言葉が聞こえていない様子だ。
「一旦は私の閃光弾で不意を衝いて遮蔽物まで下がることができましたが、ここからどうしましょう」
スズミがバージルに戦術を問う。相手は決して訓練を受けた先頭集団などではない。しかし、質が不均一でありながら彼女たちは一定の人数でまとまって行動し、バリケードまで組んでいる。
「正面突破は危険です。側面から展開して――」
「いや、正面だ。やつらの遮蔽物は脆い。急場しのぎで組んだのだろう。火力を集中させて破壊し、撃ち返される前に距離を詰める。ユウカ、スズミと前へ出るんだ」
「えっ!?ちょっと先生、いくらなんでも無茶じゃない?相手の数もわかっていないのよ!」
いつの間にやら会話に参加していたユウカが、敵中に突っ込むよう指示されたことに異議を唱える。
「敵の数ならもうわかっている。正面のバリケードに8人、左前方に6人、右前方の店内に7人だ」
「多いわよ!それに、正面と撃ち合ってる間に左右から撃たれ放題じゃない!」
「数に関して言えば、相手は所詮寄せ集めだ、問題はない。ハスミ、左前方の遮蔽の近くに放置された車両を狙え。誘爆させろ」
「――!はい、承知しました」
「右の方は俺がやる。袖看板を破壊し中の連中からの射線を潰す。チナツ、ユウカたちの支援を頼む」
次々に指示を飛ばすバージルに、少女たちは戸惑いを隠せない。その内容はどれも明確かつ的確だった。なにより――
「いつの間に、そこまで……?」
チナツは、彼がすでに敵の総数を見抜き、周囲の地形を織り込んだ戦術を組み上げている事実に息をのんだ。敵の数と位置を瞬時に把握する力も驚異的だが、それ以上に際立つのは、環境を正確に読み解く彼の観察力だ。
――実際のところ、彼女たちと違って先行していたバージルには十分な時間があったのだが、それにしても遮蔽物の向こうに潜む存在さえ認識できているのは、彼が無数の戦場を経験してきたからに他ならない。
「よし、準備はできたな」
「ちょっと待って!先生、看板を落とすって言ってたけど銃は?」
「安心しろ。これがある」
バージルはユウカの言葉に、左手で握った閻魔刀を掲げて応じる。
「刀って……それでどうやってあんなに大きい物を斬るつもりなの!?第一、あの位置じゃ届かないじゃない!」
「ユウカさん、ここは先生を信じましょう。私が保証します」
「行きましょう、ユウカさん。私たちが切り開かなくては」
「~~っ!わかったわよ!」
チナツとスズミに宥められ、ユウカが渋々作戦に従う意思を示したところで、全員が戦意に身を引き締める。
「俺が攪乱する。合図をしたらユウカたちは前へ」
「攪乱?一体何を――」
バージルはその場でわずかに踏み込み、右手で閻魔刀の柄の感触を確かめると、
「いくぞ」
瞬間、バージルが地面を強く蹴り、前方へ駆けだす。目の前から一瞬で姿を消した彼に、少女たちが目を剥く。
「速っ!って、先生!いきなり前に出たら――」
「格好の的になります!援護を――」
ハスミたちの言葉もむなしく、いきなり一人で射線に飛び出してきた存在に、不良少女たちは容赦しない。一斉にトリガーが引かれ、乾いた破裂音とともに無数の銃口が火を噴いた。目標は一つ、しかしバージルは飛来する弾丸の隙間を潜りながら、進行方向を急激に変化させて相対する少女たちを翻弄していく。
「嘘だろ!?あいつ人間かよ!?」
「はっや!全然追い付かねぇ!」
人の領域を逸脱した彼の動きに、不良少女たちは驚愕の言葉を漏らす。彼女たちが放った銃弾が、バージルの足跡をなぞるように地面、壁へと弾痕を刻んでいく。
「こっちへ来るよ!」
「馬鹿なやつ!正面から蜂の巣にしてやるよ!」
道に並ぶ店の一角に陣取った少女たちが自分たちの待ち構える方向へ迫るバージルに狙いを定め、トリガーを引く。瞬間、マズルフラッシュが店内を照らす。しかし、そこにあるはずの姿が見えない。
「あれ?どこいったんだ?」
「消えた……」
バージルが視界から消え、状況を見失った不良たちが混乱する中、彼は正面の店から放たれた弾丸を跳躍でかわし、その勢いのまま壁面を駆け上がっていた。
その異常な動きを目にしたユウカたちは、彼の言葉が真実だったことを理解し、驚愕を隠せない。
「先生って本当に銃弾を避けるのね……」
「私も実際目にするまでは疑っていましたが、まさかこれほどとは……」
「とにかく、私たちも作戦を実行しましょう」
チナツの言葉に、ハスミが小さく頷き、トリガーにかけた指に力を籠める。バージルによって不良少女たちの狙いが自分たちから逸れたことにより、ユウカとスズミも射撃を開始した。
「始まったか」
横目にハスミたちが行動を開始したのを見ながら、壁を蹴る。看板の上に移動したバージルは空中で閻魔刀を抜き放ち、その勢いのまま体をひねる。回転する刃と化した彼は、看板の上から地面へ一閃を叩き込んだ。
「はぁっ!」
甲高い金属音が鳴り、残響が場を満たす中、着地したバージルは跪いた姿勢のまま閻魔刀を静かに鞘に納める。その瞬間、看板が無数の刃の軌跡でバラバラになり、崩れ落ちていく。
「えっ?何の音?うわぁ!」
「くそっ出られねぇ!こうなったらグレネードで…!」
「馬鹿!こんなところで使ったら巻き添え喰らうだろうが!」
轟音とともに看板だった残骸が店の入り口を塞いだ。瓦礫の向こう――店内の少女たちの阿鼻叫喚を尻目に、バージルがハスミたちの方を見やる。
そこでは、ハスミによって打ち抜かれた車が爆発炎上し、遮蔽から逃げ出す不良少女たちが次々に狙撃で無力化されていく光景があった。また、ユウカとスズミの一斉射撃によって正面のバリケードはもはやボロボロであり、その機能をわずかにしか発揮していない。
「ユウカ、スズミ!今だ!」
バージルの声が届く。ユウカはその言葉に驚きながら、指示通り前方へ駆けだす。
「まだ壊れてないけど、大丈夫なの!?」
「あの様子ならそう長くはもちません。遮蔽の破壊と同時に一気に殲滅しましょう!」
ユウカに続いたスズミが答える。前方へ駆け抜けた二人を見送りつつ、状況を把握しようと周囲に気を配っていたチナツが、左前方の不良少女たちがユウカたちを狙っていることに気づく。
「――!まずい、このままだと二人が無防備に――」
そこまで口にしたところで、一際大きな銃声が鼓膜を打った。
「ハスミさん!」
「大丈夫です。二人の邪魔はさせません」
ハスミが間髪入れずに次弾を装填し、トリガーを引く。通常スナイパーライフルでは考えられないスピードで成された連続射撃は、目標をすべて無力化した。同時に、正面での戦闘も終わりを迎える。
「よし、このまま一気に制圧するわ!」
「これで終わりです!」
遮蔽を破壊し一気に間合いを詰めたユウカとスズミにより、最後の不良少女たちが倒れていく。
「おい!バリケードが壊れたぞ!ってうわっ!」
「左右の味方は何を…ぐっ!」
「……終わったか」
バージルが周囲に転がる不良少女たちを確かめながら呟く。こちらの被害はゼロ、完璧な勝利である。周囲に残存勢力がいないことを確認すると、彼のもとにユウカたちが集まってきた。
「先生!無事ですか!?ていうか撃つのに集中しててあまり見てなかったけど刀一本でどうしたらああなるのよ!」
「驚異的な身体能力であることは理解しましたが、あまり無茶はされないよう……」
「先生の指揮のおかげで無事制圧できました。ありがとうございます」
「やけに素直に下がると思えば、いきなり飛び出すので驚きました。あなたが負傷したらヒナ委員長に顔向けできません。言っても無駄でしょうが、今のような行動は控えてください、全く……」
少女たちの言葉が途切れなく押し寄せ、バージルは眉間にしわを寄せてため息をつこうとする。だがその瞬間、彼の端末――シャーレへ向かう間際リンから渡されたそれが震えた。
「……リンか。どうした?」
「先程、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。彼女の名前はワカモ。百鬼夜行連合学院で停学後、矯正局を脱獄した生徒です。今そちらにデータを送りました」
「ワカモ!?それってあの災厄の狐!?」
バージルの隣でユウカが声を上げる。
「七囚人が不良集団を率いているのは聞いていましたが、まさかワカモとは……」
「七囚人……ヒナとの会話で聞いた名称だ。一体何者だ?」
ハスミの言葉にバージルが尋ねると、端末の向こうからリンが返す。
「矯正局に収監されていた生徒です。連邦生徒会長の失踪が噂される中、混乱に乗じて脱獄した7人をそう呼んでいます」
「災厄の狐、というのは?」
「矯正局の中でも札付きの彼女たちには、それぞれ二つ名があります。ワカモ――無差別かつ大規模な破壊行為により恐れられた彼女は、「災厄の狐」と呼ばれるようになりました」
「ほう……」
バージルはリンの発言に興味深そうに声を漏らす。
「今回の各地での不良集団による破壊活動は彼女によるものです。似たような前科がある危険な人物なので、気を付けてください」
「目的は不明ですが、シャーレ付近で彼女の目撃情報があります。もし遭遇しても、戦闘は避けて――」
「どうやらその必要はないようだ」
その言葉に、ユウカたちが顔を上げる。バージルが鋭い視線を向ける先――道に並ぶ建物の屋上に立つ影へ視線を向ける。
「おや、定期連絡が無いと様子を見に来てみれば、これは一体どのような状況でしょうか?」
災厄の狐が、静かに立っていた。
いかんせん今月に就任した先生なもので、メインストーリーや常設イベでないところで深堀された生徒たちのキャラが全然わからないんですが、そのうち登場させるまでには動画なりなんなりで把握しておきたいですね。
キサキとか一瞬の登場なのにすごい人気ですし、グルストと絆ストだけでそんなに人気が出るのか?(いうて先生じゃない頃から名前は知ってたレベルなので相当かも)
イベで使った水着門主めっちゃEx回せるし引くか迷ingなんですが、水着ホシノまだ出てないしハフバも来るだろうしで微課金先生の石が足りねぇ!
好きなキャラを引くか、強いキャラを引くか(ちょろいので引いたキャラもどうせ好きになる)
次回でプロローグ終えたい!