ブルーアーカイブ~Wish of Blue Devil~ 作:ロキシード
今更だけどR-15タグ入れたのは恒例行事やるためなんで生徒が原作以上にひどい目にあうことはないです!
「――?ここは…」
周りを見渡す。先程まで立っていたシャーレの地下の薄暗い部屋とうって変わって、見渡す限りの青空が広がっている。足元を見てみれば湖のような水面に立っており、その地平は何処までも続いていて、現実味がない。バージルは、自分の手の平を握ったり開いたりして感触を確かめてみたが、どうにも夢ではないらしい。感覚はいつも通り、しっかりと自らの足で歩くこともできる。
「行ってみるしかないな……」
現状、それ以外の選択肢もない。他に進むべき場所も見当たらない以上、バージルは一歩、教室へ足を踏み入れる。といってもドアからではなく、そもそも壁自体が崩壊しかけているため、堂々と低くなったそれを跨いだ。
「……」
入ってみて気づいたが、ここは小学校の教室のようだ。前方にはチョークで何やら落書きがされた黒板があり、後方にはロッカーが配置されている。そして中央には木と鉄パイプでできた机と椅子が並べられており、そのうちの一つには――ひとりの少女が机に腕を組み、顔を伏せて眠っている。
「この娘は…?」
バージルは警戒を保ったまま少女へ近づいていった。しかし、見れば見るほどただの子供で、これまで出会った生徒の誰よりもずっと幼い。近づくにつれて、張り詰めていた警戒心がゆるやかに解けていく。すぐそばで居眠りに着く少女は、警戒するに値しないだろう。何より――
「くううぅぅ……」
「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方が……」
寝言を呟く様は、幼子そのものだった。
「えへっ……まだたくさんありますよぉ……」
完全に毒気を抜かれたバージルは、少しの逡巡の後、少女を起こすことにした。今は情報に乏しく、手掛かりを得るにはこの少女に話を聞くしかない。バージルはとりあえず、少女の肩を揺すってみる。
「うにゃ……まだですよぉ……しっかり嚙まないと……」
どんな夢を見ているか定かではないが、なかなか目覚めそうにない。
「…おい、起きろ」
「あぅん、でもぉ……」
肩を揺らしても一向に起きない少女に、思わず眉間にしわを寄せながら、バージルは趣向を変えてみることにした。肩に置いていた手の指を、少女の頬に突き立てる。
「…これならどうだ」
「……うぅぅぅんっ」
何度か頬をつつくと、少女が小さく唸り声を漏らし、閉じていた瞼に力が入る。ゆっくりと上半身を起こしながら顔を上げた彼女は、眠たそうに眼を開いた。
「むにゃ……んもう……ありゃ?」
「ありゃ、ありゃりゃ……?」
まだ頭がはっきりしていない様子で周囲を見回す少女と、目が合った。
「え?あれ?あれれ?」
「せ、先生!?」
こちらを見るなり驚いた様子で先生と呼んでくる少女に、バージルは目を瞬かせる。
「俺を知っているのか……?」
「この空間に入ってきたということは、まさか――え、と……名前が……」
「……俺はバージルだ。今日からキヴォトスの先生として――いや、それよりお前は何者だ?」
この空間――彼女が口にした内容が引っ掛かり、バージルが尋ねる。
「う、うわああ!?もうこんな時間!?」
「おい、落ち着け」
「うわ、わああ?落ち着いて、落ち着いて――」
急に慌てだした少女を宥めると、彼女は一度深呼吸をしてから口を開いた。
「ふう……えっと、その……あっ、そうだ!まずは自己紹介からですね!」
「私はアロナ!この「シッテムの箱」に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「!……そうか、つまりここは――」
その発言内容にバージルは喉を鳴らす。彼女の発言からして、ここはシッテムの箱の中――どういう理屈か不明だが、今自分はそこに入り込んでいるらしい。リン曰く起動する原理すら不明の未知のアイテム、それがもたらした結果とすれば、この状況にも納得がいく。そんな考えに耽っていたバージルに構わず、少女――アロナが続ける。
「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」
「ずっと……?随分楽しそうに夢を見ていたようだが」
笑顔で向けられる言葉に訝し気な視線を向けると、アロハが肩をすくめて、ばつが悪そうに呟く。
「あ、あうう……も、もちろんたまに居眠りしたこともあるけど……」
「……ふん、まあいい。サポートしてくれるというなら、あー……よろしく、頼む」
なぜか彼女相手にはいつものように強気に出られず、素直にそう告げると、アロナは目を輝かせてとびきりの笑顔で応じた。
「はい!よろしくお願いします!」
「生体認証?」
改めて軽く自己紹介を済ませた後、アロナが生体認証とやらをすると言い出した。
「はい!……少し恥ずかしいですが、バージル先生、こちらの方へ来てください」
その言葉に従ってバージルが近づいていく。二人の距離が手を伸ばせば触れられるほどの距離にまで縮まったところで、アロナが顔を赤らめながらバージルを見上げ、人差し指を彼に差し出した。
「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください」
「……これでいいのか?まるで――」
互いの人差し指を重ねる光景にかつて子供のころに観た映画を思い浮かべる。
「うふふ。まるで指切りして約束するみたいでしょう?」
「いや、どちらかといえばE.T.……まあいい。それで、生体認証はできたのか?」
「何か失礼なこと考えてませんか?……とにかく、これで指紋を確認するんです!」
アロナが頬を膨らませて不満げにバージルを見る。そしてすぐに得意げな表情に戻ると、顔の前に持ってきた人差し指を見ながら語りだした。
「ここに残った指紋を目視で確認するんです!すぐ終わりますよ!こう見えて目は良いので。どれどれ……」
真剣な表情で自分の指と睨めっこを始めたアロナを、静かに見守る。
「うーん……」
「……?」
「……まあ、いっか!はい!確認終わりました!」
「……おい」
さっきの表情は、どう見ても大丈夫とは言い難い。バージルは短く息を吐くと、指摘すること自体を放棄した。
「なるほど……先生の事情は大体わかりました」
バージルはアロナに現在の状況――連邦生徒会長の失踪と、それに伴うサンクトゥムタワーの制御権を失ったことを話した。会話の節々で感じていたことだが、彼女はキヴォトスの事情にはかなり精通しているらしく、バージルの発言内容に関しては特に引っ掛かることもなく理解していた。高性能AI――にしてはかなり人間らしい様子だが、連邦生徒会長の遺物だけあって、その能力は計り知れない。バージルは最初の印象を改めつつ、彼女に一つの問いを投げかける。
「連邦生徒会長について何か知っているか?」
「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……」
視線を落としながら言うアロナに、バージルは期待が外れたことに僅かに目を細める。その表情は嘘を言っているようには見えなかった。
「……ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです」
その言葉に目を見開く。
「……本当か?なら早速頼みたい」
「はい!分かりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!」
アロナが目を閉じ、数秒沈黙した。
「……」
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……」
「先生、サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今、サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります」
「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」
バージルは静かに驚きを飲み込んだ。リンの言っていた通り、シッテムの箱――アロナの力で行政権の復帰ができるとは。ものの数秒でキヴォトス全体を掌握した目の前の幼い少女に、抑えきれない興味が湧く。彼女の正体は一体――
「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます」
バージルが思考の底へ沈み込んでいたところを、アロナの声がふっと引き戻した。
「制御権の移管…」
「はい。でも、大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても……」
今、キヴォトスを支配するのはバージルだ。それを連邦生徒会に明け渡すのか。現状彼女たちは混乱に陥るキヴォトスで後手に回っている。しかし――
「――俺を信じたリンを、信じる」
「アロナ、承認する。制御権を、連邦生徒会に」
「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します」
「ああ。……これからも頼む、アロナ」
「はい!よろしくお願いします!バージル先生!」
目を閉じた途端、意識が跳ね戻るように、バージルはシャーレ地下の一室に立っていた。手元には画面が水色に光るシッテムの箱――声が聞こえた気がしたが気のせいだと思いたい。
【無視しないでください!先生!こっちでも沢山お話しましょうね!】
気のせいではなかったらしい。どうやらアロナはあの空間だけでなく、こちらへ直接語りかけることもできるようだ。急に増えた賑やかな面子に、バージルはひとつため息を落とす。視界の端では、リンが誰かと通話をしている様子が見えた。
「……はい。分かりました」
「――。バージル先生、サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました」
通話を終えたリンが、今しがた受けた連絡内容をバージルに告げる。
「そうか。……俺はどうなっていた?」
「どう、と言われると難しいですが……箱を起動したあとは、その場で立ったまま目を閉じていました。数秒ほどですが」
「――そうか」
向こうとは時間の流れに違いがあるようだ。ひとまずはそう結論付ける。
「連邦生徒会がタワーの権限を掌握したことで、これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」
「お疲れさまでした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」
「俺にできることをしたまでだ。――これの力がなければ、何もできなかっただろう」
「そうかもしれません。ですが、あなたは私たちにできなかったことを成し遂げた。それだけで十分です。――これから、キヴォトスをよろしくお願いします」
最後の言葉は、それまでと違った重みをもって伝えられた。今日ここに至るまでに、彼女なりの不安もあったのだろう。見ず知らずの存在に世界の命運を託したようなものなのだから、それも当然と言える。
「ああ。こちらこそこれから世話になる。……肩の荷は降りたか?」
「……お見通しですか。まったく、さっき会ったばかりだというのに……。先生という人は侮れませんね。本当にあの人が選んだんじゃないでしょうか?」
「さあな。あえて言うなら年の功というやつだ。お前たちの倍以上は生きているからな」
これまでの緊張が解けたのか、バージルに対して軽口を返すリンにそんな風に告げると、彼女はこちらの顔を見て押し黙る。
「どうかしたか?」
「……いえ、特には。…先生は随分お若く見えますが、その……いえ、こういった質問は失礼ですね」
「別にそうは思わん。長い間日の光を浴びずに生きてきただけだ」
「一体今までどんな生活をされていたのですか……とりあえず、ついてきてください。連邦捜査部「シャーレ」をご紹介いたします」
いつの間にか電機が復旧していたようで、明るくなった通路をリンが歩き出した。これもタワーの掌握によるものだろうか。そんなことを考えながら、照明の下を進む彼女について、シャーレの部室へ向かう。
「シャーレについてですが、立ち上げの経緯とその権限はすでに話した通りです」
「すべての生徒を加入させることができ、キヴォトスの全学園自治区で活動できる、だったか」
「はい。面白いですよね。捜査部と呼んでいますが、その部分については連邦生徒会長も特に触れていませんでした」
肝心な時に説明をしない奴だ、と心の中で呟きながら、バージルが尋ねる。
「つまりは何をするんだ?教鞭を振るうわけではないのか?」
「それも時には必要となることもあるでしょう……つまり、なんでも先生がやりたいことをやって良い……ということですね」
「……先生にとんでもない信頼を寄せていたらしいな、連邦生徒会長とやらは」
「……それを本人に確かめたくても、彼女は相変わらず行方不明のまま。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちに対応できるほどの余力がありません」
以前と同じ行政管理ができるという話はどこへ?とバージルが訝しげにリンを見るが、彼女の様子は真剣そのものだ。もとより行政管理というのも限定的なものなのかもしれない。
「今も連邦生徒会に寄せられてくるあらゆる苦情……支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど……」
「……ん?」
雲行きが怪しくなってきた。彼女は何を言っている?
「……もしかしたら、時間が有り余っている「シャーレ」なら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」
「……そういうことか」
リンがこちらを振り返り足を止めた。気づけばシャーレの部室前についていたようだ。体よく面倒ごとを押し付けられた事実にバージルが顔を顰める。
「その辺りに関する書類は先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください」
一方的に告げるリンに思わず口を挟む。
「おい……俺は何でも屋になった覚えはないぞ」
「そうですね。ここで先生として働くかどうか……すべては、先生の「自由」ですので」
外から来た自身の住居が無いことを暗に突き付けられ、バージルは舌打ちを飲み込む。
「……わかった」
「それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡いたします」
彼女はこれ以上ないほどのビジネススマイルで言い放つと、もう用はないと言わんばかりに退室した。してやられた事実に歯噛みしながら、机に広がった資料に軽く目を通す。ほとんど内容はわからないが、覚えのある単語があった。
「ミレニアム……ユウカが所属する学園だったか。――そういえば」
シャーレの外に彼女たちを待たせていたことを思い出し、バージルは部室を後にした。
「こちらでもサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ」
「ワカモは自治区に逃走したようですが……すぐに捕まるでしょう。あとは、ヴァルキューレに任せます」
「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
「…あまり目立つのは好きではないが、そうか。ひとまずは、皆ご苦労。そして――」
再開して早々、ユウカとハスミがそれぞれ今回の騒動の収束を報告してきた。バージルは軽く労いの言葉を送り、一度息を吸った。
「お前たちが無事に終わって良かった」
その一言で場の空気がぴたりと止まった。会話を後ろで聞いていたスズミとチナツまで目を丸くし、ユウカは頬を赤らめて、怒っているようにも見える。
「……?とにかく、今日は解散だ。それぞれやるべきこともあるだろう」
「……そうですね。これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄って下さい、先生」
「ご連絡いただければ、自治区を案内しますよ。普段から巡回していますので、土地勘には自信があります」
ハスミに続いてスズミが一礼し、二人は踵を返して帰路についた。
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃったときは、ぜひ訪ねてください」
チナツはそう告げると、足早に去っていった。バージルは彼女がヒナの手伝いをすると言っていたことを思い出す。
最後に、ユウカがやや上擦った声で話しだした。
「み、ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」
早口で別れの挨拶を終えると、ユウカはこちらを一瞥もせずに逃げるように姿を消した。
【あはは……なんだか慌ただしい感じでしたが……ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れさまでした】
地下で無視して以降、空気を呼んでか黙っていたアロナが語りかける。
「はぁ……まったくだ。ともあれ、お前にも世話になったな。アロナ」
【はい!でも本当に大変なのはこれからですよ?】
【これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです……!】
「……そうらしいな。想像するだけで先が思いやられる。だが――」
机に広がった大量の資料が頭に浮かび、思わずため息が出そうになる。しかし、やるべきことは変わらない。
「俺にできることをする。生徒たちの未来のために」
――大人として、先生として。胸に刻んだ想いを静かに確かめる。
【はいっ!それではキヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします、バージル先生!】
一方そのころ、キヴォトス上空にて。
雲よりはるか上から、星のように降り注ぐ存在が――二つ。一つは赤いコートに身を包んだ銀髪の"男"だった。彼は風を切りながら空中で胡坐をかき、自分の状況を理解しようと周囲に目を向ける。どうやら空にいるらしい。
「うん……?こりゃ一体どういう――」
状況だ?という言葉が紡がれるより先に、彼の目に高速で落下する少女が映る。
「おいおい…!目を覚ましたと思ったら空から真っ逆さま、ついでにお姫様までいるオマケつきだ!」
自分を追い越して猛スピードで落下していく少女に、赤いコートの男――ダンテが軽口をたたきながら力を集中させる。周囲のエネルギーが彼の身体を中心に高まっていき、やがて放射状に赤い光が放たれると、ダンテがその姿を変身させた。
――魔人化。悪魔と人の混血である彼だからこそなせる業である。先ほどまでの人の姿から、異形へと変容した彼は、背に広げた翼を羽ばたかせて加速する。目標は、落下していく少女――黒いドレスに銀髪の彼女は、意識を失っているのか、無抵抗に落下していく。
しかし、魔人化したダンテに敵うスピードではない。彼はすぐに少女に追いつくと、庇うように抱き寄せ、そのまま雲に突っ込んでいく。豪風に揉まれ、雷鳴の中を潜り抜け、ようやく雲を抜けると、そこは見渡す限りの砂漠だった。
「……ここはどこだ?レッドグレイブじゃねぇみたいだが。っ――!」
ここに来るまでの記憶を辿ろうとした瞬間、ダンテの頭に鋭い痛みが走る。
「あぁ!?なんだこりゃ……なんか急に思い出してきたぞ…!」
裂け目をくぐり、バージルを追った先であった出来事が、突然はっきりと浮かび上がる。――それは、出会いだった。
「はぁ…あの野郎、どんどん先に行きやがって。こんなところで迷子になったらどうすんだ」
それは自分自身か、それとも兄のことか。あえて明言はしなかった。いずれにしても、こんなわけのわからない裂け目ではぐれるのはまずい。もし世界の歪みで生まれた次元の隙間のようなものだったら、閻魔刀のない自分には帰る手段がない。
「とにかく、早く追い付かねぇと……うおっ!」
突然足場の感覚がなくなり、声を上げる。入ってからずっとはっきりしていなかった視界だが、それでも歩くことはできていた。しかし今は周囲の足場どころか、空間全体がぐにゃぐにゃと形を変えて、捉えることができない。
「なんだってんだよ!……あ?」
わけもわからず浮遊感に身体を包まれながら文句を垂れていると、急に視界の先に一点の光が現れた。それはみるみるうちにダンテの鼻先まで近づいて、やがてその形を変える――黒いセーラー服を着た幼い少女へと。その瞬間、ふわついていたダンテの身体がその場で固定された。
【対象を確認。階層外宇宙へのゲートが急速に収縮しています。】
「よお嬢ちゃん、あんたが俺をここに呼んだのか?」
固定されたままの姿勢でダンテが軽い口調で目の前に現れた少女に問いかける。しかしその目は眼前の存在を見定めんと警戒の光を放っていた。
【否定。本事象は複数の偶然が重なったものであり、本来こちらの多次元宇宙とは……】
「あー、そういう話ならパスだ。難しいのは苦手でね。嬢ちゃんが呼んだわけじゃねぇんだな?」
ダンテが無機質に言葉を並べる少女の声を遮る。彼の態度にわずかに不服そうな間を置いて、少女が問いに答えた。
【………。肯定します。事故のようなものです。あれの持つ刀の力によるところが大きいかと。】
「――!!」
少女の言葉に、驚きで目を見開き思わず尋ねる。先ほどまでの警戒は、現状を打破する可能性への希望へと変わっていた。
「……つまりあんたも、あのクソ兄貴の被害者ってわけだ。それで?俺はどうしたら良いんだ?」
【……何の話でしょう】
「わざわざこうして目の前に現れたんだ。なにか頼みたいことでもあるんじゃねぇか?」
【……。私はAIです。あの人の望むまま、サポートするだけ。】
ダンテの言葉に、少女が短い沈黙を挟んで静かに告げる。機械のような声色だが、その瞳は揺れていた。
「そうかい。なんでもいいが、自分には素直になった方がいいぜ。先輩からのアドバイスだ」
【……私は――】
少女は何かを言いかけて口を開く。しかし、ほんの一瞬の迷いを振り払うように首を振ると、先程までの冷たい表情へと戻り、淡々と言い放つ。
【…私の役目は一つ。あなたを彼と同じ時空間へ転移させます。】
「はぁ?何を…」
【直にカードの効果も終わりを迎えます。説明の猶予はありません。】
「おい!ちょっとは話を聞けよ!」
ダンテが食い下がるが、少女には取り付く島もない。
「くっ……意識が…!」
周囲の景色が物凄い速度で収束していくのを視界に捉えながら、ダンテは体の感覚と意識が薄らいでいくのを感じた。
【……一つだけ、お願いします。どうか、あの人を……】
【彼女を、救ってください。】
最後に認識できたのは、声。
「……はっ、言えたじゃねぇか…報酬は――」
――ストロベリーサンデーで頼むぜ。
言い切る前に、彼の意識はそこで途切れた。
「思い出したぜ……嬢ちゃん」
「その依頼、しっかり受け取った!」
全然アロナとの会話だけでいつもの文字数いっちゃってどうしようかと思ったんですが、前回ダンテ視点もやるっていっちゃったんで無理やり詰め込みました。
ようやくバージル若返り設定を出せそうでうれしい。個人的には2のダンテがビジュ的に一番好きなんで、二人ともそこくらいまで若返らせます(鋼の意志)
記憶巻き戻し失敗して身体だけ若返ったダンテくん、空中から飛来するの巻
丸くなったバージルをさらに本作では子供守るマンにしてるのでどんな感じに喋らせるか塩梅が難しい!時折スパダリムーブする強面イケメンみたいな感じにしたいんだけど、あれ、もしかしてPGRコラボに結構近いのか???
当方PGRはやってないんですがあのコラボの気合の入りようはすごかったですね。motivated combo再現されてたし
ていうか閻魔刀の新設定生えてきてません?何?未熟者が使うと怪我するみたいなやつ!……ええやん、理解できる。
つまり半端な奴が持てば閻魔刀自身が驕るな――!!するんですね
はやいとこいろんな生徒と会話させてぇ~