囚人No.13 安心院なじみ 作:囚人
再び襲いかかってきた荒くれ者どもに向かって、次元切断機能付きの獲物を振り回すこと数分。鍔迫り合いを何度も繰り返していた僕はまさしく絶好調で、ファウストちゃんとドンキホーテちゃん共々、思うがままに駆け回っていた。
「ふう。これでひと段落ついたかな──いやぁ、バラバラになった肉片をくっつけ直すのではなく、むしろ連中をバラバラな肉片にするだけっつーのは、流石に楽でいいね」
「……ファウストとしても同感ですが──しかし業務内容が単調だというのは退屈ですね。このままでは普段のあなたのように、生あくびを噛み殺し続けることになりそうです」
「うおおおおおっ! 当人の力をとくと見よ! 道理を知らぬ悪漢どもはこのドンキホーテが! 残らず打ち倒して見せますぞ管理人殿ぉぉぉおっ!!」
……随分と元気のいい奴が一人だけいるが、まああの子は普段からあんな調子だし、これから先もずっとあんな調子のままだろう。何やら人格のレベルも高いらしいし、そこに文句はない。
ただなあ、僕としてはやはり納得がいかねーんだよ。どうしてこんな風にちまちまと弱いものいじめをし続けなきゃいけないんだい。
「そこのところ、ダンテくんとしてはどう考えているのかな? 是非とも僕に聞かせてくれたまえよ」
〈うーん……、正直なところね。私もやりたくてやっているわけじゃないというか〉
「お互い大変だって言いたいのかい?」
〈私は大変ではないけど、流石に心苦しいな。先頭に関しては頼りっきりになるんだし〉
ダンテくんは申し訳なさそうな声色(どうして分かったんだろう?)で、そんな返答を寄越した。別に戦闘なんて慣れっこだし、今更苦に思うこともないっつーのによ。
甘いねぇ、ダンテくん。
甘すぎると、そう言わせてもらおうか。
……とか。そんなことを考えている内に、再びぞろぞろ現れるごろつきたち。こんなところで立ち往生しているバスなんて、そりゃあ目立って当たり前だった。
見た限り、連中は残りの勢力を全部注ぎ込んで僕たちを始末しにやって来たらしい。先ほどまでとは三倍の人数だったが、この程度ならむしろ返り討ちにしてやれるだろうぜ。
「二人とも、まだまだ元気は有り余っているよね? 一人あたり四人を
「ええ、ファウストはもとよりそのつもりでした。あの後輩……、ドンキホーテさんは──」
「私は誰にも止めることの出来ぬ超特急でありまする!! 管理人殿、見ていてくだされぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「──見ての通りですので」
「ドンキホーテちゃん、あんな調子で走り回っていたらいつかはガス欠しそうだが……、まあそんときゃそんときだ。何とかなるだろ」
まったく、しょーがねー後輩だぜ。ヤバそうなら助けに入ってやろうかな。その前に僕は僕で、団体様をお掃除してやらねーといけないんだけど。
充電のスキル「
直後、悪漢どもに飛びかかり刃を振るう僕。何やらごたごたと抜かしていた連中だったが、刃を二度、あるいは三度も振るえば揃ってバラバラのサイコロになった。
僕個人としては、本当ならこんなもん使わないで直接手掴みと行きたいところなんだが……。流石にそれじゃあ、華がないってもんだろう?
そんな思想のもと、僕は刃をあっちこっちに振り回し、迷惑客どもの持つ棍棒やら何やらを打ち砕いて回る。打ち合うたび──打ち勝つたびに僕の精神は高揚し、一種の全能感のようなものをもたらした。
ようなものっつーか。
ちょっと前まで、マジで全能だったけどね。
そんな考えを脳裏に浮かべながら、僕は獲物の充電を消費して強大な……、とまでは言えないが、とにかく渾身の一撃を最後の一人にお見舞いしてやった。
「ふうっ。これで一丁上がり──」
……そんな偽りの全能感に浸っていたのが、きっと僕の失敗だったのだろう。そういうところが僕の悪癖だというのに、未だ僕は自分が強かった時の感覚を捨てきれていなかったらしい。
「──えっ」
だから、僕は気付いていなかった。
ごろつきがまだ、息を潜めていたことに。
そいつの持っている獲物が、振り上げられていることに。
すぐさま僕はガードの態勢を取る。しかし充電は既に切れていたし、僕自身の油断も相まって、お粗末なガードはいとも容易く打ち破られた。
直後、僕の脳天に振り下ろされる鉄パイプ。視界が明滅したところで顔面にもう一発。じりじりと、鼻の奥から鉄の匂いが香った。
「ぐっ……、いやマジで、お前らどこにいたんだよ……」
間違いなく、直前までこの連中は周囲にいなかったはず──いや、もしかするといたのかもしれない。今の僕は弱体化に弱体化を重ねているから、気付いていなかったとしてもおかしくはなかった。
……あー、参ったね。結構ド派手に出血しちまってる。それにまだ頭もぐらぐらしているし──これはまた、一回死んで復活する流れかな。となると先んじて、ダンテくんには謝っておかなければね。
そこまで思考を回した僕は、緩慢な動作でダンテくんの方へと振り向いた。するとそこには、ダンテくんの側に立つファウストちゃんの姿があった。
霞む目を凝らしてよく見てみると、ダンテくんはファウストちゃんの指示を受け、何やら手に持つ端末の一部分を
「……なあ、おい。一体何して──」
何してるんだい。
そんな言葉すら、最後まで吐くことは叶わなかった。
それはもちろん、ごろつきにとどめを刺されたから──
突如として、僕の身体に知らない力が満ちたかと思うと……、いつの間にか、僕の服装は
当然ながら……、今の僕にこんな力を用いることはできない。だからこの力の出どころは、まず間違いなく。
「──ダンテくん、きみなんだね」
それを確信した僕は、
その時。
ふと、胸の辺りに違和感を覚えた。
見ると、そこには。
持っているものと同じ物体が捩じ込まれていた。
──
「これ、は……?」
いつか。
どこかで。
だれかに。
遺してもらった、何よりも大切なもの。
どうしてか、そんな考えがこびりついて──。
「……僕には」
気付いた時には、敵は眼前に立ち尽くしていた。
どうやら、動けなくなっているみたいだった。
いや、もしかしたら僕がそうさせているのかもしれない。
どちらにせよ、どうでもよかった。
そんなことはどっちでも同じことだから。
「僕には……」
右手を振りかぶり、金属を螺子込んだ。
何度も、何度も。確実にその息の根を止めるまで。
螺子込むたび、僕にも同じ痛みが訪れる。
だから、これでいいんだ。
これで平等なんだから。
良いも悪いも、全部まとめて平等にしてしまおう。
そうすることが、きっと僕の生き様だったから。
そうしなければ、きっと僕は生きられないから。
だから何度も、何度も重ねて痛みを享受し。
目の前の男が崩れ落ちても金属を螺子込み続け。
痛みと底知れぬ怒りで視界が染まったところで。
どうしてか僕は、妙なことを口走った。
いつか見た、青臭い春を抱いたまま。
いつか見た、赤黒い物を抱えたまま。
僕はまた、意識を手放した。
[E.G.O]
シミュレーテッド・リアリティ
囚人:
危険ランク:ZAYIN
精神消耗量:10
攻撃タイプ:貫通
罪悪属性:憤怒
解析必要紐数:2章クリア/3章クリア/紐110+破片80
コスト:憤怒×4 憂鬱×2
[属性耐性]
憤怒:抵抗(×0.75)
色欲:普通
怠惰:普通
暴食:普通
憂鬱:脆弱(×2)
傲慢:脆弱(×2)
嫉妬:普通
[覚醒スキル]
マッチ威力:10~28/14~32
基本威力:10/14
コイン威力:+18
コイン個数:1
スキルレベル:人格Lv-3
攻撃加重値:1
与ダメージ分のダメージを受ける
Ⅰ[的中時]次のターンに脆弱3/4を付与
Ⅰ[的中時]次のターンに脆弱3/4/3を得る
Ⅰ[的中時]次のターンに麻痺2/3を付与
Ⅰ[的中時]次のターンに麻痺2/3/2を得る
[攻撃後]敵全員の精神力が5/10減少
(幻想体の場合は攻撃威力減少1を付与)
[パッシブ]
不完全
ターン開始時に体力が50%未満の場合は
ダメージ量増加2を得る
精神力回復効率+1、精神力減少効率+1
※解析段階Ⅱで取得、E.G.O使用から戦闘終了まで効果発動
(解析段階Ⅱ/Ⅲ/Ⅳで表示)
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この度UAが10,000を突破しました。
牛歩ではありますが、精進して参ります。
読者の皆様、本当にありがとうございます。
人格よりE.G.O作る方が難しいかもしれません。明らかに性能がおかしいです。こんなんでこの先大丈夫かなぁ?
あと今日ノリで2話投稿してるので、まだ読んでなかったら見に行ってみてください。