囚人No.13 安心院なじみ 作:囚人
「総員、傾注! これより管理人様がお前たちにご説明なさることは、今後の業務において最重要事項となる! 寝ぼけて腑抜けた脳髄にしっかり叩き込むように!」
〈……ありがとう、ウーティス。少し言葉が強かったけど〉
「何をおっしゃいますか、管理人様。組織とはこうして率いるものなのです──ああ、でもこういったことが苦手なようでしたら、今後も私にお任せください。あなたの右腕として、連中の
初っ端からとんでもねー暴言をかましてくれたのは、誰がどう見たって軍人上がりであることが理解できる女ことウーティスちゃんだった。
どうやら彼女は根本的に僕ら囚人を見下しているらしい。蔑むような視線を隠しもしない辺り、どうにも筋金入りみたいだね。
……いやしかし、
その腹黒い表情を見るに、ウーティスちゃんの放った言葉は僕らではなく、寧ろ管理人たるダンテくんに向けられていそうだってのが僕の本音だが。
総括。
こいつもまた、おもしれー奴だ。
〈えっと。それじゃあ説明させてもらうけど──〉
そう前置いたダンテくんは囚人たちの『人格』について、先ほどファウストちゃんから聞いた通りの説明をしてのけた。
メフィストフェレスから人格が抽出できること。
それは囚人の持つ数多の可能性の一つであること。
それは囚人に装着することができること。
戦闘においては有利に働く可能性が高いこと。
主体は僕たちなので乗っ取られたりはしないこと。
その上で既に一度目の抽出は終わらせていること。
〈──と、こんな感じ。みんな分かってくれた?〉
「明瞭かつ明朗な説明でした、管理人様。ここまで詳細な内容であれば、いかに頭の中身が小さかろうと齟齬なく伝わったことでしょう」
〈……ありがとう、ウーティス〉
ここでもまた皮肉。あいつ、遠回しに「説明が単純すぎる上に冗長だ」と言いやがった。根っこの部分ではダンテくんを敬っていないと見ていいだろう。
まったく、近頃のガキは年長者を敬うってことを知らないのかね──とも思ったけれど、よくよく考えてみると、ダンテくんがウーティスちゃんよりも年長者であるという確証はないな。
いやまあ、それにしたって目上の人間(頭が時計の奴を人間としていいのかは分からないが)であることは間違いないのだから、もう少しその腹黒い感じを収めた方がいいと思うのだけどね。
まあいいさ。今の僕にとって、そんなことはこれっぽっちも重要じゃねーから。早いとこ話を進めてもらうとしよう。
「ダンテくん、ちょっといいかな? 好奇心旺盛な僕としては、どんな可能性──つまりどんな人格がいくつ抽出されたのか、気になって気になって仕方がないんだよ」
〈焦らないで、
「素晴らしい試みです、管理人様。雑多な軍略などとは比べものにもならない会心の一手であることは間違いないでしょう。それに、わざわざ子供に付き合ってやるなど……、随分とお心も広いようだ。私は上官に恵まれましたな」
誰かこいつを止めろよ。
ぺらぺらとよく回る毒舌をどうにかしろ。
ダンテくん、きみが諌めなきゃこいつは一生このままだと思うぜ。つーかきみ、気付いてないだろ。僕を悪く言ったどさくさに紛れて、遠回しにきみまで子供扱いされてるぜ。
ヴェルギリウスくんに視線で抗議してみたものの、取り付く島などあるはずもない。あの野郎、僕のことは放っておいてカロンちゃんに話しかけに行きやがった。何が案内人だ。
「……ヒースクリフくん、あの子の面子は潰さなくていいのかい。ブッ叩いてブッ壊すの、
「今だけはテメェに同感だぜ──だけどお前の指図で動くのは癪だから断る。テメェらで勝手にやってろ」
つれねー野郎だな。
まあいい。あの腹黒女にはいつか灸を据えてやるとして……、やはりそんなことよりも、今は抽出されたという人格の方が重要だ。少なくとも、僕にとってはだがよ。
〈まず、新しく抽出された人格は三つ。つまり三人の囚人に、今後の戦闘では人格を被ってもらうことになるみたい〉
ダンテくんは端末(ノートのようにも見える)を持ちつつ、仄かに赤く光る麻雀牌のようなもの──つまりは人格牌──を取り出しながら、はっきりとした声で一個目の人格を明らかにした。
〈一人目はファウスト。えーっと、『W社 2級 整理要員』だって。次また荒くれ者たちに襲われた時は、多分こっちで戦ってもらうことになる。よろしくね〉
「ええ。ファウストはやるべきことをやり、知るべきことを知るのみですから。とは言っても、知らないことの方が少ないんですけどね」
〈……じゃあ、次いくよ〉
ファウストちゃんの傲慢さをさらりと流しながら、ダンテくんは二個目の赤い人格牌を取り出した。
そしてそれには。
どうやら、僕が写っているらしかった。
〈二人目、
「ファウストちゃんと僕の仲がいいかどうかは捨て置いておくとして。まあ、それなりに連携は取れるんじゃないかな? よろしく頼むぜ、ファウストちゃん」
そう言ってファウストちゃんと視線を交わすと、彼女は短く「そうですね」とだけ言った。随分と冷たい反応にも思えるが、
あーあ、さっさと襲いかかって来てくれねーかな、ごろつき連中。僕の端末ではなく、僕自身の別人格というのを経験するのは初めてだし。
今から次の戦闘が楽しみだ。
このままだと僕は、
柄にもなくそんな物騒なことを考えていたところで。ダンテくんはさっさと三個目の人格牌を取り出した。
……今までの二つとは違って、その人格牌は
〈三人目──ドンキホーテ〉
「……んぇ? なっ、んなああぁぁあっ!? と、当人でありまするか、管理人殿!? うひょーーーっ!! それで! 私の人格とやらは何なのだ!? やはりフィクサーか、フィクサーだな、フィクサーなのだな!?」
どこぞの競泳部エースよりもよっぽどデカい声(しかも
〈残念だけどフィクサーじゃないから落ち着いて、ドンキホーテ。『W社 3級 整理要員』らしい。ということは、前の二人と同じ会社だし、しかも一つ上の階級みたい。……仲良くしてよ?〉
「…………むう、フィクサーではなかったか……。しかぁし! このドンキホーテ、任されたからには全霊で職務を、そして正義を遂行するつもりでありまするぞ、管理人殿!!」
〈ファウストと
「それはあなたの仕事だと思いますよ、ダンテ」
ここに来てまさかのど正論かよ。
いやまあ、そりゃあ囚人の管理は管理人の仕事でしかないだろうが。
つーかファウストちゃん、さっきからなんだか不機嫌じゃないかい? まさかとは思うが、僕と仲がいいと思われたことが嫌だったとかじゃないだろうね。
そうだとしたら、流石に僕でも傷付くぜ。
「……管理人様。私にご命令してくだされば、あの者一人くらいはいつでも制圧して見せますが」
〈いや、いいよ。何というか、あんまり抑圧しすぎるとその分反発しそうだし。本当に困った時はお願いするかも〉
「なるほど。管理人様の慧眼にはお見それするばかりです。無闇に部下を押さえつける上官とは、往々にして後頭部に弾丸を喰らってしまいますからね」
〈……どうも〉
今回もまた皮肉──に聞こえたウーティスちゃんの台詞だったが、しかしその表情をよく見てみると先程までのような腹黒さは鳴りを潜めていた。
どうやらダンテくんは、多少といえどもウーティスちゃんのお眼鏡に適ったらしい。ひとまずはこれ以上険悪になることはなさそうだった。
……と、そんな風にひと段落ついたところで。
突如としてバスが停車したかと思うと、直後バスの壁面をぶっ叩く音が聞こえてきた。つまるところが、都合何度目かの襲撃っつーわけだ。
「おや、早速出番かな? なんと言うか、随分とタイミングがいいねぇ。ごろつき共は僕たちに活躍の場面を提供することに躍起らしい」
「そのようであるな! 管理人殿、早速人格の実践と行きましょうぞ! 私はとうに準備万端である!!」
〈うん、そうみたいだね。ファウストも準備は出来てる? 折角だし、W社人格のお披露目といこう〉
「ええ。非凡な指揮をお願いしますね、ダンテ」
ファウストちゃんの言葉に頷いたダンテくんは、その手に持つ端末に人格牌をセットした。するとどういう理屈かは全く分からねーが、僕たちに変化が生じやがった。
リンバス・カンパニーの制服はいつの間にかW社の制服へと様変わりしていた。頭に手を置いてみると、そこには
……ふむ、こういう感覚なのか。
こそばゆい感じだと、そう形容することも出来るね。
隣には同期であるファウストちゃんと、後輩でありながら階級が一つ上のドンキホーテちゃん。この二人には随分とよくしてもらっている。
ドンキホーテちゃんなんかはとんでもなくいい子でね。階級で人を見ていないらしく、威張るような真似はせずに僕たちを慕ってくれている健気な後輩──っと。今はそんなことを気にしている場合ではねーよな。
さてと。
それじゃ、今日もいつも通りに。
「ゴミ共を綺麗さっぱり片付けてやるとしようか」
仲良しこよしで、お掃除の時間だぜ。
[人格基本情報]
W社 2級 整理要員/
星:00
所属:W社
体力:89~262(Lv1~Lv60)
防御レベル:人格Lv+3
速度範囲:3~5/3~6/3~7
混乱区間:65%/30%
(170/79)※Lv60時換算
パニックタイプ:パニック
[耐性情報]
斬撃:普通[×1]
貫通:耐性[×0.5]
打撃:脆弱[×2]
[スキル情報]
スキル1:切断×3
罪悪属性:憂鬱
攻撃タイプ:斬撃
マッチ威力:3~9/4~10/5~12
基本威力:3/4/5
コイン威力:+6/+7
コイン個数:1
スキルレベル:人格Lv-2
攻撃加重値:1
[使用時]自分の充電回数が3増加
Ⅰ[的中時]自分の充電回数が1/2増加
スキル2:「
罪悪属性:憤怒
攻撃タイプ:貫通
マッチ威力:4~10/6~12
基本威力:4/6
コイン威力:+3
コイン個数:2
スキルレベル:人格Lv-2
攻撃加重値:1
充電回数が5以上なら、マッチ威力+1
Ⅰ[的中時]自分の充電回数が2増加
Ⅱ[的中時]自分の充電回数が2/3増加
スキル3:過負荷×1
罪悪属性:嫉妬
攻撃タイプ:斬撃
マッチ威力:4~13/6~15
基本威力:4
コイン威力:+3
コイン個数:3
スキルレベル:人格Lv-2
攻撃加重値:1
充電回数が10以上なら、コイン威力+1
Ⅲ[的中時]充電回数を7消耗し、防御レベル減少2/3/4を付与
守備スキル:ガード
罪悪属性:嫉妬(同期化段階ⅣでE.G.O資源取得)
守備タイプ:防御
マッチ威力:9~12
基本威力:9
コイン威力:+3
コイン個数:1
スキルレベル:人格Lv+4
[パッシブ情報]
バトル:通電
必要資源:嫉妬×4
条件:保有
効果:スキルが戦闘中に初めて使用された
ものだった場合、充電回数が1/2増加
※同期化段階Ⅱで取得/戦闘参加中に有効
サポート:予備電力
必要資源:嫉妬×3
条件:保有
効果:前のターンで充電回数を消耗した
味方1名の、充電獲得数+1
※同期化段階Ⅲで取得/編成中かつ戦闘不参加時に有効
[特性キーワード]
W社
(同期化段階Ⅱ/Ⅲ/Ⅳで表示)
[台詞]
人格獲得
「さてと。それじゃあ今日もいつも通りに、仲良しこよしで、お掃除の時間だぜ」
朝の挨拶
「おはよう、定刻通りの到着とは珍しいね。もしかすると、ここに来るためだけにワープ列車を使ったのかな?」
昼の挨拶
「さて、昼食の時間だね。腹が減っては戦はできぬとも言うし、ここは気前よくお肉でも──食べられないって? わっはっは、遠慮してんじゃねーよ」
夕方の挨拶
「いやあ、今日もひどい有様だったね。何をどうやったら表と裏が反対になってる人間が生まれるんだって話だよな、流石に困惑せざるを得ないぜ」
対話1
「掃除みたいな細々とした業務はあまり得意じゃないつもりだったんだが、意外と出来ちまうもんだな。2級の中なら僕が一番なんじゃねーの? ……まあ、人間とゴミの違いが分からねー時もあるけどさ」
対話2
「ワープ列車の中でよく起こる事象を教えてあげようか? 巨大な町とか肉団子が作られてたり、乗客同士が皮と肉を使って餃子パーティーを……。おい、人が話してる時に耳を塞ぐんじゃねーよ」
対話3
「あちゃあ、こいつはえげつねーな。善意から忠告しておくが、きみは見ない方がいい。一生後頭部の安全を気にし続けたいのであれば、止めはしないけど」
同期化後の対話1
「ワープ列車なんかに乗るよりも、僕の『
同期化後の対話2
「ワープ列車に乗車する時は、是非とも僕に伝えておいてくれたまえ。特別待遇で乗る前よりも綺麗な形にしといてやるからさ」
放置
「ワープ列車の乗客たちもこんな気持ちになるのかな? 暇で暇で仕方がねーぜ」
同期化進行
「おや、昇進か。正当に評価されるのは、いつであれ気分がいいね」
人格編成
「ゴミ共を綺麗さっぱり片付けてやるとしようか」
入場
「出発進行……、とは言っても、どうせすぐに到着するけどね」
戦闘中の人格選択
「今はちょっと、迷惑客の対象で忙しいんだがね」
攻撃開始
「超特急で終わらせようか」
敵混乱時
「寝台列車にご案内しよう」
混乱時
「列車の中で騒ぐんじゃねーよ……」
味方死亡
「おっと、ミイラ取りがミイラになっちまった」
選択肢成功
「数千数万に分割された人間を元通りにすることに比べれば、この程度の業務はさして大変じゃねーな」
選択肢失敗
「あーっと、オーバーランだ。申し訳ない、後で始末書と反省文をしたためておくよ」
戦闘勝利
「各駅停車って感じだね。ワープ列車に各駅も何もないけどさ」
EX CLEAR戦闘勝利
「今回もまた完璧な業務内容だったと自負しているよ。だからまあ、賞与の査定には期待しておくぜ」
戦闘勝利
「……僕たちも、乗客の仲間入りか。元の形に戻す時は、是非とも丁重に扱ってくれたまえ」
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いちいち性能考えてるの、更新頻度的にはあまりよくないかもしれません。本編よりこっちの負担の方が大きいので。
人格ストーリーとかも考えた方がいいんですかね。ノリで書いている小説なので、その辺り何にも決めてません。