生きづらすぎてアンデッド少女になったので、異世界をのんびり彷徨います 作:デデデッドデッド
生きづらい人生を送ってきた。
祖母が外国人であるという私は、ばっちりその容姿を受け継いでおり、周囲からは変な目で見られてしまう。
それ以外にもいろいろな要因から私は、ずっと人生に生きづらさを感じてきたのだ。
社会に出てもそれは変わらず、前日もしんどい仕事を終えて、ろくに家事すらできず床についた。
……はずだ。
しかしどうだろう、どういうわけか私は洞窟の中にいて、しかも前日までは無かったはずの膨らみが体に備わっているのだ。
いや、気にするべきところはそこではない。
体があまりにも青白い。
しかも一部は
明らかに、人ではなかった。
外に出て近くの水に顔を晒してみると、そこには裸の少女が映り込んでいた。
背丈は百五十あるかないか、出るところは出ていて、以前よりも明らかに美しい金の髪と、あどけない顔立ち。
整った容姿に、町中をあるけば多くの人が振り返ることだろう。
今は別の意味で多くの人が振り返りそうな状態だが。
ただ、そんな明らかに人ではない――アンデッドとしか言えない姿は、私の心を揺さぶるには十分すぎるものだ。
ずっと生きづらい、人とは違うと思って生きてきた。
しかしまさか、本当に人とは違う何かになってしまうとは。
我ながら、人生とはどうなるかわからないものである。
だけど、なんというか。
私はその姿に二つの思いを感じていた。
結局自分は、そういう存在なのだという諦観と納得。
人とは違う、生きづらい人間。
まるで亡霊のようだ、と。
どこまでも世界を彷徨うしかないアンデッドなのだと突きつけられているかのようで、なぜだか苦笑が漏れてしまったのだ。
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ギルドに入ると、街を歩いている時に向けられていた視線よりも、更に不躾な視線が複数向けられる。
前世で初めて会う人間と顔合わせをする時、必ず向けられていた視線と同じだ。
フードで顔を隠しているし、町中を歩いていてもギリギリ疑問に思われない肌の色であるというお墨付きも
だから問題ないとはわかっていても、思わず体が竦んでしまう。
恐る恐るといった足取りで受付に向かい、冒険者登録を受付嬢に頼んだ。
登録に際して、名前を問われる。
「――レイ・ソーンダイク、で……お願いします」
それから、幾つか登録に必要な情報を伝えた。
名前は、レイ・ソーンダイク。
年齢は十五――この世界ではそれが成人と聞いた、見た目からしてもそれくらいが妥当だろう、とも。
性別は女――まぁ、そうなっているのだから仕方がない。
種族はクォーターエルフ――肌の白さをごまかすには人ではなくエルフであると名乗るほうがいいらしい、クオーターなら耳が丸くても違和感はない。
あまりにも、嘘ばかりだ。
なんなら名前すら、私は苗字を二つもっていてそのうちひとつは日本語のものであるため、伝えていない。
何一つ、本当のことを言っていないとすら言える。
だが、ある意味で私らしい気もしていた。
ここに記されているのは嘘ではなく、主体性のない自分という存在そのものと考えれば、なんとなく腑に落ちる気がしたのだ。
そしてこの嘘も、洞窟の中で目覚めた私を最初に見つけてくれた女性のアドバイスによるもの。
私自身の意思なんて、どこにもないのであった。
「次は依頼ボード……ですね」
次もその女性のアドバイスに従って、依頼ボードへ向かう。
時刻は昼過ぎ、この時間帯だと人はあまりいないのか、ボードは問題なく確認することができた。
代わりに、ボードに貼り付けられた依頼も少ない。
残っている依頼も人気のない依頼ばかりだろうが、その方が私にとっては都合がよかった。
それだけ人気がないということだから。
受ける依頼は最初から決まっている。
ギルドが発行している依頼で、街ででたゴミを焼却用の魔導炉に投入するというものだ。
ゴミは非常に大量にあって、しかも魔術でひとまとめにしてあるからとても重いという。
更に臭い。
私の体はどうやら特別製らしく、非常に膂力が強いのだ。
おまけに悪臭にも鈍感である。
これほど私に向いている仕事もないだろう。
「……これを受けましょう」
そう決めて受付に依頼の書かれた紙をもっていき、それから焼却用魔導炉の場所を教えられる。
完全に初見の土地なので覚えられるか不安だったが、なんだかんだ普通に現場へ到着することができた。
そこには監督のギルド職員が暇そうに立っていて、私がやってくると若干驚いた様子で仕事の説明をする。
まぁ、どうみても力仕事が向いてなさそうな小娘だから、仕方のないことだろう。
その後に、重い荷物を軽々と片手で持ち上げたら更にすごい目で見られたが。
それから現場に入り、もくもくとゴミを運んだ。
私以外にも何人か仕事をしている人がいて、彼らと無言で仕事をこなす。
ガラの悪い男が多かったが、こちらに特に何か言ってくることはない。
いい奴なのかと思ったが、アレは単純に重労働でつかれていて話しかける気力がないって顔だ。
社会人になってからよく見かけていたので、何となく分かる。
仕事内容は非常に単純だ。
うずたかく積まれたゴミの山を、魔導炉にぶちこむだけでいい。
環境とか大丈夫なのかと思うが、文明が発展していないから大丈夫なのか、それとも魔術に工夫がされているのか。
まぁ、そのうち調べる機会もあるだろう。
仕事の報酬は、魔導炉にぶちこんだゴミの数で決まる。
今の私はあの人から一時的に借りている活動資金しかないので、できるだけ多めに稼ぎたい。
返さなくてもいいとは言ってくれたが、あまりにも大恩のある人なので、きちんと返すべきだ。
そういうわけで、両手にゴミを抱えて魔導炉に叩き込んだ。
一緒に働いている者たちが一様に目を丸くしているが、それを構わずテキパキとゴミを放り込む。
目立つことはあまり好きではないが、異世界を身一つで生きていくなら必要なことだと割り切った。
それに、なんというか……非常に楽なのだ、この仕事は。
身体能力のお陰で楽ができているというのも確かにあるが、それ以上にあまりに単純作業だからである。
頭を使わなくていい仕事というのは、非常に落ち着く。
思えば前世の仕事は複雑すぎたのだ。
バイトですらやることが多いし、社員として働いたら常にいろんなことを考える必要がある。
眼の前の仕事をこなしているだけで精一杯で、残業が多いと言われているのに、業績改善のために時間なんて取れるわけがないじゃないか。
その点、こうしてただゴミを運ぶだけの仕事で給金がもらえるのだから本当に楽でいい。
しかも、仕事が終わった後に頂いた給金は私が想定していた倍の金額。
これなら、一日分を貯蓄できるので、今後も楽ができるはずだ。
等級が上がって討伐系の依頼を受けられるようになるまでは、ここで頑張って金を稼ごう。
そう思いながら現場を後にしようとすると、監督の職員に声をかけられた。
「お前さん見ない顔だが、やるじゃねぇか。最初はどうなることかと思ったが、あっちのバカ共の倍は働けるとはな」
「は、はい。ありがとうございます」
情報量の多い発言だ。
まあでも、気持ちはわかる。
「見た感じ訳ありみてぇだが、その調子ならすぐ上に行くだろう。あんまこんな野郎ばかりの依頼うけちゃいかんぜ」
「……そうですね」
不思議な感覚だった。
仕事をして、褒められる。
まったくそういった経験がないとは言わないが、貴重な経験だ。
心配されて、助言までしてしてもらうとなると、ほとんど初めてといっていい。
前世の頃は、見た目のせいかどこか腫れ物を扱うような対応をされたことの方が多かったというのに。
今だって女扱いされているし、褒められているのだって見てくれがいいからかもしれない。
それでも、なんというか。
「……なんだか、不思議な気分です」
少しだけ悪くない、と思ってしまった。
未だにこの世界に慣れたわけではない。
それでも、明日も頑張れると思ってしまうくらいには。
「宿に向かいましょう」
そうして私はフードを深く被り直すと、あの人に教えてもらった宿に泊まるため、異世界の街を歩くのだった。
だいたいタイトル通りの話です。
よろしくお願いします。