無防備な眠り姫を前に、私の心臓はどうしようもなく早鐘を打っていた。
「兄さん……」
小さく声を零して、その瑞々しい唇に吸い寄せられるように顔を近づけていく。
唇と唇が触れ合った瞬間、全身がぞわぞわとした高揚感に包まれ、自然と口元が緩むのを感じた。
頭の中に、じんわりと熱が広がっていく。
啄むような、触れ合うだけのキスを何度も落とす。
唇に舌先を這わせて、私の唾液を塗り込む。
寝ている兄さんに、無断でキスをしている。
ファーストキスのはずだ。
そうでなければいけない。
兄さんのファーストキスは、兄さんの知らないところで
その背徳的な快楽に、自らの身を抱いて震える。
そこで、準備していたビデオカメラの存在を思い出した。
いけない、欲望が先行してしまった。
きちんと、証拠を残しておかないといけない。
一旦息を落ち着かせて火照りを取ってから、兄さんの使っている椅子を借り、その上にビデオカメラを乗せる。
ディスプレイを見ると、そこには変わらず寝息を立てる兄さんが写っていた。それもまた、背徳心を掻き立てる。
けれど、高さが足りない。
これでは私がベッドに上がったら顔が見切れてしまう。
今度は机の上に置いて、再びディスプレイを覗く。
少し距離があるが、これならしっかりと二人の姿が記録されるだろう。
僅かに震える指で録画ボタンを押す。
ディスプレイの右上に、録画中であることを示す赤いアイコンが表れた。
──これで、準備は万端だ。
先程のように顔の横に立っていたら、兄さんの顔が映らなくなってしまう。
今度はベッドの上へ。
片膝がマットに沈み、スプリングが微かに軋んだ音を立てる。静かな室内ではやけに大きな音に聞こえて兄さんの表情を伺うが、起きる様子は見られない。
もう片方の膝も乗せ、膝立ちでマウントポジションを取る。
兄さんの両頬に手を添える。
動く様子はない。
そのまま上半身を屈めて、再び唇同士を触れ合わせる。
「くふっ」
兄と妹のキスが、映像という記録として残った。
その
「ファーストキス、私が奪っちゃいましたよ? 兄さん。もちろん私もファーストキスです」
カメラの方を向いて、静かに語りかける。
いつかこの映像を見せた時、兄さんはどんな反応を見せてくれるのだろう。
その時を想像して、身震いをする。
下腹部が疼き、下着を濡らす感覚があった。
ああ、兄さんのせいだ。
たっぷりと唾液を纏わせた舌で頬を舐め上げる。
兄さんの味がした。
兄さんのきめ細やかな肌に、私の唾液が染み込んでいく。
下着の染みが、広がった。
けれど、今日は最後までするつもりはない。
徐々に、兄さんを侵していきたかったから。
その過程もまた、
今度は唇を舌全体で舐め上げる。
唇は、私の唾液でてらてらと濡れていた。
こくり、と無意識に喉が動く。
再び口を近づけ──兄さんが顔を横に背ける。
寝返りだ。顔を動かしただけ。
けれど、急速に熱が冷めていくのを感じた。
兄さんに、拒絶されたのか。
ショックよりも怒りが先に訪れる。
何で、私を拒むのか。こんなにも、愛しているのに。
上体を起こし頬を叩きそうになる衝動を、理性が止めた。
そうだ、拒んだのではなくて恥ずかしがっているんだ。引っ込み思案な兄さんらしい。
やっぱり、ゆっくりと関係性を進めていることを望んでいるんだ。兄さんの心情を理解すると、昂った私の心も落ち着きを取り戻した。
最初は、このくらいからでいい。
そっとベッドから下りて机に向かい、録画を停止する。
記念すべき、最初の記録だ。
そう考えると、やはり一気に進めなくて良かったのかもしれない。段々と、進めていけばいいのだ。
出来る妹は、自分の情欲のコントロールも出来るのだ。
ビデオカメラを持って自分の部屋へと戻ると、机の上にそれを置いてベッドの上に寝そべる。
兄さんに向ける情欲はコントロール出来るとはいえ、一度抱いたものはそう簡単に消える訳では無い。
指先を下着に伸ばすと、先程よりも更に染みが広がっているのが分かった。もどかしい疼きが、下腹部からせり上って私の脳を満たしていく。
口内には、まだ兄さんの味が残っていた。
今日は記念すべき第一歩を踏み出した日。いつも通りでは満足出来ないかもしれない。
万一にも兄さんを起こさないよう、声を押し殺して、耽る。今までと比べ物にならないくらい、甘美な痺れが頭の中に広がっていく。
これもいずれは、全て、兄さんに受け止めてもらうのだ。
そう、遠くないうちに。
指先を動かす。
粘着質な水音が鳴る。
指を兄さんだと思う。
我慢できずに嬌声を上げる。
そうして私は、