月人さんはネットがお好き。   作:ひいらぎもち

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とりあえず、ヤチヨってことで文字数8000程度目指して頑張ります!


もと七色に光るゲーミング電柱ありける

 

 

 

「あ、彩葉来た」

 

「おはー」

 

「昨日ぶりだねぇ彩葉〜」

 

バイトからの翌朝、いつもの通学路で芦花と真実と合流した。

会うのは昨日のゲーム以来。

仮想空間のアバターもおにぎりやメロンパンの装飾が凝っていてお洒落だけど、リアルの二人はそこにスポットライトでも当たっているかのように目を惹きつける魅力がある。

 

ん?待てよ。一つ違和感に気がついた。もう一人の声の持ち主がいない⋯⋯

 

「…ねぇ、都竹君はなんで彩葉の後ろにいるの?」

 

「えっ…?」

 

芦花が言ってくれなければ気づかなかっただろう。ゆっくり後ろを確認すると…

 

「やぁ彩葉。後ろにいたのを気づかなかったのを見るに、昨日よく寝なかったね?」

 

呼び掛けてきたその人は、綺麗な瞳に中性的な顔立ちと薄い茶髪。

つまり芦花の言う通り都竹がいた。

 

おまけに私の睡眠時間を当てようとしている。

シ、シンプルに怖い⋯⋯

 

「ね⋯寝たってー」

 

「彩葉の『寝た』は、どうせ三時間くらいでしょー?都竹君彩葉の事を見張ってみてよ。絶対寝てない日あるでしょ」

 

眉をハの字に寄せた芦花から、すかさずツッコミが入る。

おまけに都竹にとんでもない事を頼むんじゃない。こいつは絶対に「彩葉を見張って〜」なんて言ったら永遠に私の事を見つめてくるに決まってるだろう。

 

くっ…これも全て都竹ってヤツが全部言ってしまうのが悪いんだ!

 

「実質徹夜じゃん〜。聞いてるだけでねむー」

 

真実は私の睡眠時間を聞くでだけ眠くなってきたのか、まったりとあくびをした。じっと見ているだけでこちらも眠くなってくるので注意が必要だ。まるでポ◯モンのあくびだね。

 

「何してたん?バイト?」

 

「いや、それはない。昨日バイト終わった直後、一緒に帰ったから。彩葉の性格を考えるに勉強だね」

 

なんでこいつはこんなにも私の理解度が高いんだ?

前世は探偵か何かだっただろう。ここまで来るともはや、恐怖より感心の域に達してくる。

 

「都竹正解、予習と復習。もうすぐ期末試験だから。」

 

「彩葉なら予習とかしなくても今のままでも余裕で一位でしょ」

 

「そーゆー油断がいけないの。隙を見せたらいつでも背中から撃たれる世界なんだから」

 

あっやべ、お母さん語録が出てしまった。

 

「それ、〝お母さん語録〟だね?」

 

はいそうです。見透かされちゃいました〜トホホな表情を作ると、真実はドヤ顔で肩に手を置いて頷いてきた。

これは後方理解者顔に違いない。都竹がやっているのを百回位見たことがある。

 

「彩葉はいつでも『KASSEN』気分だからなー」

 

「『KASSEN』に侵食されすぎ〜」

 

アハハハ、芦花と都竹がおっしゃる通り、私の合戦はゲームを閉じてもBAMBOOcafeでバイトが終わっても、まだ終わらない。むしろここからが始まりだ。

一年生一学期から続く学年トップ座を、命をかけて死守せねばならないからだ。いや、試験の成績だけじゃない。

 

 

 

「あ、酒寄さんだ。おはよー」

 

「ささ、酒寄先輩!おはようございます!」

 

「酒寄さん、おはようございます。この前は助かりましたよ」

 

あ、みなさん、おはようございまーす。

 

「酒寄さん今日もキレー」

 

「やっべ、俺、酒寄先輩に挨拶しちゃったよ!」

 

「いいなー、お前」

 

品行方正、成績優秀、文武両道。隙のない完璧女子高生を貫いて始めて、私は前を向けるから。

 

──無理は怠けモンの言い訳や。私は私が出来たことしか言うてへんよ

 

ここまでやって始めて、私は私の遥か先を行く母の後ろ姿を捉える事が出来る。⋯⋯捉える事が出来るだけ、なんだけど。

まあ、どこまで貫き通したとしても、母が私を褒めてくれることは決してない。

はぁ、いつからだったか。母が私を褒めなくなったのは。

 

あれは確か──

 

えっと確か──

 

確か──

 

 

「では、ここわかりますか?今日は六日だから⋯酒寄さん」

 

「はい!」

 

不意打ちで先生に名前を呼ばれて意識が急降下で戻ってきた。

ヤバい、どこだ、ここ?言ってるそばから油断した。体育終わりの六時間目の古文は睡魔との戦いと知っていたのに。

それでも──。

 

「ここでの『なりぬ』は、動詞『なる』の連用形と、完了の助動詞『ぬ』の組み合わせです」

 

「おー、すげー」

 

「さすが酒寄さん」

 

「すごすぎて何言ってるか、わかんなかったー」

 

「いやわかるだろ」

 

完璧女子高生、酒寄彩葉はしくじらないのである

あっぶねー。

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

「それじゃあ、お先ですー」

 

「ずみまぜん、先輩!今日もドジばっかりで。ほんっとごめんなさい!」

 

「大丈夫だって。みおちゃんどんどんミス減ってるから。それじゃあお疲れ様です」

 

「そろそろ私も抜けまーす」

 

聞き覚えありまくりの男子高校生の声が聞こえたが、恐らく気の所為だろう。

ふう、今日も今日とて、注文という弾丸が飛び交うアルバイト先から命からがら生還した。

前述の通りBAMBOOcafeは何故か木曜日が最も繁盛するけれど、金曜は金曜で普通に混む⋯⋯

今日は⋯うん、ちょっと疲れたかな。でも⋯⋯

 

「三連休がついにやってまいりやした。超久しぶりに一日六時間は眠れる」

 

「いや、一日八時間位は眠って?」

 

「うわ幽霊」

 

「あまりにも酷くない?」

 

都竹が真横にいた。

いや、独り言を言っている最中に話しかけられたら誰だって怖いよ。

おまけに都竹が出てきたおかげで、月を見上げようとする首を真横に動かす羽目になり、ちょっと首が痛くなってしまった。

 

はぁ、なんだか近頃、月を見上げる事が多くなった気がする。実家にいた時は、月なんて気にもしていなかったのに。

一体これはどういう魔法なのだろうか。

 

「都竹はさ、月を見上げたりする?」

 

「見ないかな、月はあんまり好きじゃないし」

 

少しセンチメンタルな気分になって、都竹に月について聞いて見ると意外な言葉が帰ってきた。

 

あんまりと言っているが、私には「月は嫌い」だと言っているように聞こえる。

 

「アハハ、なんてね。月はよく見るよ!」

 

いきなりさっきとは打って変わって変なテンションで言葉が帰ってきた。

都竹はたまにおかしくなる。いつも、大体、もっぱら、四六時中おかしいが、こういった時はそうでは無く、普段ではは考えられない反応のあとに、先ほどの落ち着きを覆い隠すようにテンションを上げる。

私は案外、都竹の事をよく分かっていないのかもしれない。

 

そうして少し喋りながら月を見上げていると…

 

「──っ」

 

なんだ、あれ?何かが月を横切った。一瞬だけ、ほんの小さな──

 

「あっ流れ星」

 

「流れ星!」

 

「流れ星だ」

 

⋯⋯え?

 

周りの声に弾かれるに手を合わせた。

 

──神頼みするやつは阿呆や。

 

また、母の声が聞こえたけれど、願わずにはいられなかった。

神様仏様どうか、どうか──

 

「か、金⋯⋯」

 

「女子高生にしてほしくない願い事三位くらいに君臨しそうな願い」

 

うるさいな。女子高生らしくないで、あんまりにもつまんねーやつ過ぎる願いなのは分かっているのだ。

 

「じゃあ都竹はなんて願ったの?」

 

「世界平和〜」

 

「⋯もっと自分の欲を出そう?」

 

だらんと間の抜けた顔で、都竹は世界平和と言った。

私とは真逆すぎる願いで、尊敬できるレベルだ。

いつもはもっと変な事を言ってるのに。

おそらく変な物でも食べたのだろう。

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

「⋯⋯は?」

 

「うわピカピカ」

 

ようやく帰り着いたアパートのすぐ横の電柱が、七色に光っているのを発見した。七色といえば.....

 

「ゲーミング⋯⋯電柱⋯⋯?」

 

「あまりにも理解不能な単語で、おい笑える」

 

都竹はこの状況に適応したのか、いつもと同じような反応だ。

いや、おかしいでしょ。ゲーミング電柱だよ?確かに意味不明だけどさ、もっと反応あるよね?普通はさ。

 

「いや、幻覚か」

 

「限界生活してる彩葉ならまだしも、私もゲーミング電柱見えてるから幻覚じゃあないと思うけどね」

 

⋯⋯勘弁してよ。

都竹が言うように幻覚じゃないなら、これ本当になんなの?謎に光ってるし、なんかスモーク吐き出してるし流れ星がどんな人の願いを叶えたらこうなるのだろうか。

 

「ゲーミング電柱おもろ~」

 

パシャパシャ

 

「なに写真撮ってるのよ⋯」

 

都竹はなんか写真を撮っていた。

いや理解不能、超弩級の異常現象に遭遇しといてその反応はどうかしてるよ。

いや都竹がどうかしてるのは別にいつも通りなんだけどね?

 

はぁ、この状況をどうにかしようにも悲しきかな。家賃がやっすいアパートに電話一本で駆けつけてくれるお優しい大家などいないのだ。かといって周りから駆けつけてくれる住人など、刷り込まれたヒヨコの様に私に引っ付いてくる都竹以外いない。

 

うん、私は今自分か都竹がどうこうしない限りどうしようもない、チェスや将棋で言うチェックメイトにハマっているのだ。

ジョークであってほしい状況。略してジョジョだ。

 

⋯くそぅ、背に腹は代えられぬ。

 

「都竹行くよ⋯⋯」

 

「うわ、いやっそうな顔〜」

 

私は覚悟を決め、重い足取りで都竹と共に一歩を踏み出した。

さらに一歩、もう一歩──

 

「うひょー、さらに向こうへ!プルスウルトラ!」

 

あっ、私を置いていき都竹が異常行動をした。

都竹が近づいたせいなのか、突如ゲーミング電柱の真ん中に突然、扉にような切れ目が入っていった。

おまけにその扉に竹をモチーフとした取っ手が付き、扉が中から押されるように徐々に、徐々に徐々に、観音開きに開いていく。

 

「いや、開くな!」

 

私はダッシュして、扉を閉めにかかった。

 

「ぐおっ、うっ、力づくかい。都竹手伝って!!」

 

一応男子である都竹に力を借りようと声をかけた。都竹の方を見ると都竹は、近所迷惑にならないように、静かに大笑いしながら動画を撮っていた。

 

ふざけてるのか?女子高生が頑張っている姿を見て、おまけに助けを求めているのに助けようとしない人間はコイツだけなのではないだろうか。

 

なすすべなくばいーんと開かれた扉の中には⋯⋯ベビーベッド?

 

ふりふりのクッションとピンク色のガラガラ、クルクルと回る小さなメリーゴーランドの玩具、そしてそのベビー用品の主たる

 

「ふぇ⋯⋯ふぇ⋯⋯」

 

「あ、赤ちゃん」

 

「ゲーミング電柱からカモンベイビータチカワしてるのギャグセン高い」

 

流行りに乗り遅れ過ぎだよ。都竹。

 

──今は昔⋯⋯ではなくて。

 

──今とあんまり変わらない少しだけ未来の世界。

 

──ゲームしてる普通に女子高生ありけり。

 

──名をば酒寄彩葉となむいいける

 

──彩葉って呼ぶべし♪

 

──怪しがりて寄りて見るに、電柱の中光りたり。

 

──それで彩葉はこう言ったの。

 

「ん?????」

 

「あっこれ理解追いついてないな」

 

 

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ふぇっ⋯⋯」

 

まだ彩葉は理解が追いついていないのか、ポカンとした顔で固まっている。無量空所喰らってるみたいでおもろ〜。

 

私は先ほどまで撮影していたスマホをポケットにしまい、彩葉の顔を右前から見ていた。

 

思う事はただ一つ『可愛い』だけである。

例えるなら頸動脈からI love youが溢れるような、ハッピーで埋め尽くしたくなるというか。

例えるのがとても難しい位には好きだ。

ヤチヨに並ぶ程度には大好き。もし彩葉がいなかったら、私は生きてなかっただろうなぁ。

 

「ふぇっ、ふぇっ」

 

赤ん坊が彩葉の事を見ている。

やっぱり赤ちゃんって可愛いな。丸っこい身体でニッコリ笑う。

こんな可愛い顔を見て、育児放棄する親がいるのだから驚きだ。

 

──もう、どうなってもいいんだあ!ひっく。

 

──ガシャーン。

 

──あおーん。

 

──キキーッ。

 

⋯⋯あれ?ここってこんなに治安悪かったかな。

いくらボロアパートと言えどこんなに危険な雰囲気を漂わせたりしないはずなのだが。

 

「ねぇ、赤ちゃんってどう持ったらいい?」

 

おっと、再起動した彩葉が話しかけてきた。

 

「私に聞かれてもな〜とりあえずお尻と背中持って、首据わってないだろうし頭を肩に預けさせといたらいいと思う。」

 

「思ったより知ってんじゃん」

 

私をなんだと思っているのだろうか。自称本の虫を舐めないで欲しい。

 

そう言うと彩葉は恐る恐る赤ちゃんを抱き上げ、私が言ったように赤ちゃんを持った。

赤ちゃんを取り上げたからか、ゲーミング電柱が急激に光を失い普通の電柱に戻っていった。ハハッ、謎技術。

 

「すみません。お忘れ物ですよ!」

 

『ちょ、待てよ』な顔をしながら彩葉がドンドンとゲーミング電柱だったものを叩いている。

手を痛めるよ?

 

「この状況じゃ、私達が攫ったみたいでは?」

 

「共犯にしないでよ」

 

「まず都竹が近づいたのが悪いんだよ!?」

 

「たい♡」

 

変な挙動する彩葉面白かったのが、赤ちゃんが無邪気な笑みを浮かべた。

これが生理的微笑か⋯⋯

 

「あまりにもきゃわたん」

 

「無理無理無理無理無理!都竹頼んだ!」

 

私の反応とは逆に彩葉は、赤ちゃんを私に丸投げしてきた。

赤ちゃんは国の宝だ。自分で手一杯な私なんかに育てられるわけないでしょ。

 

「拾った彩葉がお世話するべきだと思いまーす!」

 

「ふぇっ」

 

大きい声を出しすぎたからか、赤ちゃんがぐずり出した。

 

「ふええええええええええええええええ!」

 

アハハ、赤ちゃんが泣き始めてちゃった。

うん、これ私のせいだな。私が赤ちゃんの近くで喋らなきゃ良かった。

 

「あぁ、もう!都竹来て!」

 

赤ちゃんが泣き始めた事により、彩葉は人目に付きたくないのだろう。私を呼んで彩葉は自分の部屋をめがけ駆け出した。

 

しかし赤ちゃんも黙ってはいない。

 

「うえええええええええん!」

 

己に出せる全身全霊の声で泣き叫ぶ。

赤ちゃんだから仕方ないか⋯⋯

 

幸運な事に彩葉と私は誰ともすれ違うこともなく、アパートの部屋にまでたどり着くことが出来た。

 

「入って!」

 

「いや男s「入って!」へい」

 

がちゃん

 

私が入った直後、彩葉はすぐに鍵を閉めた。

 

「えええええええええん!」

 

「ヤバい!誘拐だよ!」

 

「誘拐以前の問題が現在発生してるよ!?」

 

健全な男子高校生を連れ込むというね!?

 

──ドンッ!

 

赤ちゃんの泣き声と私達の話し声がうるさかったのか、隣人からの壁ドンを招いた。

 

「か、壁ドン初めてされた」

 

「お、同じく⋯」

 

隣人さん、ほんとに申し訳ない。

 

「ふやあああああ!」──どんっ、どんっ、どんっ!

 

泣き止まない赤ん坊に、壁ドン連打の隣人さん。地獄かここは?

 

「えーっと⋯⋯『抱っこ』は、もうしてるし、『縦抱き』もしてる⋯『横揺れ』もしてるし、『抱っこ歩き』もしてる」

 

ぶつぶつ呟きながらスマホで調べながら、彩葉が部屋を歩いている。

分かってないね。赤ん坊に足りない物はあと一つ──

 

「彩葉、子守唄!」

 

「子守唄なんて記憶にないよ!」

 

頼みの綱は切れた。ぴえん。

彩葉は少し考え、なにか思いついたのか目をヤチヨのアクリルスタンドに目を向けた。⋯⋯なんで横に消臭スプレーが置いてあるんだ?

 

「大切なメロディは──流れてるよ──あなたのハートに──」

 

彩葉が歌ったのはヤチヨの『Remember』。

歌い始めたばかりなのに、赤ちゃんはすぐにぐっすりと眠った。

 

ヤチヨファン、通称神々が思う事はただ一つ

 

「「ヤチヨパワー、すげー」」

 

ヤチヨの歌は赤ん坊を泣き止ませることもできるし、人の命も救う。おそらくそのうち、ガンにも効き始める事間違いなし。

 

「⋯⋯よかったぁ」

 

彩葉が少し息をついた時、私は尋ねた。

 

「ねぇ、彩葉。この子どうするの?」

 

「普通に考えたら警察署じゃない?」

 

「それならどう説明するのさ、ゲーミング電柱から赤ん坊が出てきた〜なんて言ったら警察じゃなくて医者が来ちゃうよ」

 

それも頭のお医者さんがね。

 

「確かに⋯⋯」

 

彩葉は疲れたのか、少し止まるとそのまま動かなくなった。

 

制服のまま寝ないでよ。着替えさせたいけど、男子がそれをやるのは流石に怖い。

起こそうにも睡眠時間三時間未満の彩葉を起こすのは忍びないし、勝手に着替えさせて彩葉に嫌われたら死ねる。

 

もういいや。タオルケットだけかけておやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──幾千の時を巡って今、僕ら出会えたの──

 

ヤチヨの美声が私のポケットから流れる。

もう朝か。身体を伸ばして周りを見渡すと、彩葉と赤ちゃんが見えた。

 

男子高校生が女子高生の部屋で一泊か。なんか如何わしいな?

 

まぁ今更か。

 

彩葉はすやすや眠っており、赤ちゃんもすやすや眠っている。

なんかデカくね?気のせいか。

 

ジーーー。うん、赤ちゃんの寝顔は可愛い。ほっぺたもちもちだ。

なにも考えず赤ちゃんのほっぺをもちもちしていると

 

「幻覚⋯⋯じゃ、ないよね⋯ っ!なんで都竹がいるの!?」

 

彩葉が起きた。

いや、私を家に連れ込んだの貴女ですよね?

 

「しかたないじゃん、女子高生の部屋の鍵を開けっ放しにするのはさすがに危なすぎるし⋯」

 

「いや、男子高校生が女子高生の部屋にいる方が危険じゃない?」

 

返す言葉もない正論である。

こういうときは伝家の宝刀──

 

「てへっ♡」

 

可愛く誤魔化す⋯だ。

彩葉はなんやかんやで私に甘いのでこれでゴリ押せる。

 

「いや、誤魔化されないよ?」

 

効かなかった⋯だと!?

知らない内に彩葉は法輪でも生えて、私の誤魔化しに適応してしまったのだろうか。こう 、ガコンと。

 

 

 

「あっ!濡れてる!マジか!」

 

「赤ちゃんだからそりゃ漏らすか」

 

これから赤ちゃんに必要な物は一体なんだったか。

タオルに、哺乳瓶に、粉ミルクに、抱っこ紐、あとおむつとか⋯⋯?

 

「「えっ、多くない?」」

 

指を折って、赤ちゃんに必要な物を数えていたであろう彩葉とハモる。

 

適当に値段を計算してみると⋯

 

「1万余裕で超えるな⋯」

 

「都竹、着いてきて」

 

「了解」

 

おっ私を財布にしてくれそう。

 

 

 

 

 

彩葉についていき、到着地点は西竹屋。ベビー用品売り場だ。

企業努力が凄いで有名である。

ベビー用品を、ただひたすらカートに詰め込んでいると彩葉が無理無理言い始めた

 

「無理無理無理無理!」

 

彩葉の目線はオムツの値札に向いている。

わお、お高い事だ。安いの買ってもいいと思うけど、それはそれでなんか嫌だな。

 

「私が払うよ」

 

「それはダメ」

 

「なんでさ」

 

くっタル◯リヤムーブ決めようと思ったら彩葉に止められた。

うぅ、(ヤチヨ)よ。お金とお弁当以外で彩葉を支える方法が分からない私をお許しください⋯⋯

 

 

「合計で一万三千二百四十円です」

 

最後まで私が払おうとしていたが、彩葉に止められまくって払えなかった。

 

もっと私に頼ってくれればいいのに。

やっぱり私じゃダメなのかな。

なんか死にたくなってきた

 

おっとこれはまずい。考えるのをやめよう。

 

 

「都竹、持って」

 

「へい」

 

どうやら私の役目は荷物持ちだったようだ。彩葉の役に立てたようでよかった。

まぁ、男である私の方が力持ちなんだから、考えて見ればそっちの方が効率がいいか。

 

「うあっ」

 

「べろべろばー」

 

こうやって、赤ちゃんがぐずり出したら彩葉があやせるしね。

 

 

 

「ううっ」

 

「ミルク!」

 

彩葉の指示でミルクを作る私とその間赤ちゃんを抱き上げる彩葉。

 

 

「ふひひ」

 

「「かわいい」」

 

ニッコリと笑う赤ちゃんにそれに反応する彩葉と私。

 

 

「おはよう彩葉」

 

「キャアアアア!!」

 

──ドンッ!

 

私の家から道具と食材を持ち寄って朝ご飯を作る私と、何故か悲鳴をあげるパジャマ姿の彩葉。あと壁ドン隣人さん。

 

 

 

 

 

「⋯⋯あれ、何やっているんだ、私」

 

光陰矢の如し。赤ちゃん育て始めてはや3日だ。

彩葉は時間の経過で正気に戻ったらしく、赤ちゃんを抱きながらそんな事を言った。

 

恐らく彩葉は、三連休を勉強やバイトをして過ごそうと思っていたのだろう。

まぁゲーミング電柱産ベイビーのおかげで、そうはならなかったのだが。

というか赤ちゃんがいなかった場合、恐らく彩葉は勉強ばっかりして、ホントに六時間しか寝ていなかっただろうし、私としては一向に構わないけどね

 

「うぇっ」

 

「ミルクか、彩葉作ってくる」

 

「ありがと、都竹」

 

今思ったのだが、この3日間私はほぼ彩葉の家に入り浸っているんだよな。

おまけに初日は彩葉の家で寝ている。

 

これ傍から見て不味くないか?

同じ家で、赤ちゃんを育てる女子高生と男子高校生。

 

うん、人が見たら完全に私と彩葉を恋人か高校生夫婦と勘違いするだろう。不味いな。それは不味い。

私はどうだっていいが、彩葉の名誉が守られないのはだめだ。あってはいけない。

 

もしこの情報が学校にでも流れたら、私達はお終いだ。

特に、学校で完璧を装っている彩葉には致命傷と言っても差し支えないだろう。

だが幸い、高校とこのアパートはだいぶ離れている。恐らく余計な心配だろう。

 

「彩葉、ミルクだよ」

 

「ありがと」

 

だらだら考えている内にミルクを作り終え、彩葉に渡した。

 

「ううっ」

 

「お腹いっぱいになった?じゃあ、お休みしましょうね、お嬢様」

 

赤ちゃんは彩葉からミルク貰い、眠くなったのか少しぐずり出した。

すると彩葉はRememberを歌い、赤ちゃんを眠らせた。

 

赤ちゃんの寝顔は可愛くて、なんでもしてやりたくなってしまう。

 

心の底で冷えた心が囁いてくる。

 

──アレがお前と同じく、人間では無いとしても?

 

喧しい。あの子は私と違う。私みたいなヤツとは。

 

 

 

 

 

私はその晩、夢を見た。

 

じいちゃんとばあちゃんが笑いながら、こっちを見て呼びかけてくる。

 

──こっちにおいで。

 

何故か、違和感を感じた。

昔と変わらない、見ているこちらにも笑みが浮かぶような、優しい微笑みだ。

 

私がそっちに行かなかったからか、じいちゃんとばあちゃんの顔が歪み。

 

──お前のせいだ

 

呼吸が止まる。

 

──お前のせいだ

 

思い出したくない事がフラッシュバックする。

 

──お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせ─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。冷や汗が止まらず、心臓がうるさいほど高鳴っている。

悪夢を見たのは久しぶりだった。

 

眠い目をこすって、周りを確認すると近くで彩葉が布団で眠っていた。恐らく私は気づかぬうちに寝てしまっていたんだろう。

 

 

彩葉の家を見渡す。少し、いや大分おかしな光景が目についた。

 

──どけ、俺はお兄ちゃんだぞ!!

 

──なにもかもスピードが速い。

 

──大地を踏みしめて♪大地を踏みしめて♪大地を踏みし〜め〜て〜♪

 

──そんな装備で大丈夫か?大丈夫だ。問題ない

 

──ウソダドンドコドーン!!ナズェミテルンディス!!

 

──人の心とか無いんか?

 

──どこへ行こうと言うのかね?

 

──やられたらやり返す。倍返しだ!

 

──環境破壊は気持ちいいZOY!

 

 

あぁ、これは夢だ。夢に決まってる。

私達が育てた赤ん坊が少女と呼べる体型まで成長し、全裸で数々のネットミームを私のスマホで見ながら、彩葉のノートパソコンをカチャカチャと触っている。

 

脳がパンクしそうだ。考えるのをやめよう。お休み。

 





混沌としてらぁ

彩葉視点、都竹視点どっちがいいですか?

  • 彩葉
  • 都竹
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