月人さんはネットがお好き。   作:ひいらぎもち

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とりあえず、ヤチヨってことで文字数8000程度目指して頑張ります!


もと七色に光るゲーミング電柱ありける

 

 

 

「あ、彩葉来た」

 

「おはー」

 

「昨日ぶりだねぇ彩葉〜」

 

バイトからの翌朝、いつもの通学路で芦花と真実と合流し

た。会うのは昨日のゲーム以来。仮想空間のアバターもおにぎりやメロンパンの装飾が凝っていてお洒落だけど、リアルの二人は輪をかけて魅力的だ。

日陰で待っているのにそこだけ別の光が差してるみたい。

一つ違和感に気がついた。もう一人の声の持ち主がいない

 

「…ねぇ、恵はなんで彩葉の後ろにいるの?」

 

「えっ…?」

 

芦花が言ってくれなければ気づかなかっただろう。ゆっくり後ろを確認すると…

 

「やぁ彩葉。後ろにいたのを気づかなかったのを見るに、昨日よく寝なかったね?」

 

呼び掛けてきたその人は、垂れた瞳に中性的な顔立ちと薄い茶髪。

つまり芦花の言う通り都竹がいた。

 

おまけに私の睡眠時間を当てようとしている。

....シ、シンプルに怖い...

 

「ね..寝たってー」

 

「彩葉の『寝た』は、どうせ三時間くらいでしょー?」

 

眉をハの字に寄せた芦花から、すかさずツッコミが入る。

くっ…これも全て都竹ってヤツが全部言っちゃうかのが悪いんだ!

 

「実質徹夜じゃん〜。聞いてるだけでねむー」

 

真実は本当に眠くなっていきたのか、まったりとあくびをした。じっと見ているだけでこちらも眠くなってくるので注意が必要だ。

 

「何してたん?バイト?」

 

「いや、それはない。昨日バイト終わった直後、一緒に帰ったから。彩葉の性格を考えるのに勉強だね」

 

なんでこの人はこんなにも私の理解度が高いんだ?

私より私を知っているのではないだろうか。

 

「都竹正解、予習と復習。もうすぐ期末試験だから。」

 

「彩葉なら予習とかしなくても今のままでも余裕で一位でしょ」

 

「そーゆー油断がいけないの。隙を見せたらいつでも背中から撃たれる世界なんだから」

 

いかん、お母さん語録が出てしまった。

 

「それ、〝お母さん語録〟だね?」

 

はいそうです。見透かされちゃいました〜トホホな表情を作ると、真実はドヤ顔で肩に手を置いて頷いてきた。

なんなんだ。

 

「彩葉はいつでも『KASSEN』気分だからなー」

 

「『KASSEN』に侵食されすぎ〜」

 

芦花と都竹がおっしゃる通り、私に合戦はゲームを閉じてもBAMBOOcafeを退店しても、まだ終わらない。むしろここからが始まりだ。

一年生一学期から続く学年トップ座を、命をかけて死守せねば。いや、試験の成績だけじゃない。

 

「あ、酒寄さんだ。おはよー」

 

「ささ、酒寄先輩!おはようございます!」

 

「酒寄さん、おはようございます。この前は助かりましたよ」

 

あ、みなさん、おはようございまーす。

 

「酒寄さん今日もキレー」

 

「やっべ、俺、酒寄先輩に挨拶しちゃったよ!」

 

「いいなー、お前」

 

品行方正、成績優秀、文武両道。隙のない完璧女子高生を貫いて始めて、私は前を向けるんだ。

 

──無理は怠けモンの言い訳や。私は私が出来たことしか言うてへんよ

 

ここまでやって始めて、私は私の遥か先を行く母の後ろ姿を捉える事が出来るのだ。

まあ、どこまで貫き通したとしても、母が私を褒めてくれることは決してないのだけど。

いつからだろう。母が私を褒めなくなったのは。

 

あれは確か──

 

えっと確か──

 

確か──

 

 

「では、ここわかりますか?今日は六日だから⋯酒寄さん」

 

「はい!」

 

不意打ちで先生に名前を呼ばれて意識が急降下で戻ってきた。

ヤバい、どこだ、ここ?行ってるそばから油断した。体育終わりの六時間目の古文は睡魔との戦いと知っていたのに。

それでも──。

 

「ここでの『なりぬ』は、動詞『なる』の連用形と、完了の助動詞『ぬ』の組み合わせです」

 

「おー、すげー」

 

「さすが酒寄さん」

 

「すごすぎて何言ってるか、わかんなかったー」

 

「いやわかるだろ」

 

完璧女子高生、酒寄彩葉はしくじらないのである

あっぶねー。

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

「それじゃあ、お先ですー」

 

「ずみまぜん、先輩!今日もドジばっかりで。ほんっとごめんなさい!」

 

「大丈夫だって。みおちゃんどんどんミス減ってるから。それじゃあお疲れ様です」

 

「そろそろ私も抜けまーす」

 

聞き覚えありまくりの声が聞こえたが、恐らく気の所為だろう。

今日も今日とて、注文という弾丸が飛び交うアルバイト先から命からがら生還した。

前述の通りBAMBOOcafeは何故か木曜日が最も繁盛するけれど、金曜は金曜で普通に混む⋯⋯

今日は⋯うん、ちょっと疲れたかな。でも...

 

「三連休がついにやってまいりやした。超久しぶりに一日六時間は眠れる」

 

「いや一日八時間位は眠って?」

 

「うわ怖」

 

「あまりにも酷くない?」

 

独り言を言っている最中に話しかけられたら誰だって怖いよ。

おまけに都竹が出てきたおかげで、月を見上げようとする首を真横に動かす羽目になってちょっと首が痛くなってしまった。

 

近頃、月を見上げる事が多くなった気がする。実家にいた時は、月なんて気にもしていなかったのに。

一体これはどういう精神の作用なんだろう。

 

「都竹はさ、月を見上げたりする?」

 

「見ないかな、月はあんまり好きじゃないし」

 

少しセンチメンタルな気分になって、都竹に聞いて見ると以外な言葉が帰ってきた。

 

あんまりと言っているが、私には「月は嫌い」だと言っているように聞こえる。

 

「アハハ、なんてね。月はよく見るよ!」

 

いきなりさっきとは打って変わって変なテンションで言葉が帰ってきた。

都竹はたまに、おかしくなる。いつも大体おかしいがこういう時はそうでは無く、冷たい反応のあとに先ほどの冷たさを覆い隠すようにテンションを上げる。

私は案外、都竹の事をよく分かっていないのかもしれない。

 

そうして少し喋りながら月を見上げていると…

 

「──っ」

 

なんだ、あれ?何かが月を横切った。一瞬だけ、ほんの小さな──

 

「あっ流れ星」

 

「流れ星!」

 

「流れ星だ」

 

⋯⋯え?

 

周りの声に弾かれるに手を合わせた。

 

──神頼みするやつは阿呆や。

 

また、母の声が聞こえたけれど、願わずにはいられなかった。

神様仏様どうか、どうか──

 

「か、金⋯⋯」

 

「女子高生にしてほしくない願い事三位くらいに君臨しそうな願い」

 

うるさいな。女子高生らしくないで、あまりにもつまんねーやつ過ぎる願いなのは分かっているのだ。

 

「じゃあ都竹はなんて願ったの?」

 

「世界平和〜」

 

「⋯もっと自分の欲を出そう?」

 

儚げな顔で、都竹は世界平和と言った。

私とは真逆すぎる願いで、尊敬できるレベルだ。

いつもはもっと変な事を言ってるのに。

変な物でも食べたか?

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

「⋯⋯は?」

 

「うわピカピカ」

 

ようやく帰り着いたアパートのすぐ横の電柱が、七色に光っているのを発見した。七色といえば.....

 

「ゲーミング⋯⋯電柱⋯⋯?」

 

「あまりにも理解不能な単語で、おい笑える」

 

都竹はこの状況に適応したのか、いつもと同じような反応だ。

いや、おかしいでしょ。ゲーミング電柱だよ?確かに意味不明だけどさ、もっと反応あるよね?普通はさ。

 

「いや、幻覚か」

 

「限界生活してる彩葉ならまだしも、私もゲーミング電柱見えてるから幻覚じゃあないと思うけどね」

 

⋯⋯勘弁してよ。

幻覚じゃないなら、これ本当になんなの?謎に光ってるし、なんかスモーク吐き出してるし流れ星がどんな人の願いを叶えたらこうなるのだろうか。

 

「ゲーミング電柱おもろ~」

 

パシャパシャ

 

「なに写真撮ってるのよ⋯」

 

都竹はなんか写真を撮っていた。

いや理解不能、超弩級の異常現象に遭遇しといてその反応はどうかしてるよ。

いや都竹がどうかしてるのは別にいつも通りなんだけどね?

 

はぁ、この状況をどうにかしようにも悲しきかな家賃がやっすいアパートに電話一本で駆けつけてくれるお優しい大家などいないのだ。かといって周りから駆けつけてくれる住人など都竹以外いない。

 

うん、私は今自分か都竹がどうこうしない限りどうしようもない、チェスや将棋で言うチェックメイトにハマっているのだ。

 

⋯くそぅ、背に腹は代えられぬ。

 

「都竹行くよ⋯⋯」

 

「うわ、いやっそうな顔〜」

 

私は覚悟を決め、都竹と共に一歩を踏み出した。さらに一歩、もう一歩

 

「うひょー、さらに向こうへ〜プルスウルトラ〜」

 

あっ、私を置いていき都竹が異常行動をした。

都竹が近づいたからなのか、突如ゲーミング電柱の真ん中にに突然扉にような切れ目が入っていった。

おまけにその扉に竹をモチーフとした取っ手が付き、扉が中から押されるように徐々に、徐々に観音開きに開いても

 

「いや、開くな!」

 

私はダッシュして、扉を閉めにかかった。

 

「ぐおっ、うっ、力づくかい。都竹手伝って!!」

 

一応男子である都竹に力を借りようと声をかけた。都竹の方を見ると都竹は静かに大笑いしながら動画を撮っていた。

 

ふざけてるのか?女子高生が頑張っている姿を見て、おまけに助けを求めているのに助けようとしない人間はコイツだけなのではないだろうか?

 

なすすべなくばいーんと開かれた扉の中には⋯⋯ベビーベッド?

 

ふりふりのクッションとピンク色のガラガラ、クルクルと回る小さなメリーゴーランドの玩具、そしてそのベビー用品の主たる

 

「ふぇ⋯⋯ふぇ⋯⋯」

 

「あ、赤ちゃん」

 

「ゲーミング電柱からカモンベイビータチカワしてるのギャグセン高い」

 

──今は昔⋯⋯ではなくて。

 

──今とあんまり変わらない少しだけ未来の世界。

 

──ゲームしてる普通に女子高生ありけり。

 

──名をば酒寄彩葉となむいいける

 

──彩葉って呼ぶべし♪

 

──怪しがりて寄りて見るに、電柱の中光りたり。

 

──それで彩葉はこう言ったの。

 

「ん?????」

 

「あっこれ理解追いついてないな」

 

 

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ふぇっ⋯⋯」

 

まだ彩葉は理解が追いついていないのか、ポカンとした顔で固まっている。

 

私は先ほどまで撮影していたスマホをポケットにしまい、彩葉の顔を右前から見ていた。

 

思う事はただ一つ『可愛い』だけである。

例えるなら頸動脈からI love youが溢れるような、ハッピーで埋め尽くしたくなるというか。

 

例えるのがとても難しい位には好きだ。

もし彩葉がいなかったら、私はこの世に存在してないだろう

 

「ふぇっ、ふぇっ」

 

赤ん坊が彩葉の事を見ている。

やっぱり赤ちゃんって可愛いな。丸っこい身体でニッコリ笑う。

あの可愛い顔を見て、育児放棄する親がいるのだから驚きだ

 

──もう、どうなってもいいんだあ!ひっく。

 

──ガシャーン。

 

──あおーん。

 

──キキーッ。

 

ここってこんなに治安悪かったかな。

いくらボロアパートと言えどこんなに危険な雰囲気はしないはずなのだが。

 

「ねぇ、赤ちゃんってどう持ったらいい?」

 

おっと、再起動した彩葉が話しかけてきた。

 

「私に聞かれてもな〜とりあえずお尻と背中持って、首据わってないだろうし頭を肩に預けさせといたらいいと思う。」

 

「思ったより知ってんじゃん」

 

私をなんだと思っているのだろうか、そう言うと彩葉は恐る恐る赤ちゃんを抱き上げ、私が言ったように赤ちゃんを持った。

 

赤ちゃんを取り上げたからか、ゲーミング電柱が急激に光を失い普通の電柱に戻っていった。

 

「すみません。お忘れ物ですよ!」

 

『ちょ、待てよ』な顔をしながら彩葉がドンドンとゲーミング電柱だったものを叩いている。

 

「この状況じゃ、私達が攫ったみたいでは?」

 

「共犯にしないでよ」

 

「まず都竹が近づいたのが悪いんだよ!?」

 

「たい♡」

 

変な挙動する彩葉面白かったのが、赤ちゃんが無邪気な笑みを浮かべた。

これが生理的微笑か⋯⋯

 

「あまりにもきゃわたん」

 

「無理無理無理無理無理!都竹頼んだ!」

 

私の反応とは逆に彩葉は、赤ちゃんを私に丸投げしてきた。

赤ちゃんは国の宝だ。ひとでなしの私なんかが育てられるわけないだろ。

 

「拾った彩葉がお世話するべきだと思いまーす!」

 

「ふぇっ」

 

大きい声を出しすぎたからか、赤ちゃんがぐずり出した。

 

「ふええええええええええええええええ!」

 

アハハ、赤ちゃんが泣き始めてしまった。

これ私のせいだな。私なんかが赤ちゃんの近くで喋らなきゃ良かった。

 

「あぁ、もう!都竹来て!」

 

赤ちゃんが泣き始めた事により、人目に付きたくないのだろう。私を呼んで彩葉は自分の部屋をめがけ駆け出した。

 

しかし赤ちゃんも黙ってはいない。

 

「うえええええええええん!」

 

赤ちゃんだから仕方ないが、移動している間も泣いている。

 

幸運な事に彩葉は誰ともすれ違うこともなく、アパートの部屋にまでたどり着くことが出来た。

 

「入って!」

 

「いや男s「入って!」へい」

 

がちゃん

 

私が入った直後、彩葉はすぐに鍵を閉めた。

 

「えええええええええん!」

 

「ヤバい!誘拐だよ!」

 

「誘拐以前の問題が現在発生してるよ?」

 

健全な男子高校生を連れ込むというね

 

──ドンッ!

 

赤ちゃんの泣き声と私達の話し声がうるさかったのか、隣人からの壁ドンを招いた。

 

「か、壁ドン初めてされた」

 

「お、同じく⋯」

 

隣人さんほんとに申し訳ない。

 

「ふやあああああ!」──どんっ、どんっ、どんっ!

 

泣き止まない赤ん坊に、壁ドン連打の隣人さん。地獄かここは?

 

「えーっと⋯⋯『抱っこ』は、もうしてるし、『縦抱き』もしてる⋯『横揺れ』もしてるし、『抱っこ歩き』もしてる」

 

ぶつぶつ呟きながらスマホで調べながら、彩葉が部屋を歩いている。

赤ん坊に足りない物はあと一つ──

 

「彩葉、子守唄!」

 

「子守唄なんて記憶にないよ!」

 

頼みの綱は切れた。泣ける

彩葉は少し考え、なにか思いついたのか目をヤチヨのアクリルスタンドに目に入れた。

 

「大切なメロディは──流れてるよ──あなたのハートに──」

 

彩葉が歌ったのはヤチヨの『Remember』。

歌い始めたばかりなのに、赤ちゃんはすぐに眠った。

 

ヤチヨファンが思う事はただ一つ

 

「「ヤチヨパワー、すげー」」

 

ヤチヨの歌は赤ん坊を泣き止ませることもできるし、人の命を救い、そのうちガンにも効き始める。

 

「⋯⋯よかったぁ」

 

彩葉が少し息をついた時、私は尋ねた。

 

「ねぇ、彩葉。この子どうするの?」

 

「警察署じゃない?」

 

「それならどう説明するのさ、ゲーミング電柱から赤ん坊が出てきた〜なんて言ったら警察じゃなくて医者が来ちゃうよ」

 

「確かに⋯⋯」

 

彩葉は疲れたのか、少し止まるとそのまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──幾千の時を巡って今、僕ら出会えたの──

 

ヤチヨの美声が私のポケットから流れる。

もう、朝か。身体を伸ばして周りを見渡すと、彩葉と赤ちゃんが見えた。

 

男子高校生が女子高生の部屋で一泊か。なんか如何わしいな?

 

彩葉はすやすや眠っており、赤ちゃんもすやすや眠っている。

うん、赤ちゃんの寝顔は可愛い。ほっぺたも、もちもちだ。

なにも考えず赤ちゃんのほっぺをもちもちしていると

 

「幻覚⋯⋯じゃ、ないよね⋯ っ!なんで都竹がいるの!?」

 

彩葉が起きた。

 

「しかたないじゃん、女子高生の部屋の鍵を開けっ放しにするのはさすがに危なすぎるし⋯」

 

「いや、男子高校生が女子高生の部屋にいる方が危険じゃない?」

 

返す言葉もない正論である。

こういうときは伝家の宝刀──

 

「てへっ♡」

 

可愛く誤魔化す⋯だ。

彩葉はなんか私に甘いのでこれでゴリ押せる。

 

「いや、誤魔化されないよ?」

 

効かなかった⋯だと!?

知らない内に彩葉は法輪でも生えて、私の誤魔化しに適応してしまったのだろうか。こう 、ガコンと。

 

「あっ!濡れてる!マジか!」

 

「赤ちゃんだからそりゃ漏らすか」

 

これから赤ちゃんに必要な物はなんだったか、タオルに哺乳瓶に、粉ミルクに、抱っこ紐、あとおむつか。

 

「「えっ、多くない?」」

 

指を折って、赤ちゃんに必要な物を数えていたであろう彩葉とハモる。

 

適当に値段を計算してみると⋯

 

「1万余裕で超えるな⋯」

 

「都竹、着いてきて」

 

「了解」

 

 

彩葉についていき、到着地点は西竹屋。ベビー用品売り場だ。

 

ベビー用品を買い込んでいると彩葉が無理無理言い始めた

 

「無理無理無理無理!」

 

これは大方、おむつの値段に驚いたのだろう。

 

「私が払うよ」

 

「それはダメ」

 

「なんでさ」

 

くっタル◯リヤムーブ決めようと思ったら彩葉に止められた。

 

「合計で一万三千二百四十円です」

 

最後まで私が払おうとしていたが、彩葉に止められまくり払えなかった。

 

もっと私に頼ってくれればいいのに。

やっぱり私なんかじゃダメなのかな。

 

彩葉は私を頼ってはくれないのだ。

 

「都竹、持って」

 

「へい」

 

どうやら私の役目は荷物持ちだったようだ。彩葉の役に立てたようでよかった。

まぁ、考えてみればそっちの方が効率がいい

 

「うあっ」

 

「べろべろばー」

 

こうやって、赤ちゃんがぐずり出したら彩葉があやせるしね

 

 

「ううっ」

 

「ミルク!」

 

ミルクを赤ちゃんに上げる彩葉。

 

 

「ふひひ」

 

「「かわいい」」

 

ニッコリと笑う赤ちゃんに反応する彩葉と私。

 

 

「⋯⋯あれ、何やっているんだ、私」

 

光陰矢の如し。赤ちゃん育て始めて、はや3日だ。

彩葉は正気に戻ったらしく、赤ちゃんを抱きながらそんな事を言った。

 

恐らく彩葉は、三連休を勉強やバイトをして過ごそうと思っていたのだろう。

まぁゲーミング電柱産ベイビーのおかげで、そうはならなかったのだが。

というか赤ちゃんがいなかった場合、恐らく彩葉は勉強ばっかりして、寝ていなかっただろうし、私としては一向に構わないけどね

 

「うぇっ」

 

「ミルクか、彩葉作ってくる」

 

「ありがと、都竹」

 

今思ったのだが、この3日間私はほぼ彩葉の家に入り浸っているんだよな。

おまけに初日は彩葉の家で寝ている。

 

これ傍から見て、不味くないか?

同じ家で、赤ちゃんを育てる女子高生と男子高校生。

 

うん、人が見たら完全に私と彩葉を恋人と勘違いするだろう。不味いな。それは不味い。

私はどうでもいいが、彩葉の名誉が守られないのはだめだ。あってはいけない。

 

もしこの情報が高校にでも流れたら、私達はお終いだ。

特に、学校で完璧を装っている彩葉には致命傷と言っても差し支えないだろう。

だが幸い、高校とこのアパートはだいぶ離れている。余計な心配だっただろう。

 

「彩葉、ミルクだよ」

 

「ありがと」

 

だらだら考えている内にミルクを作り終え、彩葉に渡した。

 

「ううっ」

 

「お腹いっぱいになった?じゃあ、お休みしましょうね、お嬢様」

 

赤ちゃんは彩葉からミルク貰い、眠くなったのか少しぐずり出した。

すると彩葉はRememberを歌い、赤ちゃんを眠らせた。

 

赤ちゃんの寝顔は可愛くて、なんでもしてやりたくなってしまう。

 

心の底の冷えた心が囁く。

アレがお前と同じく、純粋な人間では無いとしても?

 

喧しい。あの子は私と違う。私みたいなひとでなしとは。

 

 

 

 

 

私はその晩、夢を見た。

 

じいちゃんとばあちゃんが笑いながら、こっちを見て呼びかけてくる。

 

──こっちにおいで。

 

何故か、違和感を感じた。

昔と変わらない、見ているこちらにも笑みが浮かぶような、優しい微笑みだ。

 

私がそっちに行かなかったからか、じいちゃんとばあちゃんの顔が歪み。

 

──お前のせいだ

 

呼吸が止まる。

 

──お前のせいだ

 

思い出したくない事がフラッシュバックする。

 

──お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせ─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。冷や汗が止まらず、心臓がうるさいほど高鳴っている。

悪夢を見たのは久しぶりだった。

 

眠い目をこすって、周りを確認すると近くで彩葉が布団で眠っていた。恐らく私は気づかぬうちに寝てしまっていたんだろう。

 

 

彩葉の家を見渡す。おかしな光景が目についた。

 

──どけ、俺はお兄ちゃんだぞ!!

 

──なにもかもスピードが速い。

 

──大地を踏みしめて♪大地を踏みしめて♪大地を踏みし〜め〜て〜♪

 

──そんな装備で大丈夫か?大丈夫だ。問題ない

 

──ウソダドンドコドーン!!ナズェミテルンディス!!

 

──人の心とか無いんか?

 

──どこへ行こうと言うのかね?

 

──やられたらやり返す。倍返しだ!

 

──環境破壊は気持ちいいZOY!

 

 

あぁ、これは夢だ。夢に決まってる。

私達が育てた赤ん坊が成長し、数々のネットミームを私のスマホで見ながら、彩葉のノートパソコンをカチャカチャと触っている。

 

脳がパンクしそうだ。考えるのをやめよう。お休み。

 

 

 





混沌としてらぁ

彩葉視点、都竹視点どっちがいいですか?

  • 彩葉
  • 都竹
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