憑依先が人殺しなんだが!?   作:けいあお

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第一章 旅立ち
憑依しちゃった


うう……なんだ?体が重い。

 

 意識が暗闇から起きると共に、その感覚を覚えた。ただし、物理的に何かが体の上に乗っている様な重量感は感じない。

 

 どちらかというと、【初めての陸上部の練習を終えた翌日の朝】の様な感じだ。つまり筋肉痛の感覚と似ている。

 

 

 上記の分析の通り、上手いように力が入らない身体に鞭を打って、ゆっくりゆっくりと置き上げる。

 

 信じられないぐらい体に力が入らない。

 まるで身体中に鉛テープを巻きつけられたみたいだ。

 

 く……、た……立ってくれよ!……た……立てよ!

 

 亀の如く緩慢な体の動きに内心でアム〇・レイになりながら、やけに触り心地の良い掛け布団を押しのけ、ベットの上に立つ。

 

「【オレ大地に立つ】ってね。」

 

 某ロボットアニメなら目の前に敵がいて【しょッ正面だ!】という所だが、そんなことは無く俺の目の前あるのはこのベッドについてる天蓋の柱だ。

 

 …………?

 

 ……いや待て“天蓋付きベッド”?そんなもんオレの家にないぞ。

 というかオレが寝ていたのは布団だ。

 天蓋付きどころか、そもそもベッドが家に無い。

 

 急いで当たりを見回す。

 

 確実に俺の家ではない場所にいる、この状況の手掛かりを掴もうと、必死こいて。それはもう血眼で。辺りに見覚えのない物が無いか探す。

 

 だが目に入ってくる情報は、この部屋が中世チックな部屋であることと、その中世の中でも貴族部屋のような豪華な部屋である事。

 つまり、意味不明が加速する。

 

 何処だここ???

 

 寝起きの脳みそを覆った霧が一気に晴れていく。

 そして芽生えるのは、今の状況の意味不明さと状況が分からない不安感だ。

 

 しかし、まだバトルフェイズは終わらない。

 

 ふと、部屋の一角にあったドレッサーが目に入った。

 この豪華な部屋の雰囲気に合っている貴金属によって煌びやかな装飾が施された鏡だった。

 その鏡の中に一瞬、自分の姿が映った。

 

 恐らく中学生か高校生ぐらいの若い男の姿。

 

 見間違いかと思いドレッサーに駆け寄る。

 

 だが鏡に映るのは先程と同じ見知らぬ顔。

 

 手で頬を抓る。

 痛い。

 鏡の中の人物も俺の動きをトレースするように手で頬を抓る。

 

 

「…………これ誰??」

 

 

 別に何を言おうと思った訳じゃない。

 ただ、口から意図せず漏れてしまった。 

 

 だってそうだろ。目が覚めたら自分の身体が、見知らぬ誰かの物だったのだから。

 

 

「は?」

 

 

 まるで意味が分からない。

 夢でない事はさっき証明済みだが、それでもまだ夢かドッキリにしか思えない。

 だがこの心臓が勢いよく鼓動する感覚と、額を濡らす冷や汗がここは現実だと主張している。

 

「【憑依した】ってことか?」

 

 最近の【なろう小説】だと雨後の竹の子の如く生え散らかしてるシチュエーションの一つ。

 異世界の住人の意識を刈り取って、その住人になり替わるという、考えようによっては殺人とも捉える事が出来る代物だ。

 

 ・・・・・・現実じゃあ【他人になり替わってるくせに何とも思わねえのかコイツ等、ひどいなあ人の心とか無いんか?】とか思っていたが、いざ味わってみると、突拍子も無くこんな状況に落とされてんだから、そんなこと(元の人格の事とか)考える暇ない。すみませんなろう系主人公さん、俺が間違ってました。

 

 

「こういうラノベって、大体は元の人格の記憶が入ってくるんだけど……」

 

 

 そう、ここで大抵は【俺はこの悪役令嬢うんたら・かんたらに転生していたのだ!】とか過去を振り返るパートがあるが、ここは現実。そんな都合のいいものは存在しないらしい。つまり、

 

 

コイツ(この身体)の情報はテメェで探せって訳か。」

 

 

 パスポートや運転免許証のような個人情報がびっっっっしり書かれたモノがあれば楽なんだが…・・・

 

 空き巣さながらの手つきで部屋の内部を物色していると、【銀色の板】のようなモノを引き出しの中から見つけた。

 

 ・・・・・・コレはなんだ?

 

 見たところ名前が刻まれていないため、ネームプレートという訳ではなさそうだ。

 もしそうだとしたら、最低限この身体の名前を知れたのだが、そう上手くはいかないらしい。

 だがこの板は、どこか意味ありげな見た目をしており、目が離せない。

 

 

 ・・・・・・正直に言うと、こんな得体のしれない物体を触りたくない。

 触れた瞬間死ぬ呪物とか、皮膚から吸収されるタイプの毒物の可能性もある。

 

 だが、こんな怪しい物体をこの状況で触らないわけにはいかない。

 

 

 ・・・・・・ええい!!!ままよ!!

 

 

 半ばヤケクソ気味に銀の板に勢いよく触れた。

 

 が・・・・・・しかし何も起こらなかった。

 

 どうやら俺の勇気は無駄だったようだ。

 

 肩透かしに在った気分で手を板から放すと・・・・・・

 

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檜山大介 17歳 男 レベル:13

天職:魔法剣士

筋力:40

体力:50

耐性:30

俊敏:60

魔力:80

魔耐:70

技能:火属性適正・風属性適正・詠唱短縮・言語理解

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 突如!銀の板からRPGゲームのようなステータスが表示された。

 

 

 レベルに、魔力に、技能・・・・・・俗に言うスキルか・・・・・・

 本当にゲームみたいだ。さらに言うと、なろう小説で腐る程見た所謂テンプレでもある。

 

 ・・・・・・だが、

 

「今の俺ってあんまし強くなさそうだな。」

 

 技能もステータスもパッとせえへん。ついでに名前もパッとせえへん【檜山大介】なんかモブっぽい名前だ。あと甚一くんは顔がアカン。

 

 名前からして、気づいたときには舞台装置としてお亡くなりになってそう。(辛辣)

 

 

「…・・・少なくとも今の俺は【檜山大介】って訳か。」

 

 

 あんだけ、なろう主人公をバカにしておいてだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・なり替わるか。気は進まねーけど。

 

 

 にしても・・・・・・異世界転移した人間に憑依するってどんな確率だよ…・・・・・・・・・

 

 

 彼はまだ知らない。

 その体が、やがて魔王となる男を殺し損ねていることを。




こんなのに憑依しちゃったオリ主に合掌(カワイソウニ


ちなみに檜山の天職を【魔法剣士】にした理由は【小物でビビりなので、実は近接戦ができるポテンシャルはあるのに後回しにして魔法でチクチク戦法ばっかりしている】ことにした方が、より惨め感が増すと思ったからです。
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