ブレイクハンド 〜創れない兄は、壊す力で世界を救う〜   作:鳩夜(HATOYA)

1 / 1
黒い手の少年

 この世界では、何かを創れる者が尊ばれる。

 

 家を建てる者。

 橋を架ける者。

 道具を作る者。

 船を造る者。

 そして時に、人の想像さえ超えたものを、この世に生み落とす者。

 

 彼らは皆、己の魔力を材料にして、ゼロから形を創造する力を持っていた。

 その力を、人々はこう呼ぶ。

 

 ――ビルドスキル。

 

 掌に浮かぶ白い板。

 白きビルドスキルボードに刻まれた技を使い、彼らは木材も、石材も、金属も、布も、時には魔力そのものすら組み合わせ、まだ世界に存在しない創作物を作り出す。

 

 優れたビルドスキルの使い手は、どこの町でも引く手あまただった。

 壊れた家を直せる者は尊敬される。

 便利な道具を作れる者は感謝される。

 巨大な塔や、海を渡る船や、空を覆う城を作る者は、英雄と呼ばれる。

 

 そして、その頂点に立つ者。

 神の手を持つ創作師。

 

 人々は彼らを、畏敬を込めてこう呼んだ。

 

 ――ゴッドハンド、と。

 

 クラウシュは、その名に憧れていた。

 

「見てろよ、ビセ! 俺、いつか世界で一番すげえもの作るからな!」

 

 小さな島の外れ。

 潮風が吹き抜ける崖の上で、十歳になる前のクラウシュは、両腕を空いっぱいに広げて叫んだ。

 

 眼下には青い海。

 背後には、木と石で出来た小さな家々が並ぶ島の村。

 そのさらに向こうには、島の中央にそびえる古い祝福塔が見えた。

 

 隣に立つ少年が、クラウシュを見上げる。

 

 同じ年齢。

 同じ顔。

 だが、表情は少し違う。

 

 クラウシュが太陽のように笑う少年なら、ビセは月明かりのように静かな少年だった。

 

「兄さんなら、なれると思います」

 

 ビセは穏やかに言った。

 

「おう! お前も一緒になろうぜ、ゴッドハンド!」

 

「僕も、ですか?」

 

「当たり前だろ。俺たち双子だぞ? 二人で世界一になれば、誰にも文句言われねえ!」

 

 クラウシュは拳を突き出した。

 ビセは少しだけ困ったように笑ってから、その拳に自分の拳をこつんと当てた。

 

「では、兄さんが世界一を作るなら、僕は兄さんの隣に立てるものを作ります」

 

「なんだよ、それ。お前も世界一を作れよ」

 

「僕にとっては、兄さんの隣にいることが一番ですから」

 

「変なやつだなあ!」

 

 クラウシュは笑った。

 ビセも笑った。

 

 その時の二人は、まだ知らなかった。

 世界が、兄弟に同じ祝福を与えるとは限らないことを。

 

 そして、片方に与えられなかったものが、もう片方の心を静かに壊していくことを。

 

 十歳になる年。

 

 この世界の子供たちは皆、祝福塔で祝福を受ける。

 祝福を受けた者は、掌から二枚のボードを出現させることが出来るようになる。

 

 右手からは白いビルドスキルボード。

 左手からは黒いブレイクスキルボード。

 

 ビルドスキルが創造の力なら、ブレイクスキルは破壊の力だ。

 

 ただし、それは何でも壊せる力ではない。

 魔力によって創られたもの。

 ビルドスキルで生み出された創作物。

 あるいは、それに近い性質を持つものを、解体し、分解し、崩す力。

 

 生活に必要とされるのは、圧倒的にビルドスキルだった。

 

 だから子供たちは皆、祝福の日を夢見て育つ。

 自分の白いボードに、どんな模様が浮かぶのか。

 最初から何か特別なスキルが刻まれているのか。

 

 通常、ボードは最初は空白だ。

 だが、稀に一つか二つ、最初からスキルを持つ者がいる。

 そういう子供は、村中から期待される。

 

 クラウシュも、期待していた。

 

 自分の右手に、最高の白いボードが現れることを。

 

 祝福の日。

 塔の中には、島中の大人たちが集まっていた。

 

 中央には祭壇。

 その上には、白と黒の二つの結晶が浮かんでいる。

 

 クラウシュとビセは、並んで祭壇の前に立った。

 

「双子の祝福は珍しいな」

 

「どちらも良いビルドボードが出るといいが」

 

「兄のクラウシュは元気がある。ああいう子は大物になるぞ」

 

「弟のビセは静かだが、手先が器用だと聞く」

 

 大人たちの声が耳に入る。

 クラウシュは胸を張った。

 ビセは少しだけ俯いていた。

 

 祭司が二人の前に立つ。

 

「クラウシュ。ビセ。両手を前へ」

 

 二人は同時に手を差し出した。

 

「右手に創造を。左手に破壊を。汝らの内なる魔力よ、世界に形を示せ」

 

 結晶が輝いた。

 

 まず、ビセの右手が光った。

 

 眩いほどの白だった。

 雪のように白く、しかし真珠のような艶を持つ、美しいボード。

 大きさはA5ほど。

 表面は澄んだ白。

 裏面には、細い銀の線が樹木の年輪のように広がっている。

 

 村人たちが息を呑んだ。

 

「なんて綺麗なビルドボードだ……!」

 

「しかも、見ろ! 文字があるぞ!」

 

 ビセの白いボードには、最初から二つのスキルが刻まれていた。

 

『簡易構築』

『接合補強』

 

 子供が最初から二つのビルドスキルを持つことは、極めて稀だった。

 

 続いて、ビセの左手から黒いボードが現れる。

 

 だがそれは、完全な黒ではなかった。

 灰色に近い、淡い黒。

 まるで白と黒が混じり合ったような、グレーのブレイクスキルボード。

 

「ブレイクボードも珍しい色だな」

 

「双子の弟は将来有望だぞ」

 

 大人たちの視線は、すでにビセへ注がれていた。

 

 クラウシュは、我慢しきれず笑った。

 

「すげえじゃん、ビセ! お前、最初から二つもあるぞ!」

 

「兄さん……」

 

「次は俺だな!」

 

 クラウシュは右手を強く握り、それから開いた。

 

 出ろ。

 出てこい。

 俺の白いボード。

 

 世界一になるための、最初の一枚。

 

 だが。

 

 何も起きなかった。

 

「……あれ?」

 

 クラウシュは首を傾げた。

 

 もう一度、右手に力を込める。

 掌の奥に魔力を集める感覚はある。

 だが、そこから何も浮かび上がってこない。

 

「んん……!」

 

 さらに力を込める。

 

 出ない。

 

 白いボードが、出ない。

 塔の中が静かになった。

 祭司が眉をひそめる。

 

「落ち着け。先に左手を出してみなさい」

 

「あ、はい!」

 

 クラウシュは左手を開いた。

 

 その瞬間。

 

 空気が沈んだ。

 

 左手から現れたのは、漆黒のボードだった。

 

 ただ黒いだけではない。

 光を飲むような黒。

 夜より深く、海溝より暗い黒。

 裏面には、赤黒い稲妻のような模様が走っている。

 

 大人たちがざわめいた。

 

「なんだ、あの黒さは」

 

「ブレイクボードか?」

 

「濃すぎる……」

 

 クラウシュは自分の左手を見つめた。

 かっこいい。

 

 最初にそう思った。

 だが、すぐに気づく。

 

 右手には、何もない。

 

「祭司様。俺の、白い方は?」

 

 祭司は答えなかった。

 

「なあ、まだ出てないだけだよな? ちょっと遅れてるだけで」

 

「クラウシュ」

 

 祭司の声は低かった。

 

「もう一度、右手に魔力を込めなさい」

 

「はい!」

 

 クラウシュは何度も試した。

 

 一度。

 二度。

 三度。

 

 汗が額を伝う。

 右手が震える。

 魔力が空回りしているような、嫌な感覚だけが残る。

 

 白いボードは、最後まで現れなかった。

 塔の中の誰かが、小さく呟いた。

 

「ビルド適性が……ない?」

 

 その言葉は、針のようにクラウシュの胸に刺さった。

 

 ビルド適性がない。

 

 何かを作る力がない。

 

 最高の物を作り、ゴッドハンドになる。

 

 そう夢見ていた少年の右手には、何もなかった。

 

「……うそだろ」

 

 クラウシュは笑おうとした。

 だが、うまく笑えなかった。

 

「だって、俺、ずっと……作りたくて……」

 

 ビセが一歩、前に出た。

 

「祭司様。兄さんのボードは、本当にないんですか?」

 

「分からん。だが、少なくとも今は出せていない」

 

「今は?」

 

 ビセの声が、わずかに鋭くなる。

 

「いくら適性が低くとも、ボードすら出せない者は、私も見たことがない」

 

 祭司は難しい顔で続けた。

 

「この島では分からん。大都会ファーストウッドにいるゴッドハンドなら、何か知っているかもしれない」

 

 ファーストウッド。

 

 島の子供なら誰もが憧れる大都会。

 巨大な創作物が立ち並び、数多のビルド職人が集まる場所。

 そして、ゴッドハンドが住むと言われる街。

 

 クラウシュの目に、わずかな光が戻った。

 

「じゃあ、俺、行く! 今すぐファーストウッドに行く!」

 

「駄目だ」

 

 祭司は即座に言った。

 

「な、なんでだよ!」

 

「ボードを得たばかりの子供が、外海へ出ることは許されていない。最低でも十五歳までは、この島でボードとスキルについて学べ」

 

「でも!」

 

「クラウシュ」

 

 ビセが、クラウシュの袖を掴んだ。

 

「一緒に勉強しましょう。僕も手伝います。十五歳になったら、一緒にファーストウッドへ行けばいい」

 

 クラウシュは唇を噛んだ。

 

 右手は空っぽ。

 左手には漆黒のブレイクボード。

 

 白い創造の力を持たない少年。

 

 けれど、完全に終わったわけではない。

 大都会に行けば、何か分かるかもしれない。

 

「……分かった」

 

 クラウシュは小さく頷いた。

 

「十五歳になったら、絶対行く。絶対、俺の白いボードを見つける」

 

「はい。兄さんなら、きっと」

 

 ビセは微笑んだ。

 だが、その目は笑っていなかった。

 その日から、クラウシュの日常は少し変わった。

 いや、島の人々の目が変わった。

 

「黒手のクラウシュ」

 

 誰かが、そう呼び始めた。

 

「ビルドボードも出せないんだろ?」

 

「創れないやつが、ゴッドハンドになるって言ってたのかよ」

 

「壊すだけなら魔物でも出来るぞ」

 

 同年代の子供たちは、遠慮なく笑った。

 

 クラウシュは最初、落ち込んだ。

 だが、長くは落ち込まなかった。

 

「うるせえな! 壊すのだって大事だろ!」

 

「でも作れないんだろ?」

 

「今はな! 未来の俺は違うかもしれねえ!」

 

「白いボードも出せないくせに」

 

「黒がかっこいいからいいんだよ!」

 

 クラウシュは言い返した。

 

 転んでも立った。

 笑われても笑い返した。

 悔しくないわけではない。

 夜、布団の中で右手を何度も開いて、やっぱり何も出ないことを確認して、歯を食いしばる日もあった。

 

 それでも朝になると、クラウシュはいつものように走った。

 ブレイクスキルを学び、魔力の扱いを学び、創作物の構造を学んだ。

 

 作れないなら、せめて壊し方を知る。

 壊し方を知れば、作り方も少しは分かるかもしれない。

 

 クラウシュはそう考えた。

 一方で、ビセは笑わなくなっていった。

 

 兄が馬鹿にされるたび、ビセは静かに相手を見た。

 何も言わない。

 怒鳴りもしない。

 ただ、見ている。

 

 その目に気づいた者は、なぜか次の言葉を飲み込んだ。

 

 ビセのビルドスキルは、島でも評判になるほど成長した。

 小さな椅子。

 壊れにくい箱。

 風を受けて回る水汲み車。

 簡単な船の模型。

 

 白いボードには、少しずつ新しい文字が増えていった。

 

 クラウシュは、それを誰よりも喜んだ。

 

「すげえな、ビセ! お前、本当にゴッドハンドになれるんじゃねえか!」

 

「……兄さんが先です」

 

「いや、俺は白いの出てないし」

 

「それでも、兄さんが先です」

 

 ビセは頑なだった。

 クラウシュは笑って、弟の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。

 

「じゃあ二人でなろうぜ。約束したろ」

 

「はい」

 

 ビセは頷く。

 

 しかし、その胸の奥では別の思いが育っていた。

 なぜ、兄さんが笑われなければならないのか。

 なぜ、兄さんが下に見られなければならないのか。

 

 白いボードが出ないだけで。

 ビルドスキルが使えないだけで。

 あんなにも真っ直ぐな人が、なぜ否定されなければならないのか。

 

 この世界は、間違っている。

 ビセは、少しずつそう思うようになった。

 

 そして三年が経った。

 十三歳になったクラウシュとビセは、島の最終試験を受けることになった。

 

 試験内容は、天然創作物の討伐。

 

 天然創作物。

 それは、自然界に発生する魔物の一種だ。

 

 生物のように動くが、血肉を持たない。

 木材、石材、鉄片、骨組み、古い家具、壊れた道具。

 そういった無機物が魔力によって組み合わさり、生き物のような形を成した存在。

 

 今回の相手は、板材で出来た六面体生物だった。

 

 四角い木箱に手足が生えたような姿。

 だが、その角は硬く、体当たりを受ければ大人でも吹き飛ばされる。

 さらに周囲の木片を取り込み、傷を修復する厄介な性質を持っていた。

 

 試験場は、島の北にある廃材森。

 壊れた家屋や古い船材が積まれ、天然創作物が生まれやすい場所だ。

 

「クラウシュ、ビセ。二人で一体を討伐しなさい」

 

 試験官の男が言った。

 

「ビルドとブレイク、両方の理解を見る。無茶はするな」

 

「はい!」

 

 クラウシュは元気に返事をした。

 ビセは静かに頷いた。

 廃材の山の奥から、ぎしり、と音がした。

 

 木の板が擦れる音。

 釘が軋む音。

 何かが転がる音。

 

 やがて、それは姿を現した。

 

 大人の背丈ほどもある木製の六面体。

 四本の脚は椅子の脚を束ねたような形。

 腕は折れた梁。

 顔はない。

 だが、正面の板に空いた二つの穴が、目のようにクラウシュたちを見ていた。

 

「来るぞ、ビセ!」

 

「分かっています」

 

 六面体が跳ねた。

 

 見た目に反して速い。

 巨体が地面を蹴り、クラウシュへ向かって突進してくる。

 

 クラウシュは左手を突き出した。

 

「ブレイクボード!」

 

 漆黒のボードが現れる。

 刻まれているスキルは一つ。

 

『継ぎ目崩し』

 

 クラウシュは六面体の正面ではなく、角を見た。

 板と板の接合部。

 魔力の流れが集中する継ぎ目。

 

「そこだ!」

 

 黒い光が走った。

 

 六面体の角が弾けるように崩れ、突進の軌道が歪む。

 クラウシュは横へ跳び、地面を転がって回避した。

 

「ビセ!」

 

「はい」

 

 ビセが右手を開く。

 

 白いボードが輝いた。

 

「ビルドスキル――簡易構築」

 

 地面に散らばっていた廃材が浮かび上がる。

 板が組み合わさり、一瞬で低い壁が出来た。

 

 体勢を崩した六面体が、その壁に激突する。

 

 だが、壁は壊れない。

 

「接合補強」

 

 ビセの二つ目のスキルが、壁の継ぎ目を強化していた。

 

「すげえ!」

 

「感心している場合ではありません、兄さん」

 

「分かってる!」

 

 六面体が腕を振る。

 梁のような腕が壁を砕き、木片が飛び散る。

 

 クラウシュはその木片の一つを掴んだ。

 

 作れない。

 だが、見える。

 

 どこに力が通っているのか。

 どこを崩せば、形が保てなくなるのか。

 

 三年間、彼はそれだけを学んできた。

 

「ビセ、足止め頼む!」

 

「三秒でいいですか?」

 

「充分!」

 

 ビセは白いボードを構えた。

 

「簡易構築、連続」

 

 廃材が次々と組み上がる。

 壁ではない。

 杭だ。

 細く尖った木杭が、六面体の足元を囲むように生える。

 

 六面体が足を上げた瞬間、杭が脚の隙間に入り込み、動きを止めた。

 

「今です」

 

「おう!」

 

 クラウシュは真正面から走った。

 

 六面体が腕を振り上げる。

 クラウシュは逃げない。

 

 左手の黒いボードが、漆黒の光を放つ。

 

「ブレイクスキル――継ぎ目崩し!」

 

 狙うのは、正面の板ではない。

 足でも腕でもない。

 

 中心部。

 六面体の内側で、全ての板材を繋いでいる魔力の芯。

 

 クラウシュの左手が、木の体に触れた。

 

 次の瞬間。

 

 ばきん、と乾いた音が響いた。

 

 六面体の全身に亀裂が走る。

 

 板がずれた。

 梁が落ちた。

 脚が外れた。

 腕が崩れた。

 

 巨大な天然創作物は、一瞬でただの廃材の山になった。

 

 試験官が目を見開いた。

 

「討伐、完了……!」

 

 クラウシュは肩で息をしながら、左手の黒いボードを見た。

 

 作れない。

 でも、戦える。

 

 何かを壊すだけの力かもしれない。

 それでも、この力で誰かを守ることは出来る。

 

「やったな、ビセ!」

 

 クラウシュが振り向く。

 

 ビセは白いボードを消し、静かに微笑んだ。

 

「はい。兄さんの勝ちです」

 

「二人の勝ちだろ!」

 

「……そうですね」

 

 その日、二人は最終試験に合格した。

 

 島の大人たちは、ビセの才能を褒めた。

 そして、クラウシュのブレイクスキルも認めた。

 

 だが、完全には変わらなかった。

 

「ビルドボードがないのに、よくやったな」

 

「壊す専門なら使い道はあるか」

 

「ビセがいれば、クラウシュもやっていけるだろう」

 

 悪意のない言葉。

 だが、悪意がないからこそ、深く刺さる言葉。

 

 クラウシュは苦笑いで受け流した。

 

「ま、俺は俺でやるさ」

 

 ビセは、その横顔を見ていた。

 

 兄は強い。

 笑っている。

 きっと明日も、同じように走り出す。

 

 だからこそ、許せなかった。

 

 兄が傷ついていないわけではないことを、ビセだけは知っていた。

 

 夜。

 

 ビセは一人で海岸にいた。

 

 白いボードを出す。

 真っ白に輝くそれは、島の誰もが羨む才能の証だった。

 

 けれど、ビセはそれを嬉しいと思えなくなっていた。

 

「兄さんを認めない世界なら」

 

 波の音に紛れるほど小さな声で、ビセは呟いた。

 

「そんな世界は、作り直した方がいい」

 

 白いボードに、淡い光が灯る。

 

 ビセの足元で、流木が組み上がった。

 小さな船の形になる。

 まだ人が乗れるほどではない。

 けれど、それは確かに海へ出るための形だった。

 

 ビセは遠くを見た。

 

 海の向こう。

 大都会ファーストウッドがある方角。

 

 そこには、ゴッドハンドがいる。

 世界最高の創作師たちがいる。

 この世界の価値を決めている者たちがいる。

 

 ビセの瞳に、白い光が映る。

 

 それは希望の光に見えた。

 

 だが、その奥には、黒い影が静かに揺れていた。

 

 二年後。

 

 クラウシュは十五歳になる。

 

 その時、兄弟は一緒に島を出るはずだった。

 

 少なくともクラウシュは、そう信じていた。




連載中の作品とは別に、以前から温めていたオリジナル作品です。
反応を見ながらぼちぼち投稿致します!

どちらにしても、現在トリコ二次創作に注力している為、不定期更新となります。

ここまで見て気づかれているかもしれませんが……
とある作品にかなり影響を受けた作品です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

千年後のグルメ時代(作者:鳩夜(HATOYA))(原作:トリコ)

転生した先は、憧れ続けた『トリコ』の世界。▼だが、そこは主人公が夢見たグルメ時代ではなかった。▼時代はトリコたちが活躍してから千年後。▼地球の開拓はほぼ終わり、グルメ界ですら一般人が出入りする時代。▼人々は生まれた時からグルメ細胞を接種し、過酷な環境にも当たり前のように適応している。▼未知なる食材を求めた冒険の時代は、すでに終わっていた。▼それでも主人公は思…


総合評価:8590/評価:9.04/連載:55話/更新日時:2026年06月18日(木) 19:49 小説情報

女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい(作者:ベリーナイスメル/靴下香)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

マゾ向けゲーで逆転したい、したくない?


総合評価:13300/評価:8.65/完結:39話/更新日時:2026年05月10日(日) 10:53 小説情報

ルノワール男爵の憂鬱(作者:道造)(オリジナルファンタジー/コメディ)

タイトルまんま▼カクヨムでも投稿しています


総合評価:16839/評価:8.72/連載:41話/更新日時:2026年06月12日(金) 07:00 小説情報

【街の解体屋】魔物解体配信、はじめます【初見歓迎】(作者:解体新書が泣いている)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ダンジョンと魔物が当たり前に存在するこの世界で、解体師は慢性的な人手不足に悩んでいた。▼解体師の田中悠一、二十六歳。この現状をどうにかしたいと考えた彼は、実際に解体の様子を配信して仕事の魅力を発信しようと思いつく。▼「実際にやって見せれば伝わるはず」という至極真っ当な動機のもと、今日も淡々と魔物を配信で解体していく。▼ただ一つ誤算があったとすれば、独学で磨き…


総合評価:18726/評価:8.28/連載:31話/更新日時:2026年05月16日(土) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>