晩御飯を食べてた頃。
「お母様、食器洗いは私がします!」
「あらそう?じゃあ、お願いしちゃおうかしら」
リオと母さんの話を聞きながら、僕も名乗り出ようとしたとき、
「それじゃあー、お風呂もう炊いてあるから!
あんた"たち"入っちゃいなさい!」
母さんが僕の方を見て言う。
流しに立ったリオも「どうぞ」と言う顔をしている。
仕方ない
「わかったよ。」
部屋へ着替えを取り、風呂へ向かう。
服を脱ぎながら、今日のことを振り返る。
....ポケモンバトル楽しかったな。
拳を軽く握りしめる。
浴室へ入り体を洗うとき扉の向こうで物音が聞こえた。
....?誰か来た?
少し間を置き、扉が思いっきり開かれた。
「ごっしゅじん!お待たせー!」
笑顔のホムラが立っていた。
「!?!?ホムラ?....何....してるの?」
「んん?何してるって、お風呂に入ろうと思って!」
事もなげに言う。
「それに!母さんも言ってたじゃん。"あんたたち"って!」
そう言うホムラは、一応体にタオルは巻いてくれているが。あまりにも無防備だった。
.....確かにホムラは、性別上オスだけれど、
ホムラの顔を見る。
整った顔立ちに細い肩。
どう見ても美少女にしか見えない。
「もー。何してるのさ!ほら、早く早く!」
浴室への侵入を許して、扉が閉められた。
「えっと、ホムラさん?僕一旦上がったほうがいいですかね?」
「え?ダメだよ。」
笑顔で即答される。
腕を掴まれ、逃げ道も絶たれた。
もう、割り切るしかないか、、。
「ほら!頭洗って!」
手にシャンプーをつけて、頭を洗う。
「ごしゅじん。さいこおー。」
嬉しそうに頬を緩ませるホムラの顔が
湯煙で少し曇る鏡に写っていた。
「ごしゅじん、僕のこと、旅に連れて行ってくれるんだよね?」
「.....当たり前だろ?」
髪の毛の間から生えるケモ耳を避けて、
わしゃわしゃと頭を洗う。
「そっか、そうだよねー。えへへ。」
「嬉しいけど......いいの?」
不意に疑問を投げかけられ、少し手が止まる。
「本当に、僕でいいの?」
「あ、嫌なんじゃないんだよ!?」
「けどさ……」
「今日だって、戦ったのはユキだったし。」
「実際に僕は、他の2人よりも確実に弱いからさ。」
先ほどは見えた鏡越しの顔も、
鏡の曇りによって見えなくなっていた。
しかし、その後ろ姿はどこか悲しそうで、
「僕のことは気にしなくていいからさ!!
ご主人.....無理はしないでね?」
僕は多分、それほど鈍くないんだと思う。
だからこそ、ホムラが何を言いたいのかわかってしまった。
「置いていくわけないだろ、、」
背後から軽く抱き寄せる。
ホムラの体は思いの外細く、柔らかい。
「そんなこと、するわけないだろ!!
ホムラは僕の大事な仲間なんだから。」
「ご主人....うん。ありがとね。」
「そんなこともう言わないでね。」
「.....うん、気をつける。」
ホムラの髪を洗い流す。
「体は自分で洗うから!先にお風呂に浸かってて!」
先にお風呂に浸かる。
旅に出る、
リオと。
ユキと。
ホムラと。
母さんとの約束を守るために。
みんなを悲しませないために。
湯船の中で拳を強く握る。
僕は――もっと強くならなきゃいけない。
そう、思った。