その日の夜。
話を終えて皆、部屋を出たはずだったが。
扉がノックされた。
扉を開けるとユキ、リオ、ホムラが立っていた。
ドアに一番近かったユキに声をかけた。
「また何かあったの?」
「じ、実はその....。」
ユキが電気の消えた部屋の中を覗き、話しを続ける。
「もしかして、寝ようとしてたの?」
「あ、そう。もう寝ようかなって。」
「それなら.....私達と寝ない?」
「え!?」
「ほ、ほら.....その。
旅に出たら野宿や夜番もある。」
「同じテントで寝ることもあると思うから。」
「だから……慣れておこうと思って。」
驚き、ユキの顔を覗く。
ユキは素知らぬ顔で目を逸らした。
耳が赤い。
「嫌だとか、言わせないから。」
リオの方を見るが、俯いていた。
枕をギュッと胸に抱いて....。
「覚悟は....してきました。」
「いや、何の!?」
淡々とした言いようのわりに、
ケモ耳と尻尾の動きが騒がしい。
なんとか救いを求めてホムラを見る。
「マスターと同じベッドで寝てみたかったんだー!」
多数決もこの場じゃ機能しないらしい。
今まで以上に覚悟がいる夜を過ごす必要があるみたいだ。
ーーーーーーーー
翌朝、目を覚ますと....。
何も見えない。
いや、違う。
「リオ、起きて。」
「んん....。」
視界をリオが覆い隠していた。
一応、敷布団をひいて、寝床を分けたはずなんだけど....。
「...!?!? すみません!」
状況を理解して飛び起きるリオ。
少しおかしくて笑ってしまう。
「あはは、もしかしてリオって、寝相悪かったりする?」
「っっ、その.....。普段はそうでもないのですけど」
「……主が近くにいると、安心してしまって。」
「ううぅ、、、。」
恥ずかしがるリオをなんとか宥めた。
ーーーーーーー
昼前、朝食をすでに食べ終え、
身支度をする。
母さんが言っていた見晴台に行こう。
「主、準備はできましたか?」
「もー、置いていくよー!ご主人!」
「早くしなさいよね。」
「ごめん!すぐ行く。」
玄関へ向かうと母さんがいた。
「それじゃあ、お願いしているもの。
しっかり受け取ってきてね。
大きな緑色の帽子を被った女の子が持ってきてくれているそうだから。」
「うん。わかった。いってきます!」
「えぇ、いってらっしゃい!」
町へ出て。道を歩く。
少しして、見晴台へ登る階段が見える。
「誰が最初に登るか競争しよーよ!」
「ここの階段、少し長いから苦手なのよね。」
駆け出したホムラと少し嫌そうな顔をしながらもほむらに負けないよう一歩踏み出すユキを横目に見る。
「主も、行きましょう。」
手を引かれ、階段の上へ駆け出した。
「ふふっ。私が一番のようね。」
「はーはー....。もー!なんで後から駆け出したユキちゃんの方が早いのさー!」
少し遅れて。
ホムラとユキの声と共に、
壮大な景色が徐々に視界に移り込んでくる。
そしてーーー。
金髪のボブカットで緑の大きなベレー帽を被る
赤メガネの女性が、
その景色を眺めていた。
僕たちのことに気付いた様子だった。
この人は....。
「すっごい綺麗だよねぇ!」
「ねぇねぇ、あなたもそう思うでしょ?」
「そうですね。この町1番の絶景だと思います。」
「....あっ私はベル!ポケモン博士である。アララギ博士の助手です!」
僕と周りのリオ達を見て少し考えるそぶりをした。
「あー!もしかして君かな?話に聞いていた子は!」
「うわぁーー!聞いてた通りだよ!
本当に人の姿なんだ!!すごーい!!」
ハッとして、すぐに身だしなみを整えた。
「はじめまして!
会えてよかった!」
「あなたが、母さんの言っていた?」
「そう!君に渡したいものがあります!」
ベルがポーチからオレンジ色の機械を取り出した。
これは....
「じゃじゃーん!これはポケモン図鑑!
あなたが出会ったポケモンを自動的に記録していくハイテクな道具なの!」
「きっとこの道具は君の旅に役立つと思うの!」
そう言うベルさんの顔はいつかを懐かしむような顔だった。
「君が旅の中で、
いろいろな人やポケモンと出会って欲しい。それがアララギ博士と君のお母さんの願いなんだよ。」
手渡される。
「これが……ポケモン図鑑。」
スライド式の画面を開くと柔らかく光った。
僕はポケモン図鑑を手に入れた。
「あれ?扱い方知ってたんだね!よかった!」
「それにしても、やっぱり不思議だよねぇ。話には聞いてたけど、本当に人の姿をしているポケモンがいるなんてさ。」
「人に変身できるポケモンはいるけど、初めから人の姿を取ってるポケモンは初めて!」
リオ達のことを見て話す。
「けど、そんなの関係ないくらい、あなた達は仲が良さそうでよかったよ!」
ベルから受け取った図鑑を胸に抱く。
旅立ちまで、あと少し。
僕の新しい物語は、 もうすぐ始まろうとしていた。