僕は逃げ出すようにリビングを後にしていた。
「(もう少しこの世界のこと知って、整理しなきゃ)」
逃げ出した言い訳のような考えを巡らせながら、僕の部屋に着く。
起きたときは、すぐに部屋を後にしていたから気づかなかったけど。
見慣れているのに違和感がある。
長年住んでいるのに知らない新居のような矛盾した感覚。
机に引き出しがあり、何かを探るように開けて中を見る。
別に特別なものなんて入っていない。
使っていないモンスターボールや、傷薬。
でも、それらが妙に新鮮に感じる。
ふと、部屋の扉が開く音がして振り返る。
そこに...
リオが立っていた。
「主...」
先ほどリビングを出た時の悲しい顔が過ぎる。
「主はまだ.....苦しんで、迷ってるの?」
矛盾した感情が交差する。
逃げ出したい僕と
目を逸らしたくない僕。
その記憶を僕は覚えているから...。
「ごめん。もう少しだけ.....」
椅子にかけてあった上着だけ持ち、
逃げるように僕の部屋を後にする。
「主....やっぱりまだ...。」
部屋を後にする僕の後ろで微かにそんな声が聞こえた。
ーーーーーーーーーー
家を出た。"僕"の記憶の通り、小さな町だった。いくつかの家を通り過ぎて、看板にある19番道路の木々の抜け道へと向かう。
静かな場所へ。行きたかった。
僕の感覚と記憶を頼りに、森...へ。
森の奥、小屋が見えてくる。
僕はあそこを知っている。
昔、秘密基地にしていた場所。
そしてーー
僕の迷いが生まれた場所。
昔から僕は1人になりたい時、ここに来ていた。周りは森で静かだから。
考え事をするのにちょうどよかった。
久しぶりに来た気がする。
扉を開けるが何もない、がらんとした小屋だ。
小屋に入ろうとした時、、、
「ガシャン!!」
外から大きな音がした。
「!?」
驚いたが、音の原因を探るため小屋の外へ出る。
音が来た方入口とは反対、小屋の裏を見る。
そこには、
子犬のようなポケモン、ヨーテリーとその足元、
鰐口のトラップが深く足へ食い込んでいた。
足元の地面は、罠が食い込んだ瞬間に飛び散った血と、今も流れ続ける鮮血で赤く染まっていた。
「え、、、?」
一瞬、状況を理解できなかった。
それでも、すぐに体は動いた。
怯えるヨーテリーに近づき、足に食い込んだトラップを外そうとする。
痛みと恐怖で暴れるヨーテリーに腕を噛まれる。
「大丈夫、大丈夫だから」
着ていた上着に血が滲む。
誰がしたのかわからない。でも、見過ごすことは僕にはできない。
鰐口を力一杯押し広げ、ヨーテリーの足を引き抜く。
パニック状態で暴れたからか、トラップで血を流したからかヨーテリーは疲弊している。
「すぐポケモンセンターに...」
その時、近くの草をかき分け近づく音がした。
話し声が聞こえる
「この辺にも仕掛けたはず」
「なんかレアなポケモン捕まってないかなぁ。
まぁ、どんなポケモンでも足しにはなるか」
2人の人が姿を現した。
黒色のベレー帽とマスク、黒づくめの服を着た男女が2人現れる。
「え?」
「なにしてんだ?小僧?それは、俺のトラップと獲物だろ!」
「てことは、これはあなたたちが?」
ヨーテリーを庇うように後ろへ隠す。
「そうだよ。だから、そのポケモンとトラップ返してもらう。」
「渡すわけないだろ、こんなことする人たちに」
「あっそ。それじゃあ、」
1人がモンスターボールを構える。
「!(まずい!)」
「いけ、レパルダス!みだれひっかき!」
黒い影が飛びかかってくる。
ダメだ間に合わない。
反射的にヨーテリーを抱き寄せた。
次の瞬間---
背中を焼けるような痛みが走る。
鋭い爪が幾度となく体を切り裂く。
「あっーーー!!!」
そのまま吹き飛ばされ、木へぶつかる
「がっ」
鋭い痛みが身体中を巡る。視界が赤くぼやけてくる。
「これに懲りたら大人に逆らわないことだな。」
男がヨーテリーに近づき...
突如、男の方に人影が突進し、間に入ったレパルダスとぶつかる。
「!?なんだぁ?」
僕が逃げてしまった相手.....
リオが、そこに立っていた。