ヨーテリーと男たちの間に割って入る人影。
リオがそこに立っていた。
「ぐっ.....リオ!」
「!!....主!」
リオと一瞬だけ目が合った。
しかし、すぐに前を向き直す。
顔はよく見えない。
ただ、その肩は少し震えていた。
「その耳、尻尾.....そして、俺のレパルダスを押し除けるそのパワー!!お前、噂の"人の形をしたポケモン"だな?」
「とんだレアモンね」
2人の男女の目つきが変わる。
リオと向かい合う。
静寂が辺りを包み、刹那。
「レパルダス!シャドークロー!」
凄まじい速度で駆け出し、黒いオーラを纏った爪による引っ掻きがリオへ向かい飛んでくる。
「!」
リオは、ヨーテリーを庇いながら、
身を捻り紙一重でシャドークローを躱す。
「リオ!!」
体が痛い。
服に血が滲んでいく。
でも.....
「レパルダス!みだれひっかき!」
ヨーテリーを庇いながら、傷ついていくリオを見る。
その姿から目が離せない。
ここで逃げたら僕は.....
もう、"ポケモントレーナー"になれない気がした。
リオと目が合う。
わかる。どうしたらいいのか。
体が痛む中、
胸の奥が熱くなる。
気がつけば声に出して叫んでいた!
「リオ!はどうだん!!」
リオの右手に蒼い波導が集まる。
圧縮されたエネルギーが球状に纏まり光を放つ。
防戦一方だったリオが、不敵に笑う。
「ぐっ!レパルダス!かわせぇ!」
「(いや、当たるーーー!!)」
回避しようとしたレパルダスの胴体に"はどうだん"が直撃する。
吹き飛ばされたレパルダスが男たちにのしかかる。
「きゃっ!!」
「ぐはぁ!っっくそ!どけよレパルダス!!」
「効果抜群、もうレパルダス動けないだろ。」
ボロボロの体に力を入れて、なんとか立ち上がる。が、ふらついて倒れそうになる。
「主!!」
リオが地面を蹴る音がした。
暖かい。抱きしめられてるのか。
「リオ、ごめーー「いい...。」」
リオが首を振る。
「謝らないで。」
目が合う。
先ほどは見えなかった顔が、今はっきりと目に映る。
目元が赤い。
頬には涙の跡。
その顔を見てようやく気づいた。
「....ありがとう..。」
痛みを忘れたように、そっとリオを抱き返す.....。
そしてーーー。
僕の目の前は少しずつ、真っ暗になった。
ーーーーーーーーーー
目が覚めると、ベッドの上だった。
...そっか、あの後意識を失って、
手に何かを掴む感覚がある。
目を向けると、リオがベッドの脇に座り、手を握っていた。
「主?目、覚めたんですね。....良かった。」
「.....。リオ、あの後どうなったの?」
「はい。あの密猟者2人は、主のライブキャスターで呼んだ警官の方に明け渡しました。」
リオがハッとしたような顔をして。
「すみません。勝手にライブキャスターを使ってしまって。」
「いや、むしろありがとう。助かったよ。」
.....本当に、助けられてばっかりだ。
少し沈黙が流れる。
「ねぇ、リオ。」
一息吸い。
「どうして.....助けてくれるの?」
リオは「どうしてそんなことを聞くんだ」という顔をした。
「それは....私が主の"相棒"だからです。」
「私は主が....あなたが迷っている時、苦しんでいる時、そばにいてあげたい。だから、助けるのなんて当たり前なんです。」
リオのまっすぐな瞳が僕を見ている。
そっか。
1人で悩んで逃げ出して、
僕はなんて....弱いんだ。
リオが手を少し強く握り、声を紡ぐ。
「ねぇ主。まだ....."バトル"するのは、怖いですか?」
目を逸らしてしまう。
まだ.....怖い。
そんな僕の心を読み取ったようにリオが話す。
「違います。主が本当に怖いのは、私たちが"傷つくこと"なんじゃないですか?」
.....。
多分、いや確実に。
図星だった。
「やっぱり、そうだったんですね。」
一層握る手が強くなる。
少しの間の後、リオが優しく声を放つ。
「それなら、私たちが傷つかないくらい。主が強くなってください。」
驚きリオの顔をばっと見る。
その顔はあまりにも優しかった。
「僕が....強く?」
「そうです!それこそ.....」
「チャンピオンになるくらい!!」
それは、僕がかつて憧れた場所。
そして、一度諦めた夢だった。
僕の胸から広がった、熱い何かが目に溜まる気がした。
「い、いいのかな。僕が.....チャンピオンを目指して。」
「いいも悪いもないです。主がチャンピオンを目指すなら、私はその隣を一緒に歩きます。」
「主なら、なれます。」
その言葉が胸に刺さる。
否定したかった。
無理だと言いたかった。
でももう、限界だった。
ベッドの脇に座るリオを抱きしめていた。
目が熱くぼやける。
リオには見せられない顔をしていると思う。
「....本当に、ありがとう。」
「どういたしまして、ですよ。」
もう僕は揺るがない。
一人じゃない。
隣にはリオがいる。
ここから目指そうーーー
チャンピオンを。