僕はチャンピオンを目指すと決めた。
けれど、その前に解かなければならない謎がある。
僕の記憶の中に、僕ではない"僕"の記憶があることだった。
少し前から違和感はあった。
まるでこの世界のことを、物語として見たことがあるような感覚。
それと同時に、この世界が僕の知っている世界とは少し違うと感じてしまったこと。
先日怪我をした日でも、
僕は「レパルダスに"はどうだん"が効果抜群」と言うことを話していた。
初めから知っていたかのように。
僕は戦闘しないようにそれらの知識と離れて過ごしていた。
僕がそんなことを知るはずがない。
それに、この様な妙な知識の数々は僕がポケモンバトルを怖がる以前から、自分の中にあった。
「(僕は.....本当に"僕"なのだろうか?)」
「主?何か考え事?」
僕がこの世界に感じた違和感の一つであり、僕を救ってくれた相棒。
"人の姿をしたポケモン"の1人であるルカリオのリオが首を傾げる。
「リオ、前から気になってたんだけど。
自分がどうして人の姿なのか考えたことある?」
リオが難しい顔をして答える。
「考えたことはあります。結局何もわからなかったですけど.....。」
うーん。
違和感の正体と僕の記憶の混濁に、
何か関連性があればと思ったけど。
リオが少し考える素振りをして、ほんの少しだけ渋々といった形で話す。
「それを聞くなら"ボックスに送っている子たち"にも一応聞くのは.....どうです?」
「!!」
その手があった。もしかしたら誰かしらヒントを握っているのかもしれない。
「ま、まぁ、私同様何も知らないと思いますけど!」
どこか少し嫌そうな気配を感じたが。
何かしらの進歩になるかもしれない。
まだほんの少し怪我の痛む体で、立ち上がり近くのポケモンセンターへ向かう。
「ありがとうございましたー。」
ポケモンセンターを後にして、ボックスから引き出したモンスターボールを投げ。"彼女達"を出す。
「.....ごしゅじーーん!!!」
と、最初にボールから出てきたオレンジ色のショートヘアー。
前髪の中央だけが淡い黄色に染まっている。もふもふのマフラーを巻いた。
身長が155cmほどの小柄ながら活発そうな少女。いや.....男の娘、
"ブースターのホムラ"が飛びついてきた。
「うわぁ!急にどうしたのホムラ!?」
「いやー。久しぶりに出た気がしたからね!」
「言っても、一週間前にも出て皆で話したでしょ。」
「まぁ、私も寂しかったのだけれど。」
そう言うのは、ホムラの後ろ。
身長が160cmほどで白い袴を桃色の帯で結び、雪のような白髪をなびかせた少女。
"ユキメノコのユキ"だった。
「やっほ、マスター。.....なんか、顔つき変わった?いや、良い意味でね。」
「なんだか、スッキリした顔になってる。」
ユキが歩み寄り、整った白くて綺麗な顔が覗き込む。
やけに近い。
「んー?確かにー?でも匂いは、変わらず良い匂いかなぁーー!」
ホムラが顔をぐりぐりしてくる。
ちょっと痛い。
「2人ともそこまでです!!」
と、距離が近いホムラとユキを引き剥がすようにリオが割って入る。
「リオちゃんは相変わらずだー。」
「えぇ、相変わらずね。リオ。」
どこかのほほんとしたホムラと、少しだけツンとした対応のユキを、見直してから話す。
「2人に聞きたいことがあったんだ、2人は.....人の姿になった理由や原因って覚えてる?」
少し間があり、
「んー?僕は特に覚えてないかなぁ。ご主人に会う前からこうだったしー。」
「えぇ、私も生まれた時から人の姿だった.....
それこそユキワラシの時からね。
それは昔、マスターもあの頃の私たちを見てるでしょう?」
そう。彼女達とリオ、それから僕は皆幼い頃からの仲だ。
だから、確かに出会った時から人の姿なことは知っている。
やはり情報はなかった。
けれど、2人を改めて見て確信した。
やはりこの世界は"僕"が知っていた世界とは違う。
そして、僕はその違和感を認識できていること。
一息吸い。
2人と、そばにいるリオにも目を向ける。
「3人に聞いてほしい。」
そうだ、僕はもう、決めたのだ。
自分の夢を追いかけて。強くなる。
誰も傷つけさせない為に。
「僕はチャンピオンを目指したい。」
「だからーー」
「僕と一緒に冒険してほしい!!」
三者三様の反応を見せる。
リオの感極まったような顔。
ホムラの無邪気に嬉しそうな顔。
ユキの目を見開いて驚いたような顔。
そしてーーー。
「もちろんです!どこまででも主と....。」
「やったー!喜んで!」
「むしろ、私を置いてなんて行かせないわよ。」
僕自身が抱く謎の答えは得られなかった。
けれどーーー
この旅のどこかで、答えを知れる。そんな気がする。
こうして、
僕は、旅の仲間を得た。