家に帰ると、妹のメイがリビングにいた。
「....あ、おにぃ。おかえり。」
少し気まずそうに目を逸らしていた。
そうだ。あの日バトルのお願いを先延ばしにしてから、
まともに話せていなかった。
今なら...あのお願いを受け入れるべきだと思った。
「ねぇ、メイ。よかったらなんだけどさ、僕と
ポケモンバトルしない?」
メイが大きく目を見開く。
驚いているようだ。
「.......え?」
固まった表情のまま言葉を繋ぐ。
「....おにぃ?本当にいいの?」
「うん。本当。」
「嘘じゃないんだよね?」
「嘘じゃないよ。ただ、心境の変化があったんだよ。」
「本当の本当?」
メイの声は、かすかに震えていた。
「....もう、逃げたりしない?」
答えは決まってる。
「もちろん。もう逃げない。」
真っ直ぐにメイの目を見る。
メイの肩がワナワナと震える。
「ど.....どうしよう。い、今から?今からバトルしても良いの!?」
少し興奮気味に、そして心底嬉しそうに詰め寄ってくる。
こんなに嬉しそうなメイの顔を見るのは、久しぶりだと思った。
メイの質問にすぐに頷く。
何度も断って、何度も誤魔化した。
それでもメイは声をかけてくれていた。
今までたくさん我慢させてきたんだ。
そのくらいは、我儘にもならない。
「やったぁー!!じゃあ、じゃあ、外のコートで待ってるね!」
モンスターボールを手に取り、外へ駆け出していった。
駆けて行く後ろ姿を見て、懐かしくて少し笑ってしまった。
ーーーーーーーーーー
外へ出て。庭にある約束のコートへ立つ。
ボールを握り、
いつでも準備万端と言わんばかりのメイが笑顔で待っていた。
「おにぃ!」
「言っておくけど。私、昔よりもずっとずーっと強くなってるからね!」
ボールをこちらにかざしている。
この時を待ち侘びたかのように。
「それは.....楽しみだ!」
今までならそんな感想出なかった。
いや、昔の僕なら言っていたかもしれない。
コートで行うまともなポケモンバトルは本当に久しぶりだった。
吹っ切れたからか、今までの恐怖心が嘘のように体が軽い。
全身の血が巡るのを感じる。
「行くよ!おにぃ!!」
「うん、こっちこそ!!」
僕とメイが同時にボールを投げる!!
「行け!ユキ!」
「任せたよ!ジャローダ!!」
それぞれのボールから、
強気に笑う雪のように白い少女と、
緑の凛とした大蛇がコートに立つ。
もう逃げない。
目を晒したりしない。
今から始めよう!!
僕たちの......
ポケモンバトルを!