全員にアポイントを取った後、午前中の授業も終わり、今僕は莉乃、陽菜、美月を空き教室の机に座らせている。全員が何とも言えない表情でこちらを見てくる。
「ねえ、誠司、なんでわたしだけじゃなくて、莉乃ちゃんと美月ちゃんもいるの?」
「陽菜さんの言う通りです。誠司君以外がいるなんて聞いていません。」
「言っていないからな。」
「じゃあ言っておいてください!生徒会の時はちゃんと報連相してるじゃないですか!」
「ふ、二人とも、落ち着いて。」
「莉乃さんは落ち着いていられるんですか!?」
「正直すごく混乱してるんだけど、一回誠司君の話を聞いたほうがいいんじゃないかな?」
美月は渋々といった感じで勢いを収めた。
「ありがとう、莉乃。まず3人ともここに集められた理由はそれぞれわかっているな。」
「…。」
「…。」
「うん、わかってるよ!だから気になるんだけど、なんでわたしだけじゃないの?」
陽菜以外はうつむいている。
「ここに集められている時点でお互い察しはつくと思うが、いったん話をまとめやすくするために昨日あったことをすべて話す。」
僕がこのことを言った瞬間、莉乃と美月の顔が青くなる。
「ま、待って」
「いや、待たない。」
「まず昨日、始業式の後僕は莉乃の家に行った。そこで僕は莉乃に監禁された。」
「え?」
「そうそう、そうだよねー。」
「なんで陽菜ちゃんは知ってるの!」
「だって見てたし。」
「見られてたの!?」
「話を戻そう。その後僕は脱出し家に帰っている最中に陽菜に襲われ誘拐された。」
「え!?」「え!?」
「も~~誘拐だなんて人聞きが悪いなあ。莉乃ちゃんが閉じ込めてたからそれやっていいんだって思ってやっただけだよ~。」
「監禁した私が言うのもあれだけど…さすがにそれは…。」
「陽菜さん、あなたは何をやっているんですか?」
「何さーその言い方!」
「そして美月。」
「あ」
「君は去年の夏から僕にGPSをつけ、さらには盗聴器や隠しカメラを僕の部屋に設置していたようだな。」
「うわーー…。」
「美月ちゃんそんなことやってたのにさっき自分のこと棚に上げてたの?」
「もう殺してください…。」
***
陽菜以外はすでに疲れた様子だ。
「それよりも誠司!つきっきりでわたしのことを見てくれるって話じゃなかったの!」
「ああ、君たち3人につきっきりだろう。」
「なにそれー!わたし二人っきりだと思ってたんだけど!」
「誤解を招いたことは謝ろう。けれど君たちはそんなことを言える立場だろうか?」
「むぅー」
陽菜もようやく渋々といった感じで座った。
「まず僕が君たちをひとまとめにしたのには理由がある。それは君たちのやらかしの根本的な原因が似通っているからだ。」
僕がそういうと3人は顔を見合わせる。互いに何かを察したようだ。
「君たちが普段さっき言ったような暴走をする人ではないということは理解している。だからこそ君たちには自分の感情を行動と分けて考えることを覚えてもらう必要がある。」
僕の身を守るためにも。
「誠司君、それはわかったのですがなぜさっき私たちがやったことをわざわざ暴露したのですか?」
「自分だけがやばいことをやっていると思っていては気が重いだろう。安心してほしいのはほかの人物には一切このようなことは言っていない。」
「そこは信用していますが…。」
「実際に、聞いた時に自分だけじゃなかったって思っただろう。」
「否定できませんね…。」
「私もそうだね…。」
「わたしは別にどっちでもよかったんだけど~。」
「そんな風に思うのは陽菜ちゃんだけだよ…。」
「続きを話そう。加えてお互いに何をやらかしたのかは事前に理解しておいてもらう必要があった。」
「それは、なぜでしょうか?」
「今から君たち3人にはお互いにやらかしたこと、それを行ってしまった理由、それぞれを互いに話し合ってもらって問題分析してもらう。」
静寂が流れる。
「自分で、言うんですか?」
「ああ、大まかにはさっき僕が言った通りだが、詳細まで話してもらう。今日の昼中に終わるだなんて思っていないから、これをしばらく続けるぞ。」
「それはちょっと、抵抗感があるというか…。」
「抵抗感があるならなおさらだ。自分がやったことに問題意識を覚えているということだろう。ならば第三者視点でその問題点を洗い出させるべきだ。」
「ぐうの音も出ない…。」
「其れに言う相手はカウンセラーや教師、まして警察ですらない。友人かつ自分と同じようなやらかしをした相手だ。同じようなことをしてしまった相手からの言葉のほうがより分かりやすいだろう。」
「なるほどーじゃあわたしから話すね!」
「すごいね陽菜ちゃん…。」
「私もさすがにすぐに自分のしたことは話せません…。」
「えぇー?そんな大変なことじゃないけどなあー。とりあえず話せばいいんだよね。ええっとまずはねー、去年の秋くらいから帰り道で誠司のことを追いかけまわしてたんだ~。」
「待ってください、誘拐の話ではないのですか?」
「もう美月ちゃん人の話は最後まで聞くものだよ!」
「今のを聞いて黙ってられる人なんていないよ…。」
「それでね、昨日もいつも通り誠司の後ろを歩いてたんだけど、誠司が莉乃ちゃんちに入っていくからもうびっくりしちゃって、窓から陽菜ちゃんちのリビングを見てたんだよね。」
「庭まで入られてたの?」
「そしたら莉乃ちゃんが誠司を眠らせて地下に運んでくのが見えたから、ああ、それやっていいんだって思って急いで家に帰って誠司を眠らせて家に連れて帰るためにバールを」
「待ってください、普通警察を呼ぶところですよね!あと今なんて言いましたか!?バール!?」
「え、誠司くんさっき殴られたって言ってたよね!まさかバールで殴られたの!?」
「どうやらそういうことらしいな。何で殴られたかはあまり覚えていない。」
「誠司なら大丈夫でしょって思ってねー。」
「大丈夫でしょって、そんなことされたら普通死にますよ!」
「まあまあ落ち着いて~。それでねそのあと近かったから家まで連れて帰って私がいつも友達と遊んでる部屋に閉じ込めたんだけど~」
「ああ、あそこですか。」
「結構広いよね。」
「待て。」
「ん?どうしたの誠司。」
「あの網膜認証が付いた部屋でいつも遊んでいたのか?」
「そうだよ。」
「なぜ二人は全く驚いていない。」
「だってねえ。」
「あそこなら何度か行きましたし。」
「僕は行ったことがないぞ。そもそも何であんな部屋があるんだ。」
「だって、誠司は特別だからーってもう何言わせるの!後、何であるのかはあとで教えてあげるね♡」
「それで話の続きだけど、閉じ込めるならそこがいいかなって思って一緒に部屋に入ったんだけど、その後誠司が私をお姫様抱っこしてくれてー」
「は?」
「は?」
「二人とも怖い顔しないで!で、そのあと誠司にあの扉を捻じ曲げられちゃって、リビングでいろいろ話して今日ここに来たって感じだよ。」
「待ってください。捻じ曲げたんですか?」
「うん。さすがにあれはびっくりしたなー」
「まあ誠司くんならできるかも。」
「莉乃さん!?何を言っているんですか!?」
***
改めて陽菜の行いを振り返ると異常としか言えないな。
「聞いているだけでもどっと疲れました。」
「結局なんで陽菜ちゃんはそんなことしたの?」
「さっきも言ったじゃん莉乃ちゃんが監禁してたからって」
「そうじゃなくて、その、私がやったみたいなことしなくても陽菜ちゃんなら普通に誘えばよかったんじゃ。」
「ああ、そういうことね。それはもちろん誠司とずっと一緒にいたかったからだよ!だって誠司にずっと私の近くだけにいてって言っても絶対聞いてくれないから、閉じ込めていいんだったら無理やり連れて帰って閉じ込めたほうが早いだろうなって思ったんだ。」
まずい、二人がドン引きしている。お前らがやったことも相当だぞ。
いったんここで切って後に回そう。
「ゴホンッ!いったん今日の昼はここまでだ。今日の放課後は残れるか?」
「陸上部の前に少しだけなら、残れるよ。」
「わたしもいけるよー!」
「私も今日は生徒会がないので、時間ならあります。」
「分かった。じゃあ今日の放課後30分ほど時間をとろう。そこで今回の続きだ。」
「オッケー!」「分かりました。」「うん…。」
***
「先生に今日は遅れるって連絡しておかないと…。」
「それにしても莉乃さんが人を監禁するだなんて、思ってませんでした。」
「それを言うなら、美月ちゃんが人の家に勝手にカメラをつけたり盗聴器をつけたりGPSをつけたりしてるだなんて思わなかったよ。」
「それを言われると痛いですね。」
空き教室の中からは女の子と天海君の会話が聞こえてくる。
なんで?
なんで?私はあそこにいないの?
天海君が遅れるって言ってたのもあの子たちとの用事なの?
教えてよ、天海君…。
あと4話ほどでプロローグは終わりの予定です。