レッドウィンターの商人 作:あいう
シュロは目を疑う。私が書いた怪談ではない。正体不明の怪談が1人の人間を呑み込んだ。
シュロは逃げたかった。尻餅をついたので、手すりを握って立ち上がろうとした。
シュロは恐怖を知った。冷く固い鉄の感触……ではなかった。いま握っているこれは、まるで死人の手のようだと考えた。恐る恐る、顔を上げてみる。先程まで200mは先にいたあの怪談が私に向かって笑いかけていた。
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暗闇に浮かんでいると、なんか来た。それは小さい子供であった。今にも泣き出しそうだったので、話相手になった。私たち以外に人間はいなかった。極稀に4世代前のスマートフォンや右手が漂ってきた。
「ねぇねぇシュロちゃん……みてこれ」
シュロに手元が見えないほどに接近したあと、死角から肩に『右手』を置いた、
「ひぃっ!……きゅぅ」
びっくりして意識を失ってしまったらしい。やっぱ子供じゃん。あんなに大人アピールしてたのに……
私が護らないといけないと思った。ここから出る手段を考えようと今ある所持品を確認する。
スマホ、財布、鍵、小説、茶、サプリメント、時代遅れのスマホ、右手、シュロ……
こんなもんか……これだけで脱出は難しい。そういえば、シュロを探っていなかったなと思い出し、体を弄った。
するってえと、手帳やスマホ、財布やサイン用紙&ペンがあった。中でも興味を持ったのは、この手帳だ。ガキが手帳なんて書くはずがない。こいつ……どっかから盗んできたなと思い、中身を興味本位で確認する。
中身は、真っ白だった。だが、これはなんだ。瘴気が滲み出ている。疑問が残るがこれはなんだ。ちょうどペンもあるので、少し書き込んでみよう。
内容は……どうしよ。ここから華麗に脱出するという夢物語でいいか。
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なんか脱出できた。それに感激していると、シュロが目を覚ます。怖かったと私の腕に抱きついてくるそれは、なんと形容すればいいのかわからないが、心温まる出来事だった。
で、ここは何処なんだ。
手を繋いでシュロと10分程歩くと、街が見えてきた。やった、と喜びの声を漏らした。シュロと一緒にハイタッチをしたあと、解散をした。
百花繚乱の元に行くと、すごい慌てた様子で歓迎される。
「なっ、アンタなにしてたの、この3日間!」
「え、3日?」
あの異空間での時間の進みは現実とズレが発生しているようだった。ユカリやナグサはいないのかと聞くと、私を探しに行ってる最中だという。
「それは……いやでも私悪くないし」
「あっそ、……それで何があったの」
簡単に説明した。
「……それは、急速に解決しないとまずいね」
アルビノ少女の声が聞こえた。帰ってきてたのか、そう思いながら無視をすると、腹に圧迫感を感じた。
「なに!いま重要な話してんだけど!」
「……私も重要な話したんだけど。」
ムッとした顔で、腹をもっと絞め上げた。ぐふっと声を出すと、「なにやってんの?」とキキョウがキレたので、真面目に話した。
「それで、かの百蓮なら退治できるらしいが……アヤメ委員長は戻ってきたのか?」
「ううん……アヤメはまだ帰ってきてない。でも……まぁ大丈夫。私が正式……ではないけど所有者として認められたから。」
「そう、今はナグサ委員長になった。……そういえばユカリは?」キキョウは思い出したかのように、辺りを見回した。
「なんか、勘解由小路家の者に連れていかれてたよ……」
「勘解由小路……?」
長すぎだろ
「そういえば、アンタは知らなかったかもね。ユカリの実家は百鬼夜行でも有数の名家なのよ。」
「……ぁー、どっかで聞いたことあると思ったらね。」
「……そんなどうでもいい嘘ついたって意味ないよ。」
ナグサに正論パンチで殴られた。
「……まぁいいや、それでどうする……百蓮以外に手段がないのであれば、かなり窮地を強いられるけど」
「……それに関しては1つ案がある。ドスト……あんたが囮をやりなさい。その間に委員長が撃ち抜くから。それでいい?」
「いいんじゃない?」
ナグサは自分に危害がないからか、すぐに賛成の意を示した。
「いや、ダメでしょ……私の……ね、安全が……ね?」
許さないぞ……
生意気ナグサとキキョウを……!