レッドウィンターの商人 作:あいう
トントントントンとトントン拍子に事が上手く進んだ。唾が口の中に貯まり、ナグサが怪異を倒したことをこの目で確認したあと、ごっ、と音を立てながら飲み込んだ。
怪異から走って逃げたこの足に限界が訪れた。ナグサとユカリ、レンゲとキキョウがこっちに向かって駆け寄ってくるのが見える。しかし、それを待ち、一緒に祝賀会を開く元気が1フェムトも残ってなかった。
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朝、目覚めるとナグサを抱き枕にしていたことに気がつく。比較的涼しい地に土地を構え、比較的涼しい気候の百鬼夜行だ。しかし、2人一緒にくっついて眠っていたため、汗ばんでいた。昨日も風呂に入ってなかったので、酷い匂いなのだろう。そう思っていつの間にか着せられていたパジャマの匂いを嗅いだ。しかし、柔軟剤の匂いとナグサがもつ特徴的な匂いだけだった。まさか?ボヤけた視力の中、下着を確認すると、昨日まで履いていたものではなくなっていた。
「おい、ナグサ……起きなさい。」
むにゃむにゃと寝ぼけているナグサの頬を抓る。やめてぇ、と弱々しく、呟く様に懇願するもんだったので、手放してやった。
「ひどい……ぁぁ、おはよう。言ってなかったね」
あぁ、私も言うのを忘れていた。「おはよう」と返した。
その後は、身支度を済ませたあと百花繚乱全員と飯をご一緒させていただく。昨日の顛末を聞かされる。あの不気味な笑みやあの恐怖を別に思い出したくもないのだが、聞かされる以上、キチンと返事を考えなくてはいけない。そうおもっていると、キキョウに心配される。
「ねぇ、なんか雰囲気違くない?」
「……寝起きだからな。」
「身共も言うべきなのか迷ってました!」
「……寝起きだからな。」
「ふぅーん……そうなんだ。さっき顔を浴びてたのに?」レンゲに馬鹿にされている感がした。
「……寝起きだからな。」
「定型文?」最後の最後にアルビノは口を開いた。
「そうだ。」
「いやそこは、寝起きだからなって言えよ。」レンゲに突っ込まれる。
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完全に目を覚ました私は、ここで気がついた。あの霊が所有していた右手をナグサに見せていないことに。畳の部屋で右手を眺めていると、コンコンコンと戸が叩かれる。返事もする間もなく入り込んでこようとしてきたので、右手を隠す時間など、存在するわけがなかった。思わず手から離れ、口の中に入ってしまう。
「勘解由小路ユカリ……ここにさんじょッ!?!????」
最悪だ、異常性癖の殺人鬼に重ねられているのがわかる。
「まて、誤解だ!……動くんじゃあない!今から君を口封じしなければ……おい、まてっ!」
ユカリは戸を勢いよく閉めると、ドタドタと足音をたてながら、キキョウ達の名を呼び続けた。
「キキョウせんぱーーーい!!!、レンゲせんぱーーーい!!!、いいんちょーーーう!!!助けてくださいましーーー」
「誤解だァァァァァァァ」
ユカリとの距離が一向に縮まらない。この騒ぎで何人かの生徒が集まってきてしまう。とっとと捕まえて訂正させないと……私の今後のレッテルが酷いことになってしまう。
「まて、誤解なんだ、!」
「何が誤解ですかっ!口の中に……て、手を突っ込んでいたじゃありませんか!」
「それを口に出すなぁぁぁぁあ!」
「ひぃぃぃ……!」
屋敷をドタバタと走り回っていると、外が騒がしくなった。私が気がつくということは、ユカリも気がつくということ。こっからは読み合いだ。悪事を晒すという行為を防ぐための読み合いだ。読み合い……いや晒し合いだ。
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私は石が乱雑に飛び散っている場所に正座させられ、ユカリは畳に、ナグサは体制を崩したら川に落ちる場所に。
弁明を聞こうかと言われたので、素直に話した。
「黄昏でコレをゲットしました。これをどうするべきか迷っていると、ユカリが急に部屋に入ってくるもんで、手から滑り落ちてしまったんです!」
「なるほど……そしてそのまま口の中に入ってしまったと……まぁユカリも反省しているようなので、許してやってよ」
「はっ、仰せのままに」
「で、ナグサ先輩……なんで言ってくれなかったの?」
はっ!あいつ終わったな……
え、なんかすごい早く書き終わった。