レッドウィンターの商人 作:あいう
が、さすがにね。書くんだったら、レンゲです。
嗚咽を漏らしながら、ポケットに手を入れてハンカチを探そうとしたが、体が震えていて中々ハンカチを取り出せなかった。這いよりながらドストの下に近づいたあと、足を両腕で抱きついた。
「ぇ゛ええ゛ーーん゛!きっ、すっ……キキョウが……ワァァァァァァァァァ」
「……うるっせぇぞ!このガキ、離せ!」
「ゥゥゥゥゥ……、ヤダ!やだやだやだやだァァァ……やだよォ」
自分でも情けないと思えるほどに、人から離れたくなかった。初めておもちゃを与えられた子供のようにギュッと力を込めた。
あまりに惨めだったのか、これ以上百花繚乱の格を下げたくなかったのかは不明だが、腹這いになっている私に対してドストは、ひっくり返したあと膝と背中に手を入れたあと、姫様抱っこをして私の部屋へと運び込んだ。布団を足で敷いた後、私をそこに横たわらせる。その顔は母親のようであり姉のようであった。これでいいかと呟いたあと、部屋から出ていこうとしたので、待ってと言いながら、足を掴んだ。すると優しさを投げつけてくる。「お前も泣き疲れて、腹減っただろ、なんか持ってくるから、待ってろ。」と言われた。
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あれ以上、百花繚乱の格を下げたくなかった。ナグサを布団に放り投げたあと、逃げる準備をするとキキョウに邪魔をされる。
「あんたがナグサ先輩の面倒を見なさい……!」
「……???わたしぃ?……お前がやれや!」
「…………私は、事態の収拾に忙しいから……あ、それと逃げられないようにスマホと銃はこっちで預かっとくから」
キキョウが走り去っていく。その背中に呪詛を投げつけたかった。面倒だ、とても。そう思いながら、台所に足を運んだあと昔ながらの薬罐で湯を沸かし、急須と茶葉と菓子を探した。
探している間に視線を感じたので、そっちをチラリと流しみると、ナグサだった。分離不安症かな?と心の中でバカにしながら、お盆に色々と載せた。そうすると、トタトタと去っていく音が聞こえた。
部屋まで少しゆっくりと歩いた。それはナグサに対する嫌がらせでもあった。
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ナグサ……おまえ……
アヤメは失望の感情よりも先に、驚嘆していた。人間ここまで情けなくなれるものなのかと。ナグサの弱さは、ずっと前から知っていたはずだ。が、ここまでとは理解してなかった。
ドストという人間に甘えに甘え、飼い主と離れるとすぐに騒ぎ立てる分離不安症の犬によく似ていた。
アザミに見せられたそれを見た私はこう思った。
えー、……えー、会いたくないんだけど。
ナグサを惨めにするのは簡単ですね。クロールを習得するより簡単でした。