本能寺の変をネタに全振りしたらこうなった   作:垂直離着陸式扇風機

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全力でバカなことを考えて、
全力でストーリーが壊れないようバカなことを抑え込む

それってつまり、二度手間だよね



本能寺の変の前日から当日(織田信長編)

 ア・ケーチがジェンガの会を開いた翌月、出発の日がやってきた。

 

 戦の応援であるゆえ、人数が多い。

 出発の儀式をおこない、飯を食い、全員が城を出れたのは高かった日がだいぶ傾いたころであった。

 

「ただ歩くだけというのも、つまらんなあ」

 こう言いだす者もいた。

 

「オンタイ・ショーの激励でもあれば、もっとやる気も出るのだが」

 まったくまったくと同意する声もある。

 

 このへんまでであれば、我々の知る世界でもありえたことかも知れぬ。

 しかしながら、これは別の世界の話である。

 

 別のことが起きても何ら不思議なわけではない。

 

 例えば、

 

「よおし、ひとっ走りして激励の言葉をもらってくるか」

 などと張り切ってしまう者がいたり、

 

「そいつはいい。早速頼むわ」

 などと言って、快く送り出す者がいたりするのである。

 

 列を抜けてしまうのはマズいでしょ、と思うのが当然ではあるのだが。

 ノリと勢いでできたことにすればできたことになってしまうのが、別の世界の話だったりするのである。

 

 そんなわけで。

 数人ばかりが京のほうへと走っていった。

 

 オンタイ・ショーがどこにいるかは知らない。

 

 まあ、会えなかったら会えなかったでどうにかするさ。

 そういう連中だからこその行動であった。

 

 ところで。

 別のところでは、別の理由で京に走る者がいた。

 

「ア・ケーチ殿が留守の間、どうぞよろしくと挨拶しておくぞ」

 と、決めた商人。

 

「オレらが採ったウマいものを食べてもらわねば」

 と、考えた近隣の者。

 

「オンタイ・ショーが出発するところでも見物にいくか」

 と、思いついた暇人。

 

 理由は様々であるが、あちらこちらからあちらこちらを尋ねまわってホン・ノージへと向かう者が京の街に集まり始めた。

 互いに互いを知らぬまま、同じ道を行く者も増えてきた。

 

 相手がどこに向かっているかは知らない。

 だが、道の先のどこかにはホン・ノージがある。

 

 急げばオンタイ・ショーに会える、というわけではない。

 しかし、急がねば会える機会すら逃してしまう。

 

 ならば急がねば。

 横を行く者よりも、一歩でも早く。

 

 競争に夢中になりすぎてそもそもの目的すらも忘れたまま、大勢がホン・ノージの門へと押し寄せた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 日付の変わった翌日の朝。

 門の前で見張りをしていた者たちが、大急ぎでオンタイ・ショーの付き人のところに走ってきた。

 

「よくわかんねえけど、やべえヤツらが集まってきました」

 

 言っていることの意味がわからな過ぎて、付き人は門の向こう側がわかる場所に急ぐ。

 

 松明の火らしき明かりの周り以外は、暗くてわからない。

 明かりの周りでさえも、よくわからない。

 

 わかるのは大勢がバラバラに何やら騒いでいることと、無理やり門を開けようとしていることくらいだ。

 

 付き人は、確認できた範囲のことを報告するためにそこを離れた。

 離れようとした。

 

 突然、大きな音が門のほうから響いた。

 

 門を開けようとした者の何人かが、気合を入れようと着ていた服を引きちぎった音であった。

 しかし、それが見えなかった付き人はテッポーを連射した音だと勘違いした。

 

 付き人はオンタイ・ショーの部屋に急いだ。

 部屋の前で座り、フスマの奥に届くよう大声を出した。

 

「申し上げます! 怪しき者らがここに押し入ろうとしております!」

「何者か」

 

 オンタイ・ショーのそばにいる別の付き人の声が問うた。

 

「わかりませぬ。が、数と様子からして、ア・ケーチ殿の手勢であるかと」

 

 状況からして当然の判断であった。

 大勢を動かすことのできる者が京の近くに、オンタイ・ショーの身内の他にいるかと考えれば、ア・ケーチ以外の名前を出すほうが難しかった。

 

 目的もバラバラの連中が、とにかく会いたい一心でホン・ノージの門を開けようとしているなどと、絶対にありえないようなことをとっさに口に出す想像力を求めるのは酷を通り越して無理難題ですらあった。

 

 さらに言えば、これが実際の歴史で起きたことだと言い張るつもりが作者にもなかった。

 それどころか、まさかこんなデタラメ信じる人がいるわけないでしょなどと、勝手に信じ込んでいた。

 

 もちろん、他人から軽蔑されたり罵られたりしたくて言ったり言わせたりする者が皆無である、とまで決めつけることはできない。

 世の中は広いのである。

 

 そのようなことが起きるとすれば、例えば世の中を創造した何かがいるとすれば、世の中は個人の想像など及ばないくらいの奇跡に満ち溢れるよう仕上げられたのだろう、と思うくらいはできるのである。

 何書いているのかよくわからなくなっているが、そういうことである。

 

 それはさておき、あれやこれやをすっ飛ばしてオンタイ・ショーはホン・ノージの庭に出た。

 門はすでに押し開けられ、大勢が入り込んでいた。

 

「あれは」

 

 などと叫ぶ大勢の頭上に、オンタイ・ショーが手にしたテッポーが放たれた。

 一瞬静まり返った大勢の中から、別の声があがりだした。

 

「ノブ・ナーガ様か?」

「ノブ・ナーガ様じゃね?」

 

 あちらこちらの声は戸惑い気味だった。

 

 つまり。

 テッポーを放ったのがノブ・ナーガかどうか、誰もわからなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 朝の光が空をようやく明るくし始めたころであった。

 照らしている松明だけでは、互いに互いの姿を見分けるのも困難であった。

 

 付き人らもそれに気がついた。

 何人もが松明に火をつけ、オンタイ・ショーの姿がわかるよう照らした。

 

「え? ホントにノブ・ナーガ様?」

「うん、あれはたぶんノブ・ナーガ様だろ」

 

 半ば納得、半ば言い聞かせるような言葉が続いた。

 

「オンタイ・ショーっ!」

 

 大勢の中の一人が、突然そう叫びながら走り出した。

 どうするつもりなのかは誰にもわからなかった。

 

 もしかしたら過去にあった作品の、甲斐の拳で語り合うBASARAな主従に関係していたのかも知れない。

 そのあたりは不明であるが、しかし。

 

 ノブ・ナーガの反応は、想像を超えて早く、速かった。

 テッポーの弾丸が出るほうを両手でつかむと、走り出した人物の伸ばした腕の下に潜り込み。

 

「頭が高ぁいっ!」

 

 一声怒鳴ると、力一杯腹を目指して降り抜いた。

 

 快音が響いた。

 ナイスショットであった。

 

 シリーズものになったサメ映画のラストなチェーンソー予告で、飛んできたサメを打ち返したかような。

 その予告を初めて見た人が、自分が何を見ているか理解できるとは思えないような。

 

 そんな光景であった。

 

 とにかく。

 ノブ・ナーガは突っ込んでくる相手を、ものの見事にかっ飛ばした。

 

 大勢のうちの何人かが、飛んだ人物の行く先を追おうとしてあきらめたほどの。

 完璧な一撃であった。

 

「さすが(産地名)、手に馴染む」

 

 と、でも言えばキャッチコピーに使えたかも知れない。

 今宵の虎徹がどうとかと同じように。

 

 ノブ・ナーガは言わなかった。

 話の都合のせいであった。

 

 代わりにこう言った。

 

「ぅごりゃあっ!」

 

 しばらくの間、沈黙が空間を支配した。

 

 誰も意味がわからなかった。

 付き人の中には、わごりょらと言おうとして失敗なされた、と思う者がいたかも知れない。

 

 しかしながら、それは本人に確認しなければわからぬことであるし。

 今この状態での質問は、付き人であってもやりづらかった。

 

 しばらくして。

 気まずくなったのか、ノブ・ナーガは一つ咳払いをした。

 

「ワシャの。寝入ったところを起こされて機嫌が悪い」

 

 少しばかり甲高い声であった。

 

「よう考えて行動せい」

 

 わざわざ説明してくれたようであった。

 尻尾で地面を1つ叩いての言葉であった。

 

 尻尾である。

 蛇に似た尻尾である。

 

 ノブ・ナーガは、ナーガの姿であった。

 

 半熟英雄という遊戯ゲームにノブナーガというキャラクターがいるのだが、姿かたちは違っている。

 ナーガを画像検索したら足があるタイプとないタイプの両方がいるらしいのだが、どちらのタイプなのだろうと悩んでいるくらいだから、たぶん姿は違っている。

 

 どうしてナーガの姿なのかと問われると、オー・ケーハザ・マーの回想が入るのである。

 なお、このシーンはカットしても問題ないのである。

 

 とにかく、後にそう呼ばれる戦いに向かうにあたり、ノブ・ナーガはアッ・タージン・グーに向かったのである。

 そして必勝祈願をした途端、光に包まれたのである。

 

 力が欲しいかと問われたのか、力を授けましょうと言われたのかまではわからない。

 しかし光が消えた時そこにいたのは、蛇に似た尻尾のついたノブ・ナーガだった。

 

 そして戦いの直前、ナーガの力で天候を操り、雨を降らせたのだ。

 

 もちろん、この世界での話。

 フィクションの話である。

 

 他人に常識のある人と思ってもらいたいならば、史実であるかのように語らないほうがよろしい。

 

 ところで。

 それを見た人々は驚かなかったのかと不思議に思う人もいるかも知れない。

 

 驚いた人もいるだろう。

 しかし、だからと言ってその場で害しようとはしないのは奇跡話のお約束である。

 

「そういうこともあるだろう」

 とか、

 

「実に見違えられたものだ」

 とか、

 

「これくらいのことができねば、殿と呼ばれるようにはなれぬということか」

 とか。

 

 都合よく納得してしまったのだろう。

 だから気にしないでおこう。

 

 回想終わり。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 さて。

 

「オンタイ・ショー」

 

 ノブ・ナーガの言葉を聞いた一人が、三歩ほど前に出て両膝をついた。

 一礼をして言った。

 

「スーモーで勝ちましたら、願いを聞いていただけますか」

 

 またしてもしばらくの間、沈黙が周囲を支配した。

 

 その場には、何を言っているのかわかった人はどれくらいいたのだろうか。

 読んでいる人の中でわかった人はどれくらいいるのだろうか。

 

 作者にはわからない。

 作者自身もどうしてそうしたのかがわからない。

 

 書いたのは確かなのだが、読み返してもどうしてそうしたのかまったく覚えがない。

 

 たぶん、とっさに思いついたからとりあえず言ってみたんだろうな、とは思う。

 それくらい理解不能な展開であった。

 

 ややあって。

 ノブ・ナーガは、手にしたテッポーを付き人に渡した。

 

 両腕を上着の中に引っ込め、交差させるように襟から出してもろ肌脱ぎになった。

 そして言った。

 

「是非に及ばぁずっ!」

 

 仕方がない、という意味である。

 ノブ・ナーガはスーモーが大好きなのである。

 

 スーモーとは、実際の世界にある相撲のようなものである。

 もちろん相撲とは違う。

 

 機動戦士なあのシリーズの、アルファベットのAが上下逆になったあの作品に登場しているアレとも違う。

 そのシリーズに登場する丸いアレに両手両足両目がついたような、黄緑色の、不動産情報関係のマスコットキャラクターとも違う。

 

 スーモーとはそのようなものである。

 そしてスーモーすると決まったならば、ただちにスーモーするのにふさわしい場を用意するべく動くのがその場にいる者にふさわしい態度である。

 

 是非に及ばず、である。

 スーモーあるのみ、である。

 

 ゆえに、そこに集まった者たちはノブ・ナーガも含めてスーモーの用意をしようとした。

 しかし。

 

「ああっ、建物が!」

 

 突然、そのような叫びがあがった。

 

 ノブ・ナーガの宿泊していた建物から煙があがっていた。

 どうやら失火のようであった。

 

「ぬああっ! ワシの大事な宝物があっ!」

 

 ノブ・ナーガは大急ぎで建物の中に突っ込んでいった。

 慌てすぎて、ナーガの力を使うことを忘れていた。

 

 建物の中で叫びのような、悲鳴のような声があがったようだった。

 だが、ほとんど同時に建物を覆った火の燃える音との区別もつかなかった。

 

 すでに明るくなった天に昇る煙の中に人のような、大きな蛇のような影が見えたように思えた。

 どうしようもなく見守る大勢の前で、建物は燃え落ちていった。

 




第3話は18時
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