本能寺の変をネタに全振りしたらこうなった 作:垂直離着陸式扇風機
突然ある人物が跳ね起きた。
名をヤースケ・イチタマ・リアーという。
実際の世界の弥助が元ネタだが、この世界のヤースケも原形をとどめないほど改変されている。
そもそも、イチタマ・リアーって何だよ。
そうなった理由はある。
弥助と名前がついた人物のほかにも名前をつけられたいるだろうとの推測から、ユースケとヨースケがいることにした。
そして。
そう言えばユースケ・サンタマリアってタレントがいたなあ、と唐突に思い出したのである。
ユースケがウ行でサンなら、ヤースケはア行だからイチだなと。
そういう感じで決まったのである。
ヤースケはカブール人である。
実際のほうではカフル人と記されているようだが、こちらのほうではカブール人である。
もちろん、そうなった理由はある。
こちらのきっかけは、作者が弥助の出身地ってマダガスカルだったっけと調べようとしたことにある。
おそらくは、マンダロリアンという言葉が記憶に残っていてそうなったのではないかと思われる。
そんなわけで、この世界のヤースケは体を金属のヨロイで覆い、目、口、鼻の部分を黒い何かで覆う金属のカブトをカブールしたカブール人なのである。
さらに言うなら、マダガスカルと間違えたついででマンダガスカルにいたことにしたのである。
マダガスカルはカートゥーン映画のほうだったりもする。
正真正銘、疑うまでもなくただの思いつきである。
深く考えてはいけない。
「ヤースケ、起きていたか」
そのようなところにもう一人、人物が現れた。
普通の人の声と、甲高い声の間のような声だった。
ナーガー・マースである。
ノブ・ナーガの一族である。
ナーガの姿にはなっていない。
発音が似ているセーラーなマースの姿もしていない。
機動戦士のセイラなマスの姿でもない。
その姿をしている場合と、そうでない場合のどちらがより少ない不興で済むかはひとまず置く。
だが、その姿を見たヤースケ(マンダロリアン装束)の反応は、B級のホラー映画などで理不尽な状況に遭わされた登場人物が半分笑い、半分泣いているような表情をしている時の仕草と口調そのままであった。
「カンベンしてください」
ナーガー・マースが目上ということもあってか、それなりに丁寧な言葉づかいであった。
「パロディやりたいならダレでもわかるようなモトネタにすればいいでしょうに、どうしてそこでそういうのするんですか」
なお、このシーンには解説があったりするのである。*1
「言うな。是非に及ばずじゃ」
ナーガー・マースは簡潔に言って、ついてくるよう合図した。
そして、建物の最上階から外を見せた。
庭が広がっている。
通路のように狭くなっている部分には、鉄条網が設置されている。
坂道の上には、ダルマがいくつも置かれている。
隅のほうには、車とバイクもある。
「いや、これ Yasuke Simulat……」
「言うでない!」
ナーガー・マースは念を押した。
「乗って外に出たら首都高バトル風にしたいところじゃったが、京都市内に首都高速はないのじゃ」
「じゃあ、作ろうか?」
「牛車が並んで走れるやつ?」
「ターボチャージャーは載せとかないとね」
「バーバヤーガの小屋みたいにして、足で走ってもいいよねー」
どこかのアイドル(?)たちならそのようなやり取りをしそうではある。
作者が知らないだけで、フィクションのほうではとうの昔に誰かがやっているのではないかとも思う。
それはともかくとして。
「いつのまにこんなことに」
と、ヤースケ(マンダロリアン装束)が不思議に思ったのも当然のことである。
それに対してナーガー・マースは、
「夜も暗いうちによくわからん者らがやってきたのじゃ」
と、説明を始めるのである。
ホン・ノージに大勢の人が押し寄せる同じ日の、まだ夜中を過ぎたころ。
数人の人物が訪れていた。
「あのー、オンタイ・ショーはここにおるんでしょうか?」
ア・ケーチの軍勢の中から抜け出た者たちであった。
あちらこちらに尋ねながらここまでやって来たようであった。
「オンタイ・ショーとは誰のことか?」
見張りをしていた者はいぶかしげに問うた。
しかし、
「オンタイ・ショーはオンタイ・ショーですが」
「だから、オンタイ・ショーの名前はと聞いている」
「え?」
「え?」
両者の間に会話は成立しなかった。
ア・ケーチの軍勢の中から抜け出た者たちからすれば、偉い人は皆オンタイ・ショーであった。
そう言っておけば、いちいち名前を覚えなくて済んでいた。
名前を出さねばならないとも考えていなかった。
そういうノリで生きている者たちであった。
沈黙を破ったのは、近くを通り過ぎた者たちの声であった。
「おい、ノブ・ナーガ殿の宿所はこっちでいいのか?」
「ああ、もっと向こうじゃ。急げ!」
ア・ケーチの軍勢の中から抜け出た者は、頭を寄せ集めた。
「なあ。オンタイ・ショーってのはノブ・ナーガドノなのか?」
「わからんが、ここでないのは確かなようじゃ」
「だったら……さっきの奴らを追うか?」
全員うんうんとうなずいて、
「シツレーしましたあっ!」
と、一礼して駆け出したのであった。
「まあ、そんなわけでこのような仕掛けをほどこしたのじゃが」
そう語るナーガー・マースの話をヤースケ(マンダロリアン装束)は聞いていなかった。
「ノブ・ナーガさまのところにいきます」
一言告げた。
「今から?」
「はい」
「しかし、庭はああなっておるし」
「ソラをとびます」
「……そうじゃったな」
ジェットパックで飛べるのだったな。
ナーガー・マースは納得したようにうなずいた。
いきなりオーパーツのようなアイテムが出てきたものの、今さら突っ込むのもどうなのかとあきらめたようだった。
「ならば、行け」
「はい」
ヤースケ(マンダロリアン装束)はそう答えると窓から身を躍らせ、ジェットパックを点火させるとホン・ノージ目指して飛んだ。
しかし。
突然嫌な予感に襲われて、ヤースケ(マンダロリアン装束)は両腕を頭の上で交差させた。
ほぼ同時に横から衝撃を受けた。
別の方角から飛んできた人物とぶつかった。
ホン・ノージでノブ・ナーガにかっ飛ばされた、かの人物であった。
……衝突の方向、おかしくない?
そう思うのも当然である。
しかし地球球体説にもとづくならば、異なる方向に飛んでいてもそのうちどこかでぶつかっておかしくはない。
平面説だとしても地図の上下左右の端から反対側に出てくる設定ならば、ぶつかることもあり得るだろう。
実にフォールトトレランスが考慮された申し開きであった。
ホントかよ。
ヤースケ(マンダロリアン装束)と衝突した人物は、地上へと転がった。
衝突した側の動作が不安定になったジェットパックを懸命に操作しながら、なおも前に進もうとした。
一番上の階よりも高度が落ちてきた。
建物の外壁が迫ってきた。
かわそうとしたものの、ジェットパックの片側が外壁にぶつかって粉々に砕け散った。
ヤースケ(マンダロリアン装束)は全身を屋根に打ちつけると、大きく弾むように道に転がり落ちた。
物音を聞きつけた人が少しずつ集まりだした。
恐る恐るといった様子で近づこうとした。
空の一角が突然明るく光り、倒れたヤースケ(マンダロリアン装束)を照らした。
近づこうとした人々は大慌てで距離をとった。
光が発する元の近くが四角く、大きく光った。
2つの影がその中に浮かび上がった。
空中に向かって飛んだ。
降りてくる途中に、ジェットパックからの炎が見えた。
集まってきた者が見たこともない姿だった。
ヤースケ(マンダロリアン装束)のように、全身が金属で覆われていた。
片方は、少なくとも人の姿に近かった。
しかしもう片方は、一本足で左右の腕が地面についていた。
もちろん、これを知る者はプロトコル・ドロイドとアストロメク・ドロイドであると知っている。
集まってきた者にはわからないことであった。
背の高いほうが低いほうに何かの音を発した。
言葉のようだが、よくはわからない。
かるりじあん がどうとか、こうとか。
あと、ほおす がどうとか、こうとか。
「お、お前らは何者だ!」
背の高いほうがヤースケ(マンダロリアン装束)を抱えようとしているのを見ていた者の一人が、ようやく声を発した。
「ああ、ここのかたですか。初めまして」
背の高いほうが、風邪をひいた時のような声を出した。
「すみませんねえ。この人、連れて帰らせてもらいます」
背の低いほうが、聞いたこともない音を発した。
同意を示しているかのように、体を前後に揺らした。
集まってきた者がどう言葉をかけていいか悩むうちに、ヤースケ(マンダロリアン装束)を抱えた背の高いほうと横にいた背の低いほうは再びジェットパックから炎を出して空中の四角い光の中に入った。
しばらくして光が消え、空に浮かんでいた何かの塊が音を出しながら遠くに飛んで行った。
誰も、何もわからなかった。
どこかから来たノブ・ナーガ様の付き人ではないかと言う者も、その言葉を信じていなさそうであった。
ヤースケの最期は誰も知らない。
それだけは、実際の世界と同じであった。
ここまで説明しないとわからないネタはダメじゃないかなと思うのだけど、説明しないと何のネタを使いたかったかわかってもらえないとも思うので説明するのである。
本能寺の変について少しでも知っている人が自信をもって「これ、アカンやつ」と断言できる話にしたかった(できたとは言ってない)