ムーンセル・オートマトンとBBのおかげで英霊召喚に成功した。その証拠に私の前に三人の人影が現れ、こちらを見て笑っている。そして、その中の一人が我先にと前に出た。
「うむ、うむうむうむ! 余は嬉しい! このような戦場に呼んでくれた。また、余の剣が必要だと想ってくれた。それだけでその声に応える理由になるというもの! さぁ、奏者よ! 我が才を月の民どもに知らしめてやろう!」
「うん、あり、がと……セイバー?」
いつものドヤ顔を披露しながらこちらへ手を差し伸べるセイバー。しかし、何故か彼女はいつもの赤い男装衣装ではなく、月の裏側で制限されていた時に身に纏っていた花嫁姿だった。
「えっと……」
「む? もしや、この格好のことか? もちろん、余が奏者の嫁であることをアピールするためだ! どうやら、奏者は色々とやらかしてるみたいだからな。いいか? 余が、奏者の、花嫁!! それは変わらぬ事実! よく覚えておくがよい!」
「おや、みっともなく嫉妬ですか? いけませんねぇ、そのような心持ちではご主人様の正妻は務まりませんよ?」
花嫁セイバーの声に呆れたようにため息を吐くキャスター。だが、彼女の姿も月で見た時と違う。着ている青を基調とした着物が豪華になっているし、フリフリとご機嫌な様子で揺れている尻尾の数が明らかに多い。なんか、こう――ものすごく荘厳な感じがする。
「と、いうわけで……ご主人様の声を聞き、急いで身支度をして召喚に応じました、あなたの
「なんだと! 花嫁衣装こそ、正妻にふさわしい姿ではないか!?」
「それは結婚式でございましょう? ノンノン、甘いですねー、セイバーさん。結婚式はたった一度だけ。それが終わってしまえばただのコスプレです」
「コス……いいだろう。貴様とは一度、雌雄を決しなければならないと思っていたところだ!」
キャスターの挑発にセイバーが白い剣を構えて勝負を挑んだ。今はそれどころではないのだが、二人のやり取りがどこか懐かしく、もう少しだけ見ていたかった。
「あらあら、血の気が多くて困りますねぇ。私はあくまでサポートキャラ。
「そこまでにしておけ。ここは戦場だ。ふざけている場合ではない」
しかし、そんな二人の間に立ったのは浅黒い肌と白髪が目立つ長身の男性。どこか余裕ぶった笑みを浮かべつつ、見せつけるように掛けている
「さて、最後になってしまったが……サーヴァント、アーチャー、召喚に応じた」
「……」
「ん? どうかしたか、マスター? 私の顔に何か?」
「眼鏡」
不思議そうに首を傾げるアーチャーはいつもの赤い外套ではなく、一般男性が着ていそうなカジュアルな服を身に纏っていた。そして、眼鏡。眼鏡である。黒縁のオーソドックスなそれに私の視線は釘付けだった。
「おい、アーチャーよ! 何故、そのような装いなのだ!?」
「ここは現代日本だ。いつもの姿では浮いてしまうだろう? 私はTPOを考慮したまでさ」
「嘘おっしゃい! 絶対にわざとでしょう!? よくもご主人様の視線を独り占めしやがってこのやろー!」
「ええい、もういい! 二人まとめて叩き斬ってくれるわ!」
「……みんな、来てくれてありがとう」
アーチャーの眼鏡に意識を持って行かれそうになったが鋼の精神で正気に戻り、今すぐにでも戦い始めてしまいそうな三人に声をかけた。なお、それと同時にツクヨミのスクショ機能で三人の姿をパシャリ。一人ずつのものと三人並んだ姿の画像を保存しておく。
「事情は伝わってると思うけどかぐやを守るために協力してほしい」
「カグヤちゃん? もしかして、カグヤちゃんがいるんですか?」
「はーい、かぐやでーす!」
私の言葉に狐耳をみこんと反応させたキャスターは周囲を見渡す。そんな彼女へ手を挙げてアピールするかぐや。
「……人違いみたいですね。私の知ってるカグヤちゃんはあんなギャルくないですし、もう一人は人間ではありませんでした」
しかし、かぐやとは違う人だったらしく、どこか残念そうにため息を吐く。もちろん、落胆されたかぐやは気に食わなかったようでむう、と頬を膨らませた。
「それよりもご主人様……あの、そちらのかぐやさん? のお隣にいるイケ魂の持ち主は一体、どなたですか?」
「……え? 私?」
「ええ、ええ。あなたでございます。どうやら、私と
「時間ないから後でね」
どうやら、彩葉はキャスターのお眼鏡に叶ったらしい。もちろん、自分を蔑ろにした相手が彩葉に興味を持ったため、かぐやの機嫌もどんどん悪くなっていった。
「それで奏者よ。我々はどうすればいい? 兵士の数はそれなりに揃っているようだが」
「幹部クラスの敵がいる。セイバーとアーチャーには敵を宝具で隔離してほしい」
セイバーの質問に予めBBと話し合っていた作戦を伝える。彼らの宝具は固有結界とそれに類似したもの。分断には丁度いい。
「撃破することは難しいのか?」
「二人なら倒せると思うけど私たちが介入するためにルールを無制限にしなきゃならなくて……敵味方関係なく、残機が無限なの。だから、すぐにリスポーンする。時間稼ぎ程度でいいよ」
むしろ、倒してしまったら宝具から抜けられてしまうので倒さない方がいい。それを伝えるとセイバーとアーチャーはどこか懐かしそうに笑った。
「うむうむ、やはり奏者の考える作戦は理に適っていてやりやすい。倒しもせず、倒されもせず、ただ時間を稼ぐ。その役目、余に任せるがよい!」
「ああ、何人持っていけばいい?」
幹部クラスの敵は全部で七体。その中のトップ――ボサツ型はほぼ動かず、リョウサン型の召喚と弾幕を張ってくる。つまり、彼らに任せたい幹部は全部で六体だ。
「セイバーが二体。アーチャーが三体かな」
「了解した。君の期待に応えよう」
二人に作戦を伝え終わった後、私は彩葉の方をちらちら見ているキャスターへと向き直る。私の視線に気づいた彼女は嬉しそうに耳と尻尾を揺らした。
「おっと、久しぶりのイケ魂を前に少し呆けておりました。ご主人様、私は何をすれば?」
「セイバーたちが連れて行かなかった幹部クラスの敵と戦ってほしい。フィールドの中央で宝具を展開して援護もお願い」
「おや、随分と仕事が多いのですね。それに英霊の身ですが私は最弱のサーヴァント。さすがに幹部クラスの敵の相手は厳しいかと」
「うん、大丈夫。三人にはそれぞれ彩葉たちもついて行ってもらうから」
「え、私たちも?」
まさか話題に出て来るとは思わなかったようで彩葉は驚いた様子で声を上げた。セイバーたちであれば幹部クラスの相手はそこまで難しくないだろう。しかし、万が一、月人たちがチートモードのような奥の手を持っている可能性もある。用心するに越したことはないだろう。
「セイバーには乃依、真実。アーチャーには帝、芦花。キャスターには彩葉、かぐや、雷がついて行って」
「チーム分けもすでに終わってんのか。まぁ、この場を仕切ってるのははくのんちゃんだ。素直に従うぜ」
幹部クラスの敵に負けっぱなしは性に合わないのだろう。帝はやる気十分といった様子で金棒を肩に担いだ。他のみんなもかぐやを守るために武器を持って戦う意思を見せてくれた。
「BB、全員と回線を繋いで必要なタイミングで通信よろしく。気になることがある人は敵と接敵する前に彼女に質問して」
「はーい、BBちゃんにお任せあれー☆」
「白野はどうするの?」
そろそろ幹部たちも戦いに参加するだろう。その前に彼らには配置について欲しくて作戦会議を切り上げようとしたがどこか心配そうにこちらを見つめる彩葉に少しだけ息を詰まらせた。
「私は……ヤチヨがやろうとしたみたいに月人に交渉してくる」
「ッ!? できるの!?」
「少し時間がかかるかもしれないけど……ムーンセルがあれば大抵のことはできるから大丈夫。BBにも手伝ってもらうし」
先ほども言ったように月人たちの戦力はほぼ無限。物理的に勝つのは不可能だ。だから、交渉材料を作りながらボサツ型に接触してかぐやを諦めてもらうしかない。
「でも、どうやって行く? 月人たちも本気になった。管理者権限を持ってるみたいだが、この軍勢を素通りするのは難しいんじゃないか?」
そんな私の作戦に帝が難しい顔をしたまま、問いかけてきた。確かにこの戦いを儀式だと思っていたのなら全力で突破すれば行けたかもしれない。
でも、問題ない。こちらには
「大丈夫、当てはあるよ。ね、ギルガメッシュ」
「ふん、
私が声をかけるとずっと霊体化していた黄金の鎧に身を包んだ男が不機嫌そうに腕を組んで現れた。
セイバー:ブライド
アーチャー:サマー・カジュアル
キャスター:最終再臨
みんな、自由だ!