一応、第113話を投稿した後に選択を増やすためにアンケートを作り直したので
選択肢が増える前に投票してくださった方は改めて投票していただけると幸いです。
「――なるほど。ヤチヨちゃんが鍵か」
ここはツクヨミ内にあるミーティングルーム。彩葉にヤチヨを探すように頼まれた私たちは早速、帝たちをここに呼びつけて白野の手紙のことを伝えた。
「彩葉は絶賛、作曲中。それで俺たちがやるべきことはプライベートルームに引っ込んだ歌姫を引っ張り出すこと。なんかそんな御伽噺なかったか?」
「天照大神が天岩戸に引きこもった話だな」
帝の質問に雷が答えたがまだ地上に来て二か月の私にはさっぱりだった。でも、誰かがどこかに引きこもったのなら今のヤチヨと似ているかもしれない。
「その話は結局、どうなったの?」
「複数人の神様が岩戸の前で踊ったり、宴会を開いて引きこもった天照大神が気になって顔を覗かせたところで力自慢の神様が入り口を塞いでいた岩を放り投げた」
「まぁ、部屋の外で楽しそうな声が聞こえたら気にもなるかー」
あれ、でも、今のヤチヨも同じような状況なら実行できそう? 私や帝が面白そうな企画を考えてオタクたちを巻き込めばいい感じ?
「そう簡単には行かないかもよ」
私の表情を読んだのか、乃依がいつもの笑みを浮かべながらウィンドウをこっちに投げてきた。それはツクヨミの噂話が集まる掲示板。ざっと中身を読んで思わず首を傾げてしまった。
「管理者権限の譲渡?」
「これって……」
私はよくわからなかったが芦花はどこか思い詰めたような顔で呟く。もしかして、とんでもなくやばいことなのだろうか。
「今のツクヨミってヤチヨちゃんが管理者だろ? そのヤチヨちゃんの役目を別の人がやるってこと」
「……え、それマジやばくない?」
このツクヨミを作ったのはヤチヨだ。そんな彼女がツクヨミの管理者権限を放棄する。その場合、ツクヨミはどうなるのだろう。なにより、管理者権限を渡した後、ヤチヨはどうするつもりなの?
「あくまで噂話だが……管理者権限が譲渡されるはずだった9月12日にそれが行われず、オークションに参加した企業がどういうことだとヤチヨ相手に抗議のメールを送っているらしい」
「そういうのって守秘義務とかありそうだけど」
「ヤチヨちゃんが最初に約束を破ったからこっちも出るとこ出てやるぜ、みたいな感じか?」
雷の言葉に真実が難しい顔をして疑問を口にするが帝たちもそこまで把握しているわけではなく、肩を竦めるだけだった。
「……9月12日ってさ。かぐやの卒業ライブの日だよね」
気になったことが勝手に零れる。きっと、みんなも気づいていたのだろう。何も答えずに私の方へ視線を送るだけだった。
「彩葉がさ、白野にヤチヨはどうしたのって聞いた時、『無茶しようとしてたから動けなくした』って言ったけど……もしかして、あの時、ヤチヨってやばいことしようとしてたんじゃない?」
9月12日にツクヨミの管理者権限を譲渡しようとしていたこと。私を月に行かせないために月人に対して交渉すると言っていたこと。そして、白野が動けなくするほどの無茶。きっと、ただの交渉じゃない。それこそ、ヤチヨがツクヨミを捨てなければならないと覚悟を決めるほどの何かだ。
「……結局、ヤチヨちゃんが何をしようとしていたのかはわからない。でも、今のヤチヨちゃんは相当、塞ぎこんでるだろうな」
「そっか……かぐやたちが楽しそうなことをしてもそれを気にする気力がないってことか」
ただでさえ、私と彩葉は丸一日ほとんど飲まず食わずで死んだように落ち込んだのだ。白野の事情をそれなりに把握していたであろうヤチヨのダメージは計り知れない。私たちが気づいた頃には何もかもが遅かったけど、ヤチヨはもしかしたら白野が消えるのを止められたかもしれない。そう、自分を責める。少なくとも、私がヤチヨならそうなる自信がある。
そして、なにより今のツクヨミはどこか静かだった。多分、ヤチヨの配信が宙に浮かぶモニターに映し出されず、真っ暗なままだからだろう。彼女の活動もSNSの更新も完全に止まっている。ツクヨミでの活動を大切にしていたヤチヨがこんな状況のまま放置するとは思えない。きっと、アーカイブを流したり、SNSでしばらくお休みすることを告知することすらできない状態なのだ。
「とりあえず、岩戸作戦は第二案にしよう。他に何か案はあるか?」
「……やっぱり、プライベートルームを探すしかないんじゃないかな」
帝が別の案を募集したところ、芦花が静かに言葉を紡ぐ。白野が予想したヤチヨのプライベートルーム。きっと、白野の予想は当たっているだろう。彼女は不思議なほど相手の動きを読み、誘導する力があった。ずっと一緒にいたヤチヨのやりそうなことぐらい簡単に予測できてしまうだろう。
問題はそのプライベートルームがどこにあるか、ということ。でも、それは――。
「――あそこじゃないの?」
「――あそこだろ」
ほぼ同時に同じ方向を指さしたのは私と帝だった。みんながその声に顔を上げ、私たちが指さした方を見上げる。そこにあったのはツクヨミの中心に立っているお城。
「あ、そこ?」
「うん、あそこの一番上の部分がプライベートルームじゃないの?」
「何故、わかる」
「だって、管理者ならツクヨミを一望できるところにいたいだろ。それができるのはあの天守閣しかない」
「そうそう! かぐやなら『この世界はかぐやが作ったんだぜ!』ってツクヨミを見渡しながら叫ぶもん!」
真実と雷の質問に私と帝は答える。帝と同じ考えなのは少し気に食わないけどだからこそ、この仮説は間違っていない気がした。
「でも、あのお城って一般ユーザーは入れないはずだよ。随分前にお城に行こうとして色々試したけど駄目だったって動画を見たことがある」
そこで待ったをかけたのは芦花だった。確かに
「また振り出し~?」
「……いや、そういうわけじゃねぇ。ヤチヨちゃんが居そうな場所がわかればその方法を探すだけだ」
「だが、軽く調べてみたがあの城に行く方法は見つかっていない。この三連休で見つけられるか?」
「んー、なら知ってそうな奴を探すしかないっしょ」
私の言葉に再び全員の視線がこちらに集まる。だって、そうでしょ? ヤチヨのプライベートルームっていうことはもう一人、一緒に入れそうな奴がいる。白いモコモコのボディ。可愛らしい見た目を裏切るような生意気な態度。何度か蹴ったり、掴んでみたがそれでもあの態度だけは変わらなかったツクヨミのマスコット。
「FUSHIを探そう。ヤチヨが動けないならあいつだけで行動してるかもしんないよ?」
「……FUSHIか。確かに闇雲に方法を探すよりFUSHIを探した方が可能性は高そうだ」
「FUSHIが一人で行動してるところなんて見たことないけど……」
「なら、お城に行く方法を探しながらFUSHIを探すのもいいんじゃない? どうせ、ツクヨミ中を走り回ることになるんだし♡」
納得したように雷とどこか不安そうにする真実。しかし、最後に乃依がいつもの軽いノリで笑った。
「よし、方針は決まった。とりあえず、二手に分かれて探そう。みんな、行くぞ!」
最後に帝が締めて会議は終了。私は今後の動きを決めるために芦花と真実に近づく。あの白野が私たち宛ての手紙にまで書いたヤチヨ。コラボライブはしたけど、結局、彼女がどんな人、というか存在なのかわかっていない。それを確かめるためにも早く見つけなければ。
(こっちは任せてね、彩葉)
今もなお、自室で作曲作業を進めている彩葉に心の中で声援を送り、私も自分にできることをやるために前で進んだ。
第113話のあとがきに記載した掲示板回について
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掲示板回入れよう
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掲示板回なしで最後まで行こう
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掲示板回ほしいけど終わってからにしよう