月の王とかぐや姫   作:名無しのマスター

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第4話 Q&A

 ――修正プログラム、確認。

 

 ――条件の一部を満たしました。

 

 ――記憶(メモリ)の修復を開始。

 

 ――一部の記憶の修復(リカバリ)に成功。

 

 ――残りの条件を満たしてください。

 

 ――……。

 

 ――一定時間を過ぎたため、修復プログラムを終了します。

 

 ――それでは、また会いましょう。■■。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 目を覚ました。視界に広がるのは白い天井。半年前、何日か見た光景だ。もしかしなくてもここは病院だろう。

 

 そう思いながら体を起こす。どうやら、前に入院していた病院の病室のようだ。さて、どうしたものか。

 

「あ、岸波さん、目が覚めたんですね」

 

 その時、前回と同じようにカーテンが開き、あの看護師さんがそこにいた。安心したように微笑んでいる。とりあえず、おはようございます。

 

「うん、おはよう。すでにお昼は過ぎてるけどね。具合はどう?」

 

 彼女の問いに改めて自分の体を確かめる。特に不調はない。相変わらず、この体の記憶は戻っていないが特に問題はなさそうである。

 

「うん、顔色もよさそう。いきなり救急車で運ばれてきた時は驚いたけど」

 

 救急車。彼女は確かにそう言った。はて、私の身に何があったのか。それを思い出そうと首を傾げる。

 

「あ、先生を呼んでくるね」

 

 しかし、その前に看護師さんは病室を出て行ってしまう。とにかく私は救急車で運ばれ、この病室で寝かされていたらしい。あまりの急展開に驚いてしまうが、少しずつ冷静になってきたおかげで思い出してきた。そして、今後の動きを考える。さて、どうしようか。

 

「……」

 

 ある程度の考えがまとまった後、私は親切な医者の診察を受け、特に問題ないと判断されて病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の家に戻った。救急車を呼ばれ、救急隊員が乗り込んできたらしく、部屋の真ん中に置かれていたテーブルが隅に追いやられている。鍵は大家さんに借りたらしく、蹴破られたりしなくてよかった。そう考えながら病院で回収したスマコンをポケットから取り出し、机の上に置く。

 

「……」

 

 そのまま、椅子に座った後、スマコンを目に入れる。状況は把握した。でも、これからの方針を決めるための情報(パーツ)が足りない。確認しなければ、ヤチヨに。

 

 目を閉じて念じる。すると、真っ暗だった視界が光に包まれた。

 

『――太陽が沈んで、夜がやってきます』

 

 ツクヨミのログイン時に響く彼女の言葉(アナウンス)。それを聞き届けた後、私の目の前にあのチュートリアルが行われた水面の光景が広がる。前回はチュートリアルの途中で気を失ってしまったため、クリア扱いになっていなかったらしい。

 

 その状態で視線を下に移し、自分の姿を確認する。ヤチヨが探し出してくれた茶色いブレザー――月海原学園(・・・・・)の制服だ。

 

「あ!」

 

 それを確認したところで驚いたような声が前から響く。顔を上げるとそこには驚いた様子の『月見ヤチヨ』。そして、すぐにその存在感(データ量)に重みが増して本物の彼女と入れ替わる。私を心配して様子を見に来てくれたのだろう。

 

「よかった、無事だったんだね!」

 

 パタパタとこちらに駆け寄りながら笑うヤチヨ。おそらく、気絶してしまった私を心配して救急車を呼んでくれたのは彼女だ。更に大家に連絡を取って鍵の手配をしてくれた。

 

「……」

「? あれ、どうしたの?」

 

 そんな彼女を見て私は――何も言わなかった。いや、言えなかったともいう。前は何となくでしかわからなかったが、今ならはっきり認識できる。恐ろしいほどまでに、理解できてしまう。

 

「ヤチヨ」

 

 彼女の名前を呼ぶ声は予想以上に低かった。ああ、駄目だ。落ち着け。ここから始まるのは単なる雑談ではない。たった一言でも言い間違えたら終わりの腹の探り合いだ。

 

「なぁに? あ、もしかしてアカウントが制限(ロック)されてた理由がわかったとか? それなら改めてキャラクリを――」

「――月」

「……え?」

 

 私の口から漏れた言葉に彼女は目を見開く。そう、不思議そうにするのではなく、驚いた。変なことを言った一般ユーザーを見た時の反応とは違う、何かしらの因果関係を持つ単語を不意に放たれたような驚愕。こう易々と顔に出されたのは想定外だった。しかし、それは好都合、という意味で、だ。

 

「ヤチヨは、月と何か関係があるの?」

「ッ……」

 

 畳みかけるように言葉を紡ぐ。そして、感情が揺さぶられたせいでヤチヨの顔は必要以上に大きく動いた。それは誰が見ても肯定の証。

 

「えーっと? 月が、何?」

「大丈夫。だいたい、察したから」

 

 今さら惚けようとする彼女を制止して次の段階へ移行。予想以上にこういった場面に慣れていないのかもしれない。少し大人げなかったか。いや、そのおかげで警戒度を下げてよさそうだ。具体的に言えばもっと突っ込んだ話をしてもいい。

 

「あなたは聖杯(・・)という言葉に聞き覚えはある?」

「セイハイ? ううん、特に」

「そう」

 

 おっと、これも予想外。何かしらの関係があると思ったのだが、最初から当てが外れてしまう。じゃあ、彼女は聖杯戦争とは何も関係がない? でも、それはおかしい。だって、この世界――ツクヨミはあまりにあそこと似ているのだから。

 

(月に関係してるけどあの戦いには関与してない……どういうこと?)

 

「ねぇ、君は一体?」

 

 ぐるぐると思考を巡らせていると少しだけ不安そうな顔をしたヤチヨが問いかけて来る。一先ず、彼女と敵対関係ではなさそうなのは確か。ならば、ここで不信感を抱かせるのは得策ではない。もしかしたらこの事態を何とかするためにヤチヨの力が必要になるかもしれないのだから。

 

「まずは自己紹介をさせて。私は『岸波白野』。月の聖杯戦争に参加している魔術師(ウィザード)だよ」

「聖杯、戦争? ウィザード?」

 

 私の自己紹介にはてなを浮かべるヤチヨ。うん、やっぱり彼女は無関係の一般人。さてさて、どんな風に説明したものか。








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