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しずくについて、つかさは気になること、質問して解き明かしたい謎が多々あったが、その日の夜はすでに遅く、またしずくには翌日の予定があるようなので、やすませることにした。二人はすでに、入浴を済ませていた。
「中学生?」
ダイニングの床にあぐらを組んで座るスウェット姿のつかさが、ソファで横になってブランケットを掛布団がわりにしているしずくに問いかける。ベッドの方がソファより快適なのは間違いなかったが、さすがに自分の寝床を貸し与えほどの必要性は、つかさは感じなかった。しずくの水色のジャージは、つかさの着古した服に、寝間着として着替えられていた。
「うん」、としずくが首肯する。「十四歳」
「若いね。羨ましいよ」
「わたしなんか羨ましがっちゃダメだよ」
「どうして? 率直にそう思ったのに」
疑るように、つかさは小首を傾げる。
天井を見つめるしずくは、しばし沈黙した後、「ごめんなさい」、とやや出し抜けに謝った。親しかった調子がかしこまった調子に、”また”変わったようだった。
「もう寝ます。おやすみなさい」
つかさは少し呆然としたが、その豹変にはあえて触れずそっとすることにし、「おやすみ」、と返し、ダイニングの照明を消して仕切りを閉め、洋室に移った。
仕切りのそばに立って、つかさは、背後の気配に五感を研ぎ澄ませてみたが、ほとんど無音で、特に感じるものはなかった。道路を走る車の、路面の水をまき上げるサーという音が、時折するだけで、後は静謐だった。
残業で疲れているし、明日も仕事のあるつかさは、ベッドに入り、リモコンで照明を消して、ダイニングも洋室も揃って真っ暗になった。
目を瞑ったが、つかさがうまく寝付かれなかったのは、彼女の頭の中で、しずくにまつわる、あり得ると思われるシチュエーションの想像が、めくるめく巡っていたからだった。彼女が口にした『施設』や、明暗の両極に転変するキャラクターは、彼女の像をいびつに、またミステリアスにしていた。
明朝は早起きして、しずくに対し、彼女の通う学校について確認して、そこまでの交通費を与え、行けるところまで同行してやろう、そのようにつかさは考えた。そしてしずくは、きっと彼女が何らかの事情で少し逸脱してしまった、彼女が元いた生活の輪の中に復帰して、そこで物別れになるのだろう、そういう気が、つかさにおいてしていた。だが微かに、それとは違う別の展開が待ち受けており、つかさとしずくの関係性は途切れずに継続するのではないかという怖れが、同時にあるのだった。
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