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夜が明けて朝になり、つかさがまず起きだして、まだ寝ているしずくを呼びかけて起こした。彼女らは洗顔して歯磨きし、食パンを包丁で二つに割って朝食とした。朝のせわしない時間に、わけの分からない他人が自分の生活空間にいるのは、つかさにとって半ば新鮮で、半ば面倒くさいことだった。
つかさはさっぱりしたワイシャツとスーツを着、しずくは、一晩乾かしただけの昨日の水色のジャージを着直し、共に出発した。学校に行くというのに、しずくに荷物が全くないというのは、不自然だったが、その辺のことは、保護者でないつかさの関知するところではなかった。
降っていた雨が上がって空が青く晴れ、けれど七月の太陽は、朝から厳しい日射を放っており、梅雨明けはまだだけど、真夏の到来が間近に予感された。
しずくが通っている学校の最寄り駅を、つかさはサッとスマホで調べ、そこまでの運賃を彼女に手渡し、途中まで同行することにした。
駅までの道、通りすがりの人たちの目が、何となくつかさは気になった。彼等は何となく見てくるようで、だけど気のせいという気がしないではなかった。
朝の通勤ラッシュ時の、一駅ごとに学生や労働者が乗り込んでくる混雑する満員電車で、吊り革を掴んで立つつかさとしずくは、人いきれと窮屈さのために眉をひそめつつ、相手の様子が気になって何となく流し目で瞥見するのだが、ふと目が合うと、気遣わしそうに逸らすのだった。
「しずく」、とつかさがおさえた声で呼ぶ。
しずくは彼女に目を向ける。
「次の駅で降りなよ。学校までは付いていけないけど、迷ったりして遅刻しないようにね」
そう言うと、しずくは目を逸らし、「うん」、とどこかそっけないというか、自信のない調子で答えた。
アナウンスが流れ、走っている電車が減速し、暗闇の線路から、明るいプラットフォームへと出、自動ドアが開いた。しずくは出ていく人々の流れに押されるようにして降車した。まだ電車に乗っているつかさは、ふとした瞬間に振り返った、人混みの中に紛れ込むしずくと目が合ったが、二人の目線は、動き出す電車と、否応なく前に流れる人混みのために切り離され、そのようにして彼女等は別れた。
これであの子との縁は切れたのだろうか。
一人になったつかさはそのように考え、半ば安堵するようで、半ば心配するようだった。しずくの生活は、しっかりした基盤の上にあるようではなかった。それは脆く、不安定で、支えがいるもののように、彼女には想像された。
結局聞かずじまいだったが、しずくは、昨夜きっと、何かの事情があって、学校が終わった後、帰るべきところに帰らずに、一人フラフラ歩き回って、あの公園に辿り着き、雨の中、疲れるなどして休み、しかしその後は、どうするつもりでいたのだろう?
つかさにおいては、電車を降りるつかさの、どこかぼんやりして気の抜けた、哀調のある面持ちが、思い返されていた。
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