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予報においても、実際においても、晴れの日が続き、七月の日々が進行していって、いよいよ梅雨明けが来るに違いないと多くの人に推断され、蝉の鳴き声までしだしたが、雨は思い出したようにまた降り始めた。天気予報によれば、梅雨は例年と比べて少し長引く見通しだった。
すっきりしない空模様の下、夜の八時頃、最寄り駅で電車を降り、黒い傘を差しているつかさは、いつものように近所の公園が面する住宅街の通りをアパートまで歩いていき、時々顔を上げ、街路灯の光の中に煙る細かい雨粒を見た。
やがて、アパートの、暗証番号入力式のオートロックのドアの前に来て傘を閉じ、ボタン入力しようとすると、つかさはふと、背後に誰かのいる気配がし、すっかり暗くなった時間だったので、警戒心と共にサッと振り向いた。
彼女は、驚きと訝りで眉間を上げた。なぜと言うに、彼女の背後にいたのはあの少女だったためである。
「しずく」
つかさは、忘れかけていた名前を、自身に確認するように口にした。
しずくは、その夜もまた、以前のように水色のレインスーツを着て、フードまで被っていた。心なしか彼女の顔は、中学生という身空に不相応にやつれていて、心労が推察された。もうすっかり注意しなくなったが、あるいはその夜も、しずくはあの公園で、ブランコに一人座って過ごしていたのかも知れなかった。
「覚えててくれたんだ」、としずくは目を閉じて柔和に笑み、その笑顔は、嬉しいという感情が確かに滲んでいるようで明るかったが、やつれた風合いが暗い陰になっていた。
「まぁね」、とつかさはカジュアルに返す。「印象に残らなくはない仕方でわたしたちは出会ったわけだし」
しずくは笑みを弱めると、どこかシュンとした感じになり、その様子は、何がしかの事情を偲ばせるようで、けれど、アパートの正面は、それを解き明かす場としては相応しくないように思え、つかさは、あまり気乗りしなかったが、不可抗力で、部屋に招き入れることにした。どちらかというと人間不信の嫌いのあるつかさが部屋に招じ入れるのは、決まって生前の母か、二宮くらいのものであり、彼等以外の人物を迎えるのは、例外であった。しずくはつかさにとって、確かにぜんぜん関係のない赤の他人でしかないけれど、何か彼女のためにしてやろうと思わせないほど関心の薄い人物ではなかった。
「またご飯?」、とつかさは暗証番号をボタンで入力しながら、尋ねる。
「うん」、というしずくの返事は、あまりすっきりしない響きがある。
正しい暗証番号の入力によってロックが解除され、つかさがドアを開け、しずくにフードを外すよう促すと、二人で共に入っていった。
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