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それぞれ洋室とダイニングとにわかれて寝ることになったつかさとしずくは、明朝遅くまで熟睡した。その日は仕事も学校も休みであり、また天気もよくなさそうだったので、二人は目覚ましをかけず、あるいはベッドに、あるいはソファに、体を深く預けきっていた。
キッチンのシンクでは、昨夜焼きそばで用いた、ソースで汚れた二人分重なった皿に、水がはってあり、そこに蛇口より一定の間隔で落ちる水滴が、穏やかな波紋を投じていた。除湿設定にしているエアコンの稼働音が、微かに聞こえていた。
毎週末、決まってつかさの部屋には訪問者があり、彼女はぐっすり寝ていたが、すっかり忘れてしまっているか、すっかり注意しなくなってるようだった。
十時頃、ピンポーンとインターホンが鳴り、二人の眠りは醒めず、だけど、インターホンの音は、反応を求めるかのように数回続いた。
その内つかさの目蓋が上がり、寝ぼけて遠い耳に、インターホンの音が響いてくると、ハッと我に返ったようになって、掛布団をめくりあげてベッドより下り、玄関ドアまで行った。つかさと同じく目覚めたばかりのソファのしずくが、少しだけ半身を起こし、怪訝そうにドアの方にぼんやりした目を向けている。
「ごめん」、とつかさはサンダルを突っかけてドアにぴったり張り付くと、外にいるであろう『彼』に対して言った。
「来て貰って悪いけど、今日はダメ。訪問者がいるから」
「訪問者?」、と二宮が腑に落ちないといった風に聞き返す。「誰だよそれ。つかさの部屋に来る訪問者って……まさか男か?」
「違う」
問い質そうとする姿勢のドアの向こうの二宮に、つかさはイラッとしてすげなく否定する。
「じゃあ女?」
「……」
対話が成立すると、不必要に二宮が食い下がってきそうだったので、つかさは沈黙することにした。
すると二宮は、いかにも不満そうにチッと舌打ちした。
「どういう都合か知らないけどさ、来ないで欲しいのなら、事前に連絡してくれよ。おれ、何のために今日来たんだよ」
二宮に対しては、最近あまり気に掛けずに蔑ろにしていたけど、つかさは、迎え入れず冷遇せざるを得ないことに、申し訳なく感じた。確かに彼女の連絡不足によって、二宮は迷惑を被っているのだ。つかさの部屋には毎週末彼が来る慣わしになっているのに。
「お詫びは今度する。とにかく、今日は都合が悪いの」
つかさが哀願するように述べると、フゥ、という呆れのため息が聞こえ、足音がし、それは、段々遠ざかっていった。のぞき窓に目をやって彼女は確かめてみたが、正面には、アパートの廊下と、共用廊下と柵と、曇天の下の山々が彼方に見えるばかりだった。
フゥ、とつかさもため息し、かまちの上に腰をペタリと落とすと、急激に恥ずかしさが込み上げて来、後ろにいるしずくの方に顔向けがしにくかった。
「今の人、お姉さんの彼氏?」
しずくがいかにも無垢という感じで尋ねる。
「彼氏……いや、友達」
つかさは、はっきりしない調子で返す。
ため息の後に、大きなあくびが出た。
一難去った安心感からだろうか。
正面には、二宮の気配の痕があり、背後にはしずくという謎の不良少女がおり、つかさは、何だか劇的にまた眠くなってくるようだった。
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