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しずくの近々の公の予定には、学校では彼女の卒業後の進路についての三者面談が、施設では夏のレクリエーションの旅行があった。
施設の旅行に対して、学校の三者面談の方が先にあり、旅行は、三者面談が終わり、またその学期の終業式が終わった後の学校の夏休みの期間中にあるのだった。
――夜、消灯の時間になった後も、しずくはベッドの上に仰向きでおり、枕の上に組んだ手に頭をのせ、おぼろげに見える天井をじっと、見るともなしに見ていた。ずっと凝然と見ていると、無地の天井に、何かモヤモヤした模様が浮かび上がってくるようで、また、その模様、ないしは模様のまぼろしは、グルグル回ったり、広がったり狭まったり、うねったりして動く気がするのだった。
ゆうきに言われた言葉が、しずくにおいてリフレインしていた。彼女は、施設の皆がしずくのことを心配していると言い、改心して欲しがっているという風だった。
「ねぇ、ゆうき?」
しずくは、気を遣って小さい声で部屋の反対側のベッドで寝ている彼女に、半ば遠慮するように、半ば甘えるように呼びかけてみたが、耳を澄ますと、エアコンの稼働音に混じって、規則的に繰り返される寝息が聞こえて来、彼女は安眠しているようだった。しずくは、ホッとするようで、同時にまた、心細くなるようだった。
今更ながら、しずくにおいて奇妙に思われた。彼女は意識の低い、劣等でやさぐれた落ちこぼれだというのに、一つの部屋にいっしょになったのは、正反対の、意識の高い、秀才の努力家のゆうきだった。その素行のために憂慮されるしずくが、対極に位置する模範的であるゆうきの感化をいくらか受けられるようにという、施設の職員たちの意図があるのかも知れないと、彼女には推測された。
将来のことは、しずくにはうまく考えられなかった。けれど、考えなければいけないという強迫観念があり、葛藤が生まれていた。机と椅子に縛り付けられてする勉強は辛気臭かったし、かといって働こうという風に思うわけでもなかった。
しずくの将来は虚無であり、空白であり、それは、だが粛々と時間の流れと共に迫ってきており、いずれ来るべき望ましくない現実に対する不安や悲観のために、彼女はゲームなどばかりして忌避するか、実際に施設から脱走するなどして抵抗してみようとするのだった。
逃げてみたところで、どこかに辿り着けるわけではないと、しずくは内心で悟っていた。雨が降りしきる、砂がベタベタしている公園の、くぼみに雨水のたまっているブランコが、彼女において思い返された。濡れたチェーンの手触り、降ってくる雨粒の重さと軽さ、街路灯のぼんやりした弱弱しい光……。
しずくの人生の展望は、目の前に天井が広がるように、何かに阻まれて、まるで見通せないのだった。
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