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高瀬中学。
神奈川県某市にある、しずくとゆうきの他、施設の何人かの通っている公立の学校である。区画の角に位置し、周りは住宅で、小さい公園がひとつ隣接している。学校の敷地の角部の、交差点のところにある校門には、学校が緊急避難場所であると示す大きい看板が立っている。
七月某日。
高瀬中学のある教室では、授業の終わった後の時間、三者面談が行われており、クラスの教師と生徒とその保護者の三人が、生徒の現況と進路について、半ばカジュアルに、半ば厳粛に話していた。グラウンドや特別教室では午後の部活動が平常通り行われていたが、所定の時間になると、面談のために生徒は部活動を一時抜け出すのだった。
しずくは部活動には属しておらず、三者面談のある日、施設に帰るほどの時間の余裕がなかった彼女は、暇潰しのため、図書室で漫然と過ごしていた。
しずくは書棚より、特に興味があるわけではない本を抜き取って空いている席に座り、ウトウト眠くなって机に突っ伏したり、気まぐれに読書してみたりしていたが、その内、所定の時間が近付いてきた。
彼女は気怠そうに立ち上がると、借りた本を書棚に戻し、図書室を出、教室へと向かった。
……。
「そうですか」
沈鬱そうに返すのは、施設の職員で、面談に保護者としてやってきた『かやこ』だった。二十四歳。大学在学時、保育士資格のための施設実習で児童養護施設に職場体験に来たことが、入職のきっかけだった。目頭の丸いキリッとした目付きの、褐色に染まった背中まであるロングヘアのかやこは、黒のパーカー姿だった。
三つの机と椅子が教室の中央に寄せられており、教師に対して、生徒と保護者が対座するという恰好だった。
「本人はよく分かっているはずなのですが、このままだと、ちょっと今後の選択肢の広がりがなくなっちゃうかなぁ、と思いまして」
教師の『ありこ』が恬淡と説明する。ありこは二十五歳で、白い丸襟のインナーの上に、ベージュのジャケットという出で立ちで、肩までの厚い黒髪が特徴だった。
かやこはスゥ、と鼻でため息し、隣で物憂そうに座っている問題児に刺々しく流し目したが、当人に反省の色はあまり見えなかった。しずくは白のシャツと紺のスカートという制服姿だった。
「ゆうきちゃんはよく頑張ってるよ。しずくちゃん、いっしょの部屋にいて見てるでしょ?」
「うん」、としずくは首肯した。「ゆうきはわたしと違って、頑張り屋だと思う。わたしは、あの子みたいに出来る自信がない。施設の人は、わたしとゆうきをライバルにしたいみたいだけど、あんまり意味がないんじゃないかなぁ」
しずくは俯き気味に、半ば気遣わしそうに、半ば鬱陶しがるように、モジモジとお腹の辺で指を弄びながら、無気力に言った。
その様子に、かやことありこは、呆れる風の目線を交わし、共鳴するように、小さく頷き合うのだった。
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