***
稜線が幾重にも交叉する房総丘陵の、脇に木々や竹などが鬱蒼と茂る道路を、しずくたちの乗るマイクロバスはずっと走り、その内、彼女等の宿泊先のコテージのあるレジャー施設の、何百メートル先にあるなどと予示する看板が見え、支道が現れた。バスはその支道に折れ、しずくたちは、一時間強ほどの乗車時間の後、到着したのだった。
レジャー施設は、丘陵の只中に位置していることから、原生の自然が豊かで、同時にまた、アスレチックや釣り堀やゴルフ場などのアトラクションが充実したところだった。
マイクロバスより続々と、しずくを含む中高生たちが下りて来、ある者は窮屈だった車内からようやく出られて大きく伸びをし、ある者は、真夏の猛々しい暑気に降り立ち、しかめ面で暑いと嘆いた。
セミの鳴き声が盛んに聞こえていた。木々の葉が夏日にきらめき、磨かれたように光る青空には綿雲がどっしり浮かび、夏の風情が鮮烈で、しずくたちは、その雰囲気だけで魅了され、ぼんやりしてしまうのだった。
ゆうきは、他の子たちのように、旅行という非日常事の愉快さに当てられてちょっとそわそわし、けれどしずくは、ポケットに両手を突っ込み、皆と同じように愉快さを感じているのだけど、どこか冷めていた。彼女には皆とは違うという自覚が、あるいは引け目があり、それが、彼女をしてゆうきたちとの間に懸隔を感じさせていて、この場を覆う喜びの感情の共有の妨げになっていた。
ふと、しずくはポンと肩に触れられ、ハッとして振り向くと、背後のすぐそばに、ブラウスと七分丈のパンツという恰好のかやこが立っていた。かやこは、しずくだけに聞こえるように、肩口の辺で「楽しみだね」、とにこやかにささやき、しずくはけれど、返事せず、どこかすっきりしない感じだった。
一行は、職員の案内に従い、まずはコテージには向かわず、施設内のアトラクションを巡り、夕方まで遊んだ。中高生たちは、釣り堀でコイやフナなどを釣竿で釣ったり、ボルダリング場でボルダリング体験したり、芝生のスライダーでソリに乗って勢いよく滑走したりした。
彼等はそれぞれ相応に楽しみ、そして相応にくたびれた。高いところにあった日は、その内低いところまで下りていた。
夕食はバーベキューだった。コテージのそばの広場に、バーベキューコンロ、テーブル、イスなどが用意され、明るい青空の時間から、夕焼けが燃え、日が落ちて暗くなって電灯が灯るまでの間、中高生たちは、和気藹々と互いに打ち解け、談笑し、自分たちで焼いた肉や野菜など、満腹になるまで賞味した。
たっぷり時間が経ち、空気がしめやかになってきた頃、コンロの網にはまだ鶏もも肉やピーマンなどが、いささか焦げた状態で残っていた。
施設の電灯の明かりが弱いので、コンロのそばで、誰かが電気式のランタンを持って照明の補助としていたが、その白っぽい明かりが淡く照らす中に、ゆうきと他の中高生たちの姿がよく見える姿で存在している一方で、しずくの姿は遠く、薄暗いところで孤影悄然としており、中高生たちの輪より少し離れて見守っているかやこは、その様子に半ば呆れ、半ば心配するように、流し目で彼女をチラチラ注視するのだった。
***