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中高生たちの泊まるコテージは、男女で二棟に振り分けられた。
コテージというと瀟洒だが、レジャー施設にあるコテージは、いささか年季が入っていて、山小屋というのが相応しい、垢抜けないものだった。平屋の構造で、喫煙スペースほどのテラスが備わっている。エアコンが古かったり、バスタブが銀色だったりし、随所に古めかしさがあるものの、清掃が行き届いていて、泊まるのにはじゅうぶん快適そうだった。
コテージにはあまり似つかわしくない座敷の部屋で、女子たちは広いテーブルに集まり、職員のかやこも含め、同性しかいない場での忌憚のないおしゃべりに盛り上がっており、しかししずくは、離れたところで、相槌を打つなどするわけでなく、局外者然として、どこか退屈そうに座っているのだった。ゆうきはというと、最初は仲間たちと同調していろいろ話したり聞いたりしていたのだが、途中で離脱し、壁際に座り、わざわざ旅行にまで持ち出してきた英単語帳を開き、パラパラめくって自習しているのだった。
ふと、しずくがおもむろに立ち上がり、彼女は外出するようだった。時間はすでに夜の七時過ぎ。辺りは暗く、気の利いた照明がないので、かやこは目ざとくその動向に気付くと、「しずくちゃん、どこに行くの?」、とその背中に向かって尋ねた。(それまでおしゃべりしていた女子たちは、束の間しずくに注意が行ってシンとなったが、すぐに何事もなかったかのようにまたしゃべり始めた。)
しかし、しずくが返事せず、無視して行ってしまったので、かやこは呆れたように立ち上がると、その後を追い、二人がいなくなった後、女子たちの間では、自然としずくの陰口がポロッと漏れ出て来、旅行に来なければよかったのになどと陰険に言い合うのだった。
ゆうきは、中立者の透徹した目で、しずくとかやこの残影を静かに見つめていた。
……。
「しずくちゃん」、と手にランタンを持つかやこは、少し離れたところにある別の、無人のコテージの壁に俯き気味に背を持たせ、右手で左腕を持つという姿勢でいる憂色の彼女に呼びかけた。
外は虫の鳴き声が盛んで、町中では夜でも暑気がひどいものだが、木立の只中という環境では、空気はいくぶんか涼やかだった。
「みんなの輪に入るの、難しい?」
「来なければよかった」、としずく。「アイツらとは、やっぱり話が合わないんだもん。聞いてると、何だかイライラする。それに、わたしは嫌われてるから」
「誤解だよ」、とかやこ。「みんな、施設に来た背景はそれぞれ違うけど、似通った悩みを持ってる。それを分かち合おうとすれば、互いにすんなり打ち解けて、溶け込めると思う」
「わたしの悩みは、アイツらとは違うよ。わたしだけ違うから、わたしは嫌われてるし、疎まれてる」
「……」
かやこは、うまく言葉が紡げず、苦慮しているようだった。
「かやこさん」、としずくはぎこちない笑顔で言った。「わたしのことは、放って置いてくれていいよ。ちょっとボーッとしたら、帰るからさ」
「そう」、とかやこはやむなく納得して返した。「すぐに戻るのよ。不審者はいないと思うけど、暗くて危ないからね。ランタン、ここに置いておくから」
しずくのそばに、電気式のランタンが置かれた。すると程なく、羽虫がたかって来、しずくはその光景が鬱陶しいと感じた。
かやこが去った後、しずくは、彼女を困らせたことが悔やまれるようで、もっと素直になれればよかったのに、と思った。けれど、しずくの発言は虚偽ではなく、やはり彼女には、施設の子たちと協調するのに困難があった。それぞれ異質であるという感覚が、しずくと他の子たちそれぞれにあり、その感覚が、相互の関係性の成立の障害となっていた。
だが、一人だけは例外だった。
その一人が、かやこの代りに、しずくを呼び戻しにやってきた。
フッと人影が、ランタンの照明の範囲に現れ、しずくは最初てっきりかやこが戻ってきたと思ったが、俯けた顔を上げると、そうではなかったと知り、意外の念に打たれた。
「ゆうき」
彼女が、腰の後ろで手を組み、微笑して立っていた。
「しーちゃん、肝試し?」
聞かれたしずくは、「してないよ」、と苦笑して返した。
「お風呂、空いたよ。入ろう」
ゆうきの声は、この木立の夜気のように清涼で落ち着いていて、その勧めは、しずくの胸に響き、さっきまで少し刺々しかった彼女は、今はもう、柔和になっていた。
「あぁ、うん」、と生返事でしずくは返し、いささかしびれた足で、元いたコテージまで歩きだし、ゆうきは束の間、足元にある、羽虫のたかるランタンの光を見下ろすと、しゃがんで手に取り、しずくに遅れて、コテージに戻ったのだった。
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