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排他的と思わせる暗いオーラに身を包んでいたしずくの雰囲気が、入浴の後、少し柔らかになったようだった。堅かった表情が和らぎ、やさしげに変化していた。ちょっと前まで、それぞれ陰口を言い、また言われる関係だった女子たちとしずくは、若干ぎこちなかったけど、にこやかに、入浴後のまだ髪がうっすら濡れている状態で、他愛のない話や、トランプなどに興じた。皆、就寝用の清潔で動きやすい服に着替えていた。
さて、しずくとゆうきを含む女子たちは、かやこを含めて七名おり、しかし寝室にはベッドが四つしかなく、三名は、別棟に移動しなければいけなかった。
女子たちの興が乗り、しずくに対して過日の『家出』の件について触れようとしたのだが、かやこがパンと手を打って注意を引くことで話が中断し、時計はすでに夜の九時過ぎを示していた。
別棟に移動するメンバーは、かやこが独断で決め、彼女自身と、しずくと、ゆうきとなった。異論は出ず、皆、納得した。
三人はおやすみ、と女子たちに告げると、コテージより出、暗闇の木立の中、別棟に歩いて移動した。かやこが先導し、ゆうきが電気式のランタンを携え、しずくはただ付いていくだけだった。
やわらかい夜風が木々の間をふんわりと吹き抜け、彼女等を包み込むようにして通り過ぎていき、その肌ざわりは、まだ残っている入浴後の水気を乾かし、その感覚はとても快かった。
スイッチで照明が付けられ、別棟の内装は、元いたところと同じだった。かやこ、ゆうき、しずくは、それぞれ空いたベッドまで行き、取りあえず布団の上に腰を下ろした。かやこがリモコンで冷房と扇風機を付けた。
しずくが、ハァ、とため息してペタリとベッドに体を横たえた。
「楽しい一日だったね」、とかやこが微笑して言った。
「まぁ、悪くはなかったかもね」、としずくがぶっきらぼうに返した。
その不遜さにゆうきは、黙然と慎ましく笑っていた。
「ねぇ、しずくちゃん」、とかやこ。「皆といっしょだと楽しいでしょう。わざわざ”知り合い”の人の家に行かなくたっていいでしょう」
しずくは、どこか迷うように、「うん」、と返した。そして、続けた。
「ホントは、わたしが行ったのは、知り合いの家じゃないんだ」
するとかやことゆうきは、意外と思うようにきょとんとした。
「知り合いじゃない、って、つまりどういうこと?」
かやこが恐る恐る、探るように聞いた。
「たまたま会っただけの人」
「わぁ」、とゆうきは、やはり慎ましく仰天した。「しーちゃん、怖いもの知らずだねぇ。女の子なのに」
「けど、泊めてくれたのは女の人なんでしょう。わたし、電話でちょっとだけ話したけど」
「うん。つかさっていうんだけど、確か、普通の会社員だった」
「よく相手は泊めてくれたし、しずくちゃんも、泊まろうと思ったね。勿論、わたしは感心しないけど」
「そうだね」、としずくは考え込むように答えた。彼女においては、つかさと過ごした時が回想されていた。
「これはわたしの直感だったんだけどさ、つかささん、心なしか、ちょっと寂しそうに見えたんだよね」
「それで、しーちゃんも、家出してみたものの、心細くって、そのつかさっていう人と、互いの思いが合致したと」
ゆうきが推定した。
しずくは首肯した。
かやこは、やれやれと呆れたように首を左右に振り、説教しなければという責任感に駆られて、言うべき言葉を探ったが、何だか眠たくて、それは、しずくとゆうきにおいても同じようだった。しずくは相変わらずぐったりと横たわり、ゆうきは大きくあくびした。
かやこは諦めたようにフゥ、と鼻でため息すると、「寝よっか」、と提案するように言った。夜の十時半頃だった。
冷房が効いてきていた。『中』の風で首振りする扇風機の風が、冷房の冷気をいい按配で寝室に循環させていた。
照明が消され、室内は真っ暗になった。
しずく、ゆうき、かやこの三人は、それぞれのベッドで布団に入り、穏やかに瞑目し、お腹の辺を上下させて、安眠したのだった。
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