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家族にしろ、学校のクラスにしろ、友人同士の少人数のグループにしろ、集団において、やたらと主導権を握りたがる者は必ず存在し、そういった類の人間は、多様性という概念をほとんど理解しないか、あるいは軽視し、他者との関係における、通常認められてしかるべき価値観の相異に対して狭量であり、自己本位的に振る舞いたがる傾向がある。
しずくの暮らす施設にも、そういう人間がおり、彼女は、ひびきという名で、彼女より二つ上の十六歳の、高校二年生だった。ショートヘアの丸顔で、百六十四センチと女子にしては比較的背が高かった。通っている高校で、ひびきは女子バレーボール部に所属しており、彼女のチームは、地区の大会でいいところまで行ったそうで、特に彼女の活躍が目覚ましかったそうだ。その評判は彼女の自負に繋がり、クラスメイトの多くの者と異なる出自である彼女の精神にちょっとした影響を及ぼし、高慢さの源となった。ひびきは、母親の酒癖の悪さから、菊花学園に入所した。
施設において、しずくとひびきの関係性は、職員たちの悩みの種であったし、周りの児童たちにとっては、好奇心の対象だった。施設の中の年長者で仕切りたがるひびきと、他者に迎合せず一個人として飄々としているしずくは、絶対に溶け合うことのない水と油のようだった。二人は過去に幾度か喧嘩したことがあり、職員の仲裁で大事にならずに済んだけれど、仲直りするには、それぞれの気質の相性は極めて悪いようだった。
さて、中学校も高校も、夏休み期間に入り、しずくは以前のように外に脱け出すことがなくなって、施設にいる時間が長くなり、そうなると、必然的に、彼女とひびきが顔を合わせる機会は増えた。
ある日の夕べ。部活動より帰ってきた制服の夏服姿のひびきが、自室に向かう途上、廊下でトイレに行った後のしずくとすれ違った。彼女等は直前に互いに認めると、一瞬だけ、トゲのある鋭い視線を交わして逸らし、サッとすれ違った。しずくにおいては、ひびきの思い上がった感じが気に食わなかったし、相手の方でも、事情は変わらないようだった。まして、しずくは夏休みの時間を持て余してイライラしていて、態度がことさら不遜になりがちだったので、ひびきの目にはひどく生意気に映り、心証がよくなかった。
「アンタ、夏休み中ブラブラしてるだけの無精者のくせに、立場っていうものを少しは弁えたら? 挨拶もしないでさ」
ひびきはわざと聞こえるように声高に言い、しずくの耳には、その一言一句が明瞭に聞き取られ、彼女は胸がズキンと腹立たしい思いで痛むようだった。
しずくは行ってしまおうとしたところ、立ち止まり、ひびきの方に振り向き、彼女に対し、「立場? よく分かってるつもりですけど」、と返した。その言葉は、いやに好戦的に聞こえた。
二人の周りにいる子供たちは、一触即発の危うい空気のピリピリした肌ざわりに、一斉に静粛にし、忍び足で逃げるように去っていった。
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