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「アンタ、勉強も運動も出来ないくせして、何で偉そうなの?」
ひびきがわざとらしく小首を傾げ、片方の手のひらを上げて威圧的に尋ねた。
振り向いているしずくはにわかに不快感に顔をしかめ、拳をギュッと握り締めた。
「わたしは学校の部活で結果を出すことで評価された。評価されることでようやく、ずっと自信がなかったわたしは、自分を誇らしいと思えるようになった」
「自慢ですか?」、としずく。
「そうじゃない」、とひびきは首を左右に振って否定するのだが、しずくが察したように、その薄ら笑いに、慢心が透けて見えるようだった。
「尊大さはすぐれた人間にこそふさわしい。卑小なあんたなんかが尊大だと、滑稽でしかない」
しずくのいじらしい誇りは、上級生の鋭くて冷たい言葉に傷付けられ、彼女が出来れば包み隠していたかった劣等感が――脆弱な怯えた自我が、その悪意の言葉に剥き出しにされ、激しい侮蔑に晒されてしまったようだった。
「わたしはただ、自分の価値観に従っているだけで、偉そうにしているつもりも、尊大に振舞っているつもりもないです」
「あんたはきっと未熟だから、そういう考えや思いが、隠し切れずに滲み出てきてんのよ。自覚がないのなら教えてあげるけど、ここにいる人間のこと、みんな軽蔑してるんでしょう? そこまでこの場所が嫌いなら、さっさと出ていきなよ。寄る辺はあるんでしょう? 親と仲直りしたのか知らないけどさ」
ひびきが憶測で言及した寄る辺とは、きっとつかさのことなのだろうと、しずくには察せられた。だが、つかさの部屋での二度の宿泊は、偶然が重なっただけのことに過ぎず、しずくと彼女は、信頼性のある間柄にはなかった。
しずくは惑いと怒りで、うまく身動きが出来なかった。ひびきの厳しい責めの前でしずくは、恐るべき引け目と恥ずかしさと共に施設に残るか、身寄りがないのにまた奈辺に飛び出すかの選択を迫られたようだった。
「アンタがもし学校のバレーボール部に入ってわたしの練習相手になってくれるなら、こういった風じゃなくて、もっとやさしく接してやれるんだけど」
軽侮に満ちたひびきのセリフは、しずくの触れて欲しくない部分にピンポイントで突き刺さり、その感触は苦痛だった。彼女は、先日の三者面談の帰り、かやこのスクーターに同乗して見たグラウンドの光景が魅力的で、かやこが勧めたように、部活動に参加してみるのは悪くないかも知れないという考えが自然に生じたのである。
その考えは、かやこの勧めにもとづいている限り、善意的に聞こえたが、ひびきの誘導が混じると、たちまち悪魔的に聞こえるようになり、しずくは鳥肌が立ってくるようだった。
しずくは、ひびきと相対しているこの場面が、穏便に済まない気がしてならなかった。
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