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それぞれの詳しい旅行先について、つかさはみわこに対し、会話を当りさわりのない程度におさめたい意図から、あえて聞かなかったし、みわこの方も、当初は嬉々として道中の出会いに興が乗っていたようだが、つかさのどこか冷めた感じに察するところがあったようで、卒然と口数が減った。
飛行機は、美しい山頂が白く輝いていた富士山の辺をとうに過ぎ、南西諸島方面に進んでいた。白い雲海が、窓から見下ろされた。飛行機の窓から見える景色は、水平線に対する海辺の景色と似通っている点があるようで、つかさはいくばくかの感動があったが、スマホやテレビで見る映像と同じで、与える刺激に、決定的にリアリティがなかった。
「つかささんって――」
みわこが不意に口走った。
しばし沈黙が続いていたので、つかさはハッとさせられた。
「つかささんって、しっかりしてそうですよね」
「わたしですか? 別にしっかりなんてしてませんけど、一体なぜ?」
「一人で飛行機まで乗って旅しているので」
回答にピンとこず、つかさは困惑の念にいくらか眉をひそめた。
「それは、みわこさんだって同じでしょう?」
つかさが言うと、みわこはフッと自嘲するように鼻で笑った。
「雀の涙ほどの貯金を削って、奮って旅立ったはいいものの、何だか、後悔がある気がするんです」
「後悔?」
「わたし、実は娘がいるんです」
そのことに関して、つかさに別に奇異の念などなかった。みわこの容貌から推定される年齢の女性に、一人や二人の子供がいても、全然おかしくはなかった。つかさにとっては、みわこが、彼女に子供がいるということを、まるで隠蔽しておくべきまずい事情のように口にしたことが奇妙だった。
つかさは、あまり耳ざわりのいい話ではなさそうだと思い、辺りが気になったが、少なくともコードレスのイヤホンをしている通路側のシートの男性は、すでに顎を上げて寝ていて聞いておらず、その様子にいくぶんか安堵できた。
たしかに妙だった。娘がいるのなら、家族総出で旅行すればいいのに、どういった理由でみわこは一人で来ているのか、つかさは疑問に思わないではなかった。
「娘は、でも、家にいないんです」
「家出か何かして? 娘さんがおいくつか存じませんが」
「十四歳です」
その年齢を聞き、つかさにおいて、一人の少女の像が自然と浮かび上がってきた。しずくという名の少女――いわく付きの、一風変わった少女だった。
「”よそ”にお世話になってるんです」
決して鈍感ではないつかさは、みわこの発したいくつかの言葉から、みわこのあまり単純ではないであろうバックグラウンドが連想された。
つかさは気まずくなり、どう応じればいいのか悩んで緊張したが、みわこがカラッと笑って「元気にしてるみたいですけどね」、と娘について言ったことで、完全にではないけど、緊張がほどけた。
みわこの家庭には、何か問題があるようだった。みわこには娘がおり、彼女は”よそ”に預けられていて、兄弟の有無は不明で、配偶者は、つかさにはいないように思われた。娘以外に家族がいるのなら、今回の旅行にいっしょに来て、つかさなどそっちのけで、二人で過ごしていていいはずだった。
みわこという女性は謎を孕んでいた。その謎は、常に要らない荷物のように彼女に引っ付いて離れないようだった。
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