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急報があった。どこか縁起が悪いように見えていた空港付近にズンと浮かんでいる大きい積乱雲が、つかさの乗る予定のコミューターに影響を及ぼしたのだった。
「皆さまにお知らせいたします」、とアナウンスが流れた。「本日、那覇空港午後0時40分発、久米島空港行き、エアコミューター881便は、飛行ルート上に発生いたしました巨大な積乱雲の通過を待つため、出発が遅れております。本便をご利用予定の皆さまには、深くお詫び申し上げます。新しい情報が入り次第、アナウンスにてお知らせいたします。皆さまのご理解を、お願い申し上げます」
辺りにいる、つかさと同じ便に乗る予定だった客と思しき者たちが渋面になってざわついた。
アナウンスの後程なくして、雷がゴロゴロと鳴りだし、それまでの晴天が嘘のように、辺りが暗くなり、大雨がザーという轟きと共に降り出した。
つかさは待合所の椅子に座って、空腹を感じながら、雨だれの絶えず流れる窓越しに、外の模様をぼんやり見ていた。
つかさにとって、印象のよくない雨だった。予約していたコミューターの遅れは、愉快とは程遠いことであり、たしかに彼女が待てばいいだけで、後の旅程に影響はほとんどないものの、やはり不便であり、また不運だった。
昼間と思えないほど、空の色が暗鬱に陰険になっており、茫然としていたつかさにおいて、何となく、激しい降雨の向こうに、過去のイメージが浮かんでくるようだった。
アパートの近くの公園、会社で残業したスーツ姿のつかさは、くたびれて、駅からアパートに向かって歩いていた。その日も雨だった。彼女は途中にある公園でぐうぜん目にしたブランコの人影に引き寄せられ、それは、しずくという十四歳の少女だった。
彼女が着ていた水色のレインスーツが、つかさにはまざまざと思い返されるようだった。
つかさはしずくを不憫に思って自分の部屋に受け入れてやり、何の因果か、同じことがそのすぐ後にあって、二人の間には縁があるみたいだった。だが、三度目まで連続することはなく、“施設”にいて、また施設のことをよく思っていないらしいしずくについて、つかさは、うまくやっているのかどうか、また脱走していないかどうか、互いに深い関係性ができたわけでもないのだけれど、何となく気がかりだった。
仮にしずくがまた、フラフラしてあの公園のブランコに、遅い夜の時間に行き場がなく漂着して座っているなどと想像してみると、つかさは胸がギュッと痛んだ。一人だった母親の苦労を本能的に察知してうまい甘え方を覚えられずに来たつかさには、孤影悄然たる少女の儚い、心細くさせる姿は、過去の自画像が投影されているように見える気がするのだった。
しずくの抱える問題について、つかさはまるで知らなかったが、できれば知りたいと思い、けれど、しずくに関する情報は余りにも少なく、窓口として、スマホの通話履歴に残る、職員に繋がるだろう施設の電話番号があるけど、しずくがうまくやっているとすれば、つかさは、あえて干渉したりしようとは思わないのだった。
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