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二宮が普段より多いシフトで稼いだバイト代で、つかさの誕生日のためのケーキやジュースなどを買って祝ってくれたことは、彼女にとって、恋人として、率直に嬉しい、感謝に値することだった。
だが、その感情は、どれだけ明るいものであるにしても、つかさの二宮に対する不満を払拭するには足りないのだった。
あの後、つかさはダイニングの隣の洋室に移動し、ベッドの上で横になっていた。長い髪が無造作に散らばっている。ダイニングの照明が付いている一方で、洋室の照明は消えており、ダイニングのLEDの白っぽい明かりが、洋室との境目の辺りの床まで延長して照らしていた。
目を瞑っているつかさは目を開いたが、誕生日の催しが終わって二宮がどこか気まずそうに去った後、彼女は少し眠ってしまったのだった。そばにあるスマホを見れば、すでに十一時を回っていて、時間が夜中に迫っていることが分かる。
エアコンは二十六度という設定温度で動いており、寝る前まで、空気は涼しく快適だったはずなのに、つかさが寝ている間に、エアコンの調子が悪くなったのか、変にベタベタしたものになっているようだった。勘違いかも知れないけれど。
中途半端に眠ってズンと頭の重い気のする中、つかさはダイニングの方にぼんやり目をやってみて、テーブルの上は、二宮のお陰であらかた片付いていたが、食べかけのショートケーキと焼き鳥と飲み残しのジュースの入ったグラスが残っており、その様は、何だか不衛生だし無精だしで、彼女はうっすらと自己嫌悪の念に苛まれるようだった。
土曜日の夜。クーラーの稼働音と、外で降る陰雨の音だけが聞こえていた。
つかさは横になっている体を起こすと転じ、ダイニングに戻り、卓上の余り物にラップして冷蔵庫にしまい、ジュースの飲み残しは汚れた食器を置くついでにシンクに流して捨てた。誕生日の喜ばしい催しの後の残飯は、余計で、出来ればないのがよいものだった。つかさは、シンクにあるクロスでテーブルをサッと全体的に拭いた。
こういうひねた思いがとりとめなく、庭園に生える望まれない雑草のように、無造作に厚かましく伸長してくると、つかさは自身の加齢を実感するのだった。子供の頃、彼女は、決して豊かではなかったけど、今のように何にでもケチをつけることはなかった。年が重なるにつれ、希望はだんだん薄まって来、不満や憤懣ばかりが募ってくる。仕事は忙しい割に報いがなく、恋人はフラフラしていて甲斐性がない、けれど、そういうシニカルに傾く自分だって、肯定し切れるほど可愛いわけではない。
ハァ、と憂色のつかさはため息すると、風呂に入ることにし、浴室のバスタブに栓して、壁のリモコンの湯はりスイッチを押すのだった。
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