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つかさが旅行より帰ってきた後、会社のお盆休みとしての公休日はまだ数日残っていた。ゆっくり過ごそうと思っていたのだが、来訪者があって、阻まれた。
しょっちゅう”あの男”は来ることになっている。
インターホンがピンポンと鳴った時、ベッドで寝ていたつかさは目覚め、うっとうしい気分でベッドより下り、寝起きの渋いすっぴんの顔で玄関までトボトボ向かうと、框の縁から乗り出す格好で、のぞき窓を見てみた。すると外には、普段と同じ軽装の二宮が、厚かましいほどさっぱりした顔で立っていた。ほとんど手ぶらで、いったい何の用かという感じだった。
つかさは鬱陶しく思ったが、仕方なく玄関ドアを開け、招かれざる客を迎え入れた。
「よっ」、と二宮はカジュアルに手を上げて挨拶した。
「どうぞ」、とつかさはぶっきらぼうに返した。
部屋に入るなり、二宮は怪訝そうにし、「真っ暗じゃん」、と言った。
「そうだよ」、とつかさ。「直前まで熟睡してたから」
カーテンが明けられ、差し込んでくる明るい夏日に、部屋の薄暗い陰は退いていった。
そして彼女は、二宮を迎え入れたついでに、キッチンで、袋より食パンを一枚取り出してオーブントースターに入れ、つまみを回した。ジーという音と共に、トースター内部のヒーターが赤熱してきた。
二宮は履き古した靴を脱いで部屋に上がり、ダイニングにあるソファに背中よりパッと跳ねるようにして豪快に、また傲然と座った。
彼の「フゥ~」、という長い、いやにはっきり聞こえる気のするため息を耳にすると、食パンの焼き上がりの待ち時間にインスタントコーヒーを淹れているつかさは、無性にイライラするようだった。彼女において、旅行に行った時の感動と、日常に回帰した失望の落差が激しかった。
二宮は案の定つかさに対して、旅行についてどうだったかと感想を求めてきたが、つかさは答えるのに気乗りしなかった。
楽しかったなどとテキトーにあしらうように彼女が答えると、二宮は、意外とあっさり納得し、あまり拘泥しなかった。
「おれも行きたかったなぁ」、と二宮。
「お金がなかったんでしょ」、とつかさ。
「そこで、一か八か増やしてやろうとパチンコに賭けてみたんだが、惨敗というザマさ」
「ギャンブルなんか当てにするから」
「世の中にはギャンブルで儲けた人が存在する。おれだって、運さえよけりゃ、金持ちになれるんだ」
彼はそのように言ったが、その言い分のもっともらしい感じ、あるいは、正当ぶった愚かしい頑迷さ、過度の楽観主義に、つかさは辟易した。
つかさは沈黙し、二宮は、その反応が不満のようだった。
二人の間に、すっきりしない感情が交差し、小さい摩擦が、起きだしていた。
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