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インスタントコーヒーがプラスチックのカップに入り、トースターでこんがり焼けた食パンがまるい皿にのせられると、つかさはテーブルへと運んでイスに座り、遅い朝食をとることにした。
ソファに座り、スマホを横向きに持ってゲームアプリか何かやっている二宮は、つかさにとって、何か面倒くさくて疎ましい存在だったが、つかさは彼に対して一応、沖縄土産を用意してやっていた。泡盛はお酒好きの彼に打って付けだった。自分に対しては、彼女は、沖縄の純度が高くてミネラルが豊富という、海洋深層水入りの化粧水を買った。
つかさと二宮の間には、会わなかった旅行の期間を通して生じた刺々しい何かが介在し、互いを隔てているようだったが、つかさにおいては、例えば彼女が買ってきたお土産を彼に渡してお礼を言われるなどし、二人の仲はひとまず元の状態に回復するだろうという風に期待されていた。その期待はつかさの淡い希望であり、またやさしさだった。
ところが、二宮が不意にポロッとこぼした言葉に、つかさは耳を疑った。それは、決して衝撃の告白といったものではなく、どこか聞いたことのあるセリフだった。
二宮は、同棲したいと言ったのである。
つかさはにわかに呆然とし、口の中のパンとコーヒーの味が、異物になったかのようにしなくなり、ギョッとして彼の方に目を向けてみると、彼の口調は、まじめだったが、同時に怯懦と甘えの響きがあり、つかさに対して向けるべき彼の目は、スマホに注がれたままで、その態度はちぐはぐだった。
つかさは絶句し、とっさに返事できなかった。だが、二宮は彼女の率直な反応と返答を求めていたようで、「聞いてる?」、と確かめるように聞き、その時ようやく顔を上げ、つかさの方に向いた。その目には、やはりふざけている色はなかった。
つかさが相変わらず怪訝そうに眉をひそめていると、二宮は「同棲」、と上塗りするように繰り返した。
つかさは「は?」、と明らかに不快そうに発した。
「最近実家にいにくくてさ」、と二宮は言った。「そろそろ出ようと思って。ほら、おれたち一応カップルだし、付き合って長いから、同棲してみてもいいかなぁって……」
二宮の申し出は、つかさにとって、まったく想定されていないものであり、彼女はびっくりしたし、楽しい思い出が出来た旅行より帰ってきた後の、味気ない灰色の日常のギャップに暗鬱に憂えていた彼女に対しては、きわめて腹立たしい不意打ちとなった。
「何言ってるの?」
つかさはムカムカして返した。
「何って、相談じゃん。同棲したいっていう」
二宮の言い方は軽かったが、その話題を捉えて離さない意志は強固なようだった。
ずっと一緒に旅行に行っていたはずの二宮は、今回の沖縄旅行には彼自身の事情のせいでつかさに随伴できなかった。つかさは、彼がそのことについて、遺憾に思ったり恨んだり、多少はしているだろうと読んでいた。だから、変に仲がこじれないように、気は進まなかったけど、最低限お土産だけは買ってきて、後で渡してやり、彼女なりに償うつもりだった。
二宮には、決してそういう意図はないに違いないとつかさは確信していたけど、同棲したいという彼の申し出は、彼の大学以来ほとんど変化しない性分に由来する、身勝手さや甘えがふんだんに盛り込まれた、彼なりの復讐の形であるように思われて仕方がないのだった。
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