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みわことの面会があった翌日の朝食後、しずくはかやこに相談室に呼び出された。きっと前日の件に違いないとしずくには予覚された。
相談室は、しずくがみわこと面会した応接室よりこじんまりとしているが、内装はほとんどいっしょで、中央にテーブルがあり、テーブルを挟んでイスが置かれていた。かやこに促され、しずくは彼女と対面する格好で着席した。
面会は円満とは程遠い形で終わり、かやこはきっとそのいきさつを、みわこに聞くなどして知悉しているはずだが、しずくに対して特に説諭などせず、彼女はあくまで中立者として、中正を守り抜くようだった。
かやこはしずくに、みわこから預かったものがあると言い、彼女が卓上に出したのは、箱入りのお菓子と、サファイアのように青く光るガラス玉でできたブレスレットだった。かやこ曰く、この二つは、みわこが沖縄旅行に行った時のお土産で、しずくのために買ってきてくれたそうだった。
しずくには、うれしいという感情は皆無であり、むしろ、一人で悠々と旅行してきたらしいみわこの放恣さに、まさにその頃彼女において逃避願望が昂じてきていたので、強い妬みや羨望などの感情がわきたった。
しずくは、この程度のもので満足するわけがないと冷徹に断じるのだが、一方で、ブレスレットのガラス玉――ホタルガラスという名の、銀箔が中に入っていて美しく輝くガラス玉の清く澄んだブルーに魅了され、頑なになっている気分が宥められ、強情が緩められるようだった。
しかし――しずくの帰属意識はすでに、決定的にまで菊花学園より遠くかけ離れており、腹案のある彼女は、かやこと対座する中で、彼女の容貌を注意深く観察していた。ボーダーのロンTにジーンズ。うなじまでくらいのさっぱりした髪型に、日本人らしい薄い顔立ち。
施設においてしずくは、かやこが嫌いではなく、むしろ好きで慕っていたし、数少ない信頼できる職員だったけど、その容貌に関しては垢抜けなくて地味であり、恐らく参考にすることはないだろうと、軽侮の念と共に思われた。
女が広い世に出る上で身に付けるべきわざは様々あるだろうが、しずくにおいては、科を作ることが優位にあった。いかに男の気を惹き、意馬心猿を制御して手玉に取るか、それが、いわゆるしずくの価値観の大部分だった。
施設では、悲運を軸にして共生することになった皆での一体感のある成長が唱道され、喧伝されていた。和が尊ばれ、明るい理想が掲げられていた。だが、その理想は、いかにも作り物であり、うさんくさく、皮相だった。
帰属意識の低くなってしまったしずくにとっては、この施設、また、この施設にいる児童たち、そして職員たちは、次のステージに移るための踏み台でしか、最早ないのだった。
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