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ある種のひとは、子供だった頃の特定の記憶に関して、後年になってなぜそのように行動したのだろうかなどと、後悔や羞恥の念と共に顧み、愕然とし、自己への嫌悪感が生じ、不愉快になる。しかしその『なぜ?』に対して、納得の行く答えはうまく出てこないだろう。彼、または彼女が推論として見いだせる回答は、ただ一つ、当時は衝動的だったのだ、ということだけだ。そして実際、子供というのは、衝動的に、不合理に、無節操に振舞ってしまうことがままあるものなのである。
八月が下旬に入ろうとする、まだ激しく蒸し暑い時分、遅い夜のことだった。
菊花学園の児童たちは、エアコンの効いた冷涼な室内で快適に寝入っており、宿直の職員は起きていたが、そういう中でしずくは、ベッドに入っていた。彼女は寝ずに起きており、布団を被っているだけの状態でじっとしていた。
時刻が深夜二時になった時、しずくは耳を澄まし、すると、部屋の外の廊下の方から足音が聞こえ、それはだんだん近付いて来、そして遠のいていった。
しずくは小さくなっていく足音に最後まで注意深く聞くと、おもむろに起き出し、ベッドより階段で静かに下りて、カーテンを開け、窓より下を見下ろしてみた。宿舎の出入口の辺から、淡い光の照射と共に、ひとが一人出て来、それは懐中電灯を持った職員で、夜中の巡回の途中なのだった。
宿直の人員は多くなく、しずくの宿舎の巡回はひとまず済み、職員は当面来ない。
そのタイミングが、しずくの狙いだった。
彼女は窓辺より離れ、リュックサックを背負うと、その重みに、動悸がキツくなってくるようだった。中にはいろいろ入っていた。そう、いろいろと……。
しずくはその場に佇み、真っ暗な中、五感を研ぎ澄ました。エアコンの稼働音が微かに、そして熟睡しているゆうきの寝息がくっきりと聞こえた。
しずくは急激に寂しく、憂わしくなってくるようだった。これまでのことと、これからのことが対比され、彼女は、未来に果敢に挑むつもりだったが、過去のことが、また、過去が直接繋がる現在が、たとえそれがどれだけ醜悪だったり物足りなかったり見当はずれだったりするとしても、自分自身が所有する、価値というよりはむしろ意義のある、何か安らげるもののように感じ、今更になって彼女は、別離がためらわれた。
きっと朝になれば、クチャクチャのベッドにわたしのいないことを、ゆうきは不思議がるだろう――しずくはぼんやり想像した。
――そして、ゆうきはわたしを探し、けれど見つからず、察しのいい彼女は、悪い予感と共にかやこさんに事情を伝えて、次第にわたしの失跡が浮上し、最終的には警察まで動くのだろうか。わたしはひょっとすると捕まる(保護される)かも知れないが、もうどうなってもよかった。ただわたしは、試み、抗い、何か変えられると思っている、自分の可能性、あるいは潜在能力に賭けてみたいのだった。衝動的と嗤われても構わなかった。この衝動はわたしにとって抑えがたく、必然のものであり、従わなければならないほどの圧力でもって働きかけてくるのだった。
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