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どれだけ不遇であっても、誰かを憎んだり、呪ったり、軽蔑したりする人生は生きたくないと、しずくは切に思っていた。憎んだり、呪ったり、軽蔑したりするよりは、むしろ、好きになり、打ち解け、敬愛して生きたかった。それが、彼女の真意だったし、また、時折ニュースになるような、そういったネガティブな感情を持つに至り、最悪凶行に手を染めてしまうひとだって、本当は、その感情から解き放たれたかったし、改心の機会を求めていたことだろう。
しずくが歩む道は苦しいものだった。彼女の独行は、彼女にとって本意のようで、その実本意でなく、彼女は早くに安住の場所を悲運によっておわれたのであり、運命がつぶてとなって彼女に投げられたのだった。
二時間ほどしずくは歩き、その内雨が止み、厚い暗雲が裂け、彼方の空がぼんやり明るんできた。夏の日の出は早かった。しずくは差していた暗色の傘を閉じた。
しずくは、新しい居場所を求めて放浪してみたが、そんなもの、果たしてどこにあるというのだろうと懐疑的に思い、途方に暮れた。まだこの旅、ないしは逃避行が始まって間がないが、彼女は自信喪失し、虚無感に苛まれた。
片側一車線の道路に沿った歩道をしずくは一人で歩いており、傍らには雑草のはびこる空き地が広がっていた。ガソリンスタンドがあり、フェンスに囲われた事業所があり、住宅があった。人々はまだ寝入っているようで、辺りはひっそりとし、けれどたまに、車が走っていったり、飛んでいくカラスがだみ声で鳴いたりした。
眠気がしずくの足取りとまぶたを重くしていた。横になれる場所が彼女は恋しかった。
だが、しずくはまず、喉が渇いていたので、コンビニに寄ることにした。ほとんどの建物が真っ暗である中、コンビニといくつかの店舗だけは、照明が明々としていてよく目立った。
しずくは広々とした駐車場を店舗の方に歩いていったが、店舗の前に、夜中だというのに、複数の人数が集まり、陽気に騒いでいた。彼等は地べたにしゃがみ、あるいは喫煙し、あるいは飲酒し、けれど彼等は大人には見えず、私服姿だったが、いわゆる不良の中高生のようだった。男子が大半だったが、女子も少数いた。
しずくは、彼等に対してこれといった印象がなく、まっすぐ店舗の自動ドアまで向かっていき、すると、不良の一人が目敏く彼女を注視し、「ねぇねぇ」、と馴れ馴れしく呼びかけた。彼は、うなじまで伸びた髪をぜんぶ後ろに撫で付け、整髪料で固めた、終始ニヤついている男子だった。しずくは立ち止まり、衆目が彼女に集まった。煙草のにおいが辺りに漂っており、皆、ピアスをあけていたり、髪を明るく染めていたりしているが、おしゃれというには何かが足りず、とにかく派手だった。
「散歩?」、と彼。
「散歩、かも」、としずく。
眠たい彼女は、あまり考えずに答えた。するとドッと哄笑が起こり、無闇にハイトーンの声は、しずくの重い頭に響き頭痛がするようだったが、不思議としずくには、ホッとさせるものがあるのだった。
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