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高橋が中心となる小集団に、しずくは、そうする以外に手がないという窮境から仲間入りすることになり、ある意味で彼女は契りを結び、衣食住を保障して貰う権利を得たのであり、しかし権利に対しては、同時に義務があるのだった。しずくは小間使いとなり、高橋たちの指図に従い、掃除や買い出しなどで使役された。
高橋の部屋に集う者たちは、それぞれ帰ることの出来る家があり、それぞれあまり家庭との間に不和があったが、いずれにせよ、彼等には公認の保護者がいた。しずくにはおらず、彼女は非合法的に、高橋の部屋に、仮住まいとして居候し、その暮らしはまだ始まったばかりに過ぎず、安定するのか頓挫するのか、皆目分からなかった。
しずくは、目の前の生活のため、食べていくため、平らで柔らかい布団の上で寝るため、従順に上の者の言う通りに動き、彼女の働きぶりは好評だったけれど、どこか彼女に注がれる視線には、冷たいものがあった。
しずくは中学校に通っていたが、高橋のアパートからは遠くてとても通えず、そもそも彼女が行方不明になったと施設の連絡が行っているに違いなく、出席など出来ようはずがなかった。
学校に行かないということがどういうことか、高橋たちはよく知っていた。生活するにはお金が必要だった。お金を得るには働かないといけなかった。働くには、学歴がある方がないより有利だった。世間ではせめて高校まで卒業するのが一般的であり、それに満たない学歴には、偏見と差別が付いて回った。
しずくはどうなっているか? しずくは、施設を抜け出すことで、同時に中学校からも離脱することになり、つまり、この生活を続ければ、彼女の学歴は途絶するのであり、従って……。
その辺りのことを、しずくは薄々ではあるが感付いていた。周りの者たちは、彼女が納得した上でいるのだと思い、くだくだしい話は余分だとしてあえてしなかった。
高橋の部屋に入り浸ることによって、しずくは、手作りだった施設の料理の代りに、コンビニの総菜弁当の味に馴染むようになり、自分たちで掃除するなどして維持していた清潔さの代りに、荒廃した不潔さと乱雑さを呼吸するようになり、礼儀作法や言葉遣いの代りに、濃いメーキャップの仕方を覚えるようになった。彼女の目の周りは、あきらのように黒く縁取られるようになり、しずくは、徐々に変容していった。数日が過ぎ、一週間が過ぎた。
しずくには、これでいいのかという疑問がぴったり付いて離れなかった。やることが一通り片付いた後の自由時間、彼女は部屋の壁にもたれ、脚を伸ばして座り、悩ましい物思いにぼんやりすることが多かった。高橋やあきらは自分と同じ、勉強嫌いの同類で、いわば不良なのに、なぜかゆうきの面影がひどく懐かしく思い返され、すると改悛の念が、ずっしりした重みでのしかかってくるのだった。
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